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5.帰る場所
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障子の向こうが、わずかに明るくなっていた。
朝の気配が、静かに部屋へと入り込んでくる。
茉子はゆっくりと目を開けた。
(……朝……)
隣には、義勇の気配。
昨夜のことが、ふっと頭をよぎる。
「………」
そっと、視線を向ける。
目が合う。
義勇はすでに起きていた。
茉子は、体を起こす。
ほんの少しだけ、間が空いた。
「……帰るのか」
「……はい。蝶屋敷に戻ります」
「……そうか」
それだけ。
それ以上は、何も言わない。
茉子は、そっと身支度を整える。
ふと、枕元に置いた簪が目に入る。
「……」
指先が、わずかに触れる。
少しだけ迷って——
そのまま、懐にしまった。
「……行きます」
茉子は義勇を見る。
「……ああ」
短く、返事をする。
廊下を歩き、草履を履いて
戸の前で、足を止める。
「……義勇さん」
茉子は振り返る。
「……昨日は、ありがとうございました」
「……ああ」
それだけ。
けれど、
その視線は、ほんのわずかに柔らかい。
茉子は小さく微笑んで、そのまま外へ出た。
戸が閉まり、静けさが戻る。
義勇は、何も言わない。
(………)
ただ、
閉じられた戸を、しばらく見ていた。