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5.帰る場所
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茉子はその後
任務に向かっては蝶屋敷に戻り
負傷者の治療にあたる日々を送っていた。
多忙なのは、おそらく義勇も同じだろう。
夕暮れ。
いつもの一角で、干していた薬草を回収する。
辺りは、静かだった。
「……」
茉子は、懐にあった簪を手に取る。
白い花と、水色の小花。
指先で、そっとなぞる。
(……止められなくなることもある)
善逸の言葉が、ふと浮かぶ。
——お前に触れたいと思っている
続いて思い出すのは、義勇の声。
「……」
小さく、息を吐く。
「……そっか」
ぽつりと、零れる。
義勇が側にいてくれることも、
触れてくれることも、
心地良くて、好きだった。
でも、それは——
私に、合わせてくれていたんだよね。
「………」
茉子は、寝室へ向かう。
いつも身支度を整える場所。
戸を閉めて
簪を持ったまま、一瞬だけ、迷う。
(……来るなら、自分の足で)
鏡の前に立ち
ゆっくりと髪をまとめる。
少し、ぎこちない手つき。
それでも、手を止めない。
くるりとねじって、簪を差し込む。
白色の花がしっかりと。
そして水色の小花が、わずかに揺れる。
「…………」
鏡の中の自分と、目が合う。
(……私が、どうしたいか)
小さく、頷く。
茉子は、
何か決意するときは
いつも蝶のピアスに触れていた。
鬼殺隊に入ってから、ずっと。
どうか見守っていて。
そんな想いで。
しかし、この時の茉子の手は
蝶のピアスではなく——
——簪へと、自然に伸びていた。