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5.帰る場所
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「……少し休め」
義勇はわずかに体を離し、茉子を見てそう言った。
その言葉に、茉子は瞬きをする。
「……あ、いえ、私は……」
「任務か」
「じゃないですけど、義勇さんこそ休まないと……」
「問題ない」
即答だった。
茉子は、義勇をジーッと見たあと、何かを確かめるように右肩に触れた。
「……何だ」
「義勇さん、肩少し痛めてません?」
「…………」
義勇の視線が、わずかに逸れる。
「……何の話だ」
「義勇さんの話ですよ」
「…………」
特に怪我を負ったわけではない。
ただ、連日任務を続けていると、負担がかかる時がある。これを、痛みだとか怪我だとか、意識したことはなかった。
「ちゃんと、お湯に浸かって休まなきゃダメです」
「…………」
「私、沸かしましょうか……?」
「……いや、いい」
こういう時、茉子は義勇の曖昧な返事を確かなものにしようとする。
義勇が自分の体のことを疎かにすることだけは、どうしても見逃せないからだ。
茉子は義勇の顔を覗き込む。
「ほんとにちゃんと入る?」
「………」
義勇は、そのまま廊下を歩き出す。
「……沸かすから、お前が先に入れ」
「……私?」
「お前も、連日任務だっただろう」
「……それはそうですけど……でも義勇さんが先です」
「俺はいつでもいい」
「良くないのっ」
「問題ない」
言い切る義勇に、茉子は思わず軽くため息を吐く。
「わかりました。じゃあ一緒に……」
茉子は途中で、ふふっと笑う。
「……っていうのは無理ですね」
冗談混じりのその言葉に、義勇の足が止まる。
わずかに、間が空いた。
「………別に、構わないが」
「………へ?」
思わず変な声が出て、一歩後ずさる。
そこにいるのは、真顔の義勇と、耳をほんのり赤く染める茉子。
「か、構わなくないですよ!もう!入ってきて下さい!」
「……お前が言ったんだろう」
「違うの!いいの!義勇さんが入ってきて下さいっ」
半ば無理やり義勇の背中を押して、風呂場の方へと追いやった。
茉子は、自分の胸に手を当てる。
確かに、いくら先に入ってほしかったからとはいえ、おかしな言い回しをしてしまったかもしれない。
(さっき「別に構わない」って言った……?)
「……冗談だってば……」
茉子は、ぽつりと一言、そう言った。