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霞に紛れて、君に近づく【時透無一郎】
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——えーっと、あれ?
前に会ったこと、あったっけ?
霞柱、時透無一郎。
任務に向かう途中、鬼の気配がして向かった先。
鬼に向かって水色の刀を構えている少女の姿があった。
動くたび、鎖骨下辺りまである髪の毛が揺れる。
少し癖毛なのか、毛先がゆるりと曲線を描いている。
ハーフアップにしていて、横顔から表情が見える。
水色の大きな瞳が、鬼の姿を捉えていた。
鬼殺隊の隊服。
揺れるスカートから覗く大腿には、血の滲んだ布が巻かれていた。
その刀を振るうたび、水の飛沫が現れる。
——水の呼吸か……
水がしっかり見えるのは久しぶりに見たかも。
あれ?やっぱり会ったことあるっけ……?
「そろそろ観念しろよ。痛いし、苦しいんだろ。それともアレ?ちょっとずつ痛められて喰われたい?」
体の大きい鬼。
まともに攻撃を喰らえば致命傷だろう。
少女がこの戦いの中で、攻撃を掠る程度でギリギリ避けていたことが推察できた。
とはいえ、足の出血が止まっていない。
このまま戦わせていては危険だと、無一郎は判断した。
踏み出そうとしたその瞬間。
「うるさいな!さっきから気持ち悪いんだってば!そっちだって私の攻撃で痛そうにしてたじゃん!」
(…………)
無一郎は思わず足を止めた。
「こっちは毎日毎日一生懸命鍛錬してんの!あんたらみたいな卑怯者に負けてたまるかっつーの!」
強気な発言とは裏腹に、少女は鬼に攻撃をしかけない。
ただ、刀は下ろさない。
(随分と強気だけど……)
痛みがある。
出血が止まらない。
本当はもう、鬼に向かっていけないのだ。
(……変わった子だな)
無一郎は、今度は迷うことなく踏み込む。
次の瞬間には鬼の元まで移動し、一瞬でその頸を刎ねた。
塵となって消える鬼の姿に、少女は目を大きくさせたまま立ち尽くした。
(……え?今のなに?ていうか誰……?)
そんなことを思っていると、不意に声が聞こえる。
「ねぇ」
その声のする方を見ると、無一郎は既に自分の隣にいた。
「もう動けないんでしょ?座って。止血するから」
無一郎はそれだけ言ってしゃがみ、新しい布を取り出す。
少女は少し止まったあと、岩場に腰掛ける。
無一郎は、血だらけになった布を外し、自分の持っていた布を使ってその出血部位をキュッと締めた。
「あの……ありがとう……」
無一郎はそう言われ、顔を上げる。
ようやっと、二人の目が合った。
「随分と強気だったね。死ぬつもりだった?」
「………え?」
ストレートな物言いに、思わず言葉を失う。
「動けないのに、あんなこと言ってどうするつもりだったの?」
「……そ、それは、その……向かってきたところを叩き斬ろうかと……」
「無理でしょ。呼吸ももう乱れてたでしょ」
図星。
無一郎の言う通りだ。
でも。
「だって、鬼ってムカつくんだもん!つい言っちゃったの!」
そう言い切る少女に、無一郎はキョトンとする。
「……よく、わからないけど。死にたくないなら、もうちょっと戦い方考えたら?それと、この足の応急処置、雑すぎなんだけど」
「だってそれしかやる時間なかったんだもん。
何よさっきから。ちょっと強いからって」
「……ちょっと強い……?」
無一郎は少し首を傾げた。
「茉子ーーー!!!」
遠くから、声が聞こえる。
小さく、緑の市松模様の羽織。
そして木箱を背負った、その姿が見えた。
「「……炭治郎!!」」
声が重なり、無一郎と、その少女——茉子は、再び目を合わせた。
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