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5.帰る場所
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「茉子ちゃぁぁあん!久しぶりー!」
声のする方へ向かうと、やはり彼だった。
「善逸くん!どうしたの?」
「なんかこないだから、踏み込み時に足が痛くてさ。え?もしかして茉子ちゃんがみてくれる?みてくれるのぉ〜?!」
「まぁまぁ入りなさいな」
茉子は笑ってそう言うと、
善逸を屋敷内へと案内した。
「じゃ、早速だけどみせてもらおうかな」
善逸は、言われたベッドに横になる。
触れると、とても硬いその足。
雷の呼吸の壱ノ型しか使わない善逸。
踏み込む足には、筋肉にも骨にも負担がかかる。
「無理しないでって……言うのは簡単だけど、現場じゃなかなか難しいよね」
茉子はそう言って、
薬箱から湿布やら包帯やらを取り出していく。
そんな茉子を、善逸はジーッと見ていた。
「……茉子ちゃんさ」
「ん?」
「……音、変わった」
「え?そうなの?」
茉子は包帯を手に取りながら答える。
「前は不安が見え隠れするような感じだったけど、今は……なんだろうな。安心の音が強い感じがする」
茉子は、善逸の足に包帯を巻きながら答える。
「確かにそうかも。
義勇さんがそばにいてくれると安心するんだよね。
寝る時もさ、前は途中で起きちゃったりとかしてたけどほんっとによく眠れて……」
「……は?」
「……え?」
2人の時間が止まる。
「い、一緒に寝てるの?」
「えっ?あ、う、うん……何回か……」
「で?」
「普通に寝る……」
「嘘だろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
善逸の汚い高音が屋敷中に響く。
「ちょっと!シー!!静かにしてよ!」
「地獄!地獄だよ?冨岡さん今、地獄にいるよ?!」
茉子はキョトンとする。
「……地獄……?」
「地獄という名の拷問だよそれ」
茉子は手を止めて、ジーッと包帯を見る。
「……や、やっぱりそう……なのかな?私がね、安心するって言ったら、困るって言われた……」
「聞いてる俺が辛くなってきたわ……冨岡さんて何?仏なの?」
「え?人間だよ?」
「いや知ってるわ!だから言ってんの!!」
善逸は顔を覆う。
「好きな子が隣で安心しきって寝てんだぞ!?しかも“信じてます”みたいな顔で!!」
茉子の動きが止まる。
「……え?」
「男はなぁ!信頼されると守ろうとする生き物なんだよ!でも!守りたいのと触れたいのは別なの!!」
茉子は更に固まる。
「いや俺は別に冨岡さんの心の声を代弁してるわけじゃないよ!?でも普通そうなるだろって話!!」
茉子は、静かに視線を落とす。
包帯を巻く手が止まる。
「……無理、してるってこと?」
茉子は、困ったように善逸を見る。
その表情を見た善逸は、ハッとする。
(……本当に、わからないんだな。茉子ちゃんも困ってるんだ……)
善逸は一呼吸おいて、天井を見ながら静かに話す。
「茉子ちゃんがさ、冨岡さんと一緒で安心できるのはすごくいいことだと思うよ」
「うん.....」
「男はさ。好きだと、近づきたくなるし。
……近づいたら、止められなくなることもある」
「……止められなくなる……」
「そう」
善逸は少しだけ視線を落とす。
「俺、冨岡さんとは、あの団子食った時ぐらいしか会ってないけどさ」
「うん」
「静かで、奥の方で優しい音がしてた」
「……うん」
「多分、守るために強くなった人なんだよ」
茉子の手が、ぎゅっと包帯を握る。
「……止めてるのはさ、茉子ちゃんのためだよ」
「……私の……?」
「安心してほしいから。怖がらせたくないから。後悔させたくないから」
「……」
「自分の触れたい気持ちより、茉子ちゃんの気持ちを大事にしてる」
その目が、少しだけ真面目になる。
「……あとは、茉子ちゃんがどうしたいかだ」
茉子の手は止まったまま。
「……だから、無理するっていうのとは少し違うのかもな」
「でもさっき、地獄とか拷問とか言ってたよね?」
「……あ、いや、それはあくまでも一般論というか……」
キメきれない善逸。
茉子は静かに、善逸の包帯を巻き直す。
グッと強めに。
「はい、できたよ」
善逸の足には綺麗に巻かれた包帯。
「……早っ!ありがとう!すげー楽かも」
茉子はそれを聞いて微笑む。
「うん。ありがとね、善逸くん」
善逸はその笑顔に思わずドキッとする。
こんなところを冨岡さんに見られたら
ぶっ飛ばされるかもしれない、などと思い、
すぐに邪念を吹き飛ばす。
「ねぇ〜!次、禰󠄀豆子ちゃん来るのいつ〜?」
「こないだ来てたみたいだから、しばらく来ないんじゃないかなぁ。私もちょうど会えなかったんだよねぇ」
「えぇぇぇ〜?!じゃあ次いつ会えるのぉぉ?!」
「シー!!!だから静かにしてってば!!」
このあと、アオイが来て「お静かに!!」と、怒られたのはいうまでもない。
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善逸、優しくて好きです。
書きやすくて楽しかった笑