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霞に紛れて、君に近づく【時透無一郎】
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「こちらでしたか、時透くん」
廊下を歩いて来る無一郎に、しのぶは傷薬やら鎮痛剤の入った包みを手渡した。
「……いつもありがとう、胡蝶さん」
「いえいえ、どういたしまして」
無一郎がすぐにその場を立ち去ろうとすると、しのぶは口を開く。
「もう行くんですか?」
「………?」
(……どういう意味だろう?いつも通りだけど……)
そう思いながら足を止めると、しのぶはクスッと笑う。
「あの子とは、バッタリ会っただけでたくさんお話するのに」
「…………」
沈黙。
「仲良しなんですか?」
「……いや、別に……」
「そうですか?随分距離が近かったので、てっきり」
「…………」
(……距離が近い……?)
無一郎は腕を組みながら、先ほどのことを思い出す。
「……顔」
「……顔?」
しのぶは、首を傾げる。
「近くで見てると、面白いので」
「……顔が、ですか?」
「いろんな顔するし。あと、変なこと言うし」
それを聞いたしのぶは、一瞬止まったあと、再びふふっと笑った。
「可愛いですもんね」
その言葉に、無一郎はわずかに瞳が揺れる。
「……関係ないでしょ」
そう言って、視線を逸らす。
しのぶは何も言わず、ただ穏やかに微笑んでいた。
(……別に)
そのまま、踵を返す。
廊下を歩きながら——
(……面白いだけ)
(それだけだし)
——足が止まる。
「…………。」
(……うーん)
なんとなく心にモヤモヤを残しながら、再び歩き出した。