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1.名のない始まり
*名前変換*
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その後も、茉子は義勇の任務に同行した。
水柱のスケジュールは想像以上にハードであった。
この他に、義勇だけの単独任務もあるらしいと聞き、
茉子は耳を疑った。
任務中は、特に何を指示されるわけでもなく、
会話をするわけでもなかった。
茉子は毎回、自分ができると思うことを淡々とこなしていた。
今晩も、山の中での任務を終えた。
茉子はいつものように負傷した隊士たちの処置をしていたが、だいたい目処が立ったので
あとは隠に任せることにした。
ふと顔を上げると、遠くに義勇の姿が見えた。
いつもなら、気配ごとすぐに姿を消すはずなのに。
(……あれ?)
目が合うと、次の瞬間にはもう近くにいた。
「......っ!びっ....くりしたぁ.....」
「お前の速さと、大して変わらない」
「そ、そうですか……ありがとうございます」
ぎこちないまま、並んで歩き出す。
沈黙が続いた。
「……疲れているだろう。いつもより、動きが鈍い」
茉子の目元が、わずかに揺れた。
「もう、俺に構うな」
唐突な言葉に、茉子は足を止める。
「……どうしてですか……?」
その瞬間、視界が黒い霧に覆われた。
「.......?」
「....っ!伏せろ!!!」
義勇は刀を抜いて、背中で茉子を庇うようにして構える。
——鬼だ。
「兄貴、俺は女の方を喰いたい!うまそう!先にやっちゃっていいだろ?」
「いや、男の方が厄介だ。まずこちらを先に....」
兄弟の鬼なのか、2匹でああでもないこうでもないと話している。
義勇は、胸の奥に小さなざわめきを覚えた。
茉子はあとどれだけ動けるのか、果たして戦えるものかもわからなかったからだ。
「まだ動けるか」
「はい」
義勇は背を向けたまま、茉子に声をかける。
茉子は自身の刀の柄に手を添えていた。
「攻撃がきたら、俺に構わず自分だけでも避けろ。必ずだ」
「........」
「.....必ず、だ」
「.....はい」
茉子の返事と共に、義勇は兄鬼を目掛けて刀を振るった。
『水の呼吸 参ノ型 流流舞』
兄鬼はニヤリと笑う。
『血鬼術 黒霧』
兄鬼の使う血鬼術は、黒霧により視界を奪う。
「.......くっ...」
技は当たったものの、腕を掠った程度で致命傷は与えられなかった。
水の呼吸は、攻守共に可能な柔軟な技。
しかし、黒霧は視界や空気の層を乱し、義勇の動きをいつもより鈍らせる。
水の呼吸の“流れ”そのものを殺してしまうのだ。
「あーあ、お兄さん、水の呼吸かぁ。俺らと相性良さそうだねぇ〜」
弟鬼はニタニタと笑う。
『血鬼術 凝露』
次の瞬間、黒霧の中で、霧が一部鋭く光る。
そして光った部分は次々と刃に変わっていき、義勇と茉子に向かっていく。
『水の呼吸 拾壱ノ型 凪』
『香の呼吸 霞ノ舞 漂霞』
義勇は凪で攻撃を防ぐ。
茉子は漂霞で姿を消し、回避する。
「チッ、なんだなんだその技は!めんどくせぇ!」
「落ち着け、そのうち力尽きるだろう」
「そんなん待ってられるかよ!」
攻撃を防がれ、鬼たちは何やら言い合っている。
茉子は義勇の側に姿を現す。
「私が、霧を飛ばします」
義勇は、僅かに沈黙したあと
「.....やってみろ」
そう短く答えた。
茉子は静かに頷き、耳元の蝶のピアスに一瞬触れる。
そして静かに呼吸を整えた。
言い合いしていたはずの兄鬼は、義勇たちの動きを察し、再び血鬼術を使う。
『血鬼術 黒霧』
『香の呼吸 花ノ舞 乱華香(はなのまい らんかこう)』
茉子は刀を持ち舞うように回転、それが高速になり竜巻が起こり霧を飛ばす。
風に乗って藤の花の香りが舞い、これは鬼たちの動きを少し鈍らせるものだった。
義勇はそれと同時に兄鬼に向かって行く。
『水の呼吸 拾ノ型 生生流転』
義勇の刀から、大きな水龍が生み出される。
『香の呼吸 白檀ノ舞 花霞誘(びゃくだんのまい はながすみのいざない)』
茉子は、弟鬼の周りを高速で四方八方に移動する。
そして、白檀を思わせる強い香りにより視覚・嗅覚共に撹乱させる。
弟鬼は、義勇も兄鬼もどこにいるのかもわからなくなっていた。
「クッソ!ちょこまかしやがって!!!」
しかし、弟鬼の血鬼術は、兄鬼の黒霧さえあれば発動させることができる。
『血鬼術 凝露!!!』
吹き飛ばした霧のわずかな残りがまた光り、刃となる。
義勇は、上から光る刃の気配を感じながらも、そのまままっすぐ兄鬼の首を狙う。
義勇から繰り出された水龍は、そのまま兄鬼の首に届き、その首を落とした。
「テメェぇぇ!!ふざけんなよ!!」
兄鬼を斬られ叫ぶ弟鬼。
弟鬼の刃もまた、まっすぐ義勇に向かっていた。
次の瞬間、その血鬼術によって生まれた刃の隙間を縫うように、淡い光が走った。
それは一瞬、刃よりも速く——
気づいた時には、茉子の日輪刀が弟鬼の首元に届いていた。
『露の呼吸 滴閃(てきせん)』
弟鬼は、音もなく崩れ落ちる。
血鬼術から生まれた刃もまた、遅れて塵となり、霧の中へ消えた。
(..........今のは....何だ......?)
義勇ですら、速すぎて何が起きたのかわからなかった。
茉子が呼吸を使い分けられるとも思わなかったし、こんな風に戦えるとも思っていなかった。
茉子は一瞬だけこちらを見て、少し困ったように笑った。
「……たまに、うまくいくんです」
茉子の日輪刀の色は淡い水色。
両耳のピンクの蝶のピアスが、月夜に照らされて光る。
が。
茉子は突然力が抜けてしまう。
義勇は瞬時に、倒れかける茉子を片腕で抱きしめるように支えた。
「.....無茶はするな」
「.....すみません....」
茉子はそう言ってまた立ち上がった。
これは普通の斬撃じゃない。
迷いがない。
一点に集中し、防御を捨てて踏み込んでいる。
——無茶だ。
体への負担が大きすぎる。
義勇はそんなことを思いながら、
背を向けて無言で茉子の目の前にしゃがみ込む。
「.....え?」
背中に乗れ、ということのようだ。
「で、できません!柱に背負われて帰るなど....!」
「走れるのか」
そう言われて、茉子は黙ってしまう。
呼吸がうまく整わずにいたからだ。
「.....乗れ、茉子」
初めて名前を呼ばれ、茉子の瞳が揺れる。
「....ずるいかも、水柱様....」
茉子は小さな声で呟き、義勇の背中に体を預けた。
鬼を二度相手した夜だ。
夜明けが近づいてきているとはいえ、油断はできない。
義勇は走って山を降る。
---------
下山して平地を移動している途中で、徐々に朝日が昇ってくる。
「......朝日を見ると、安心しますね....」
茉子はそう言って、うとうとと、義勇の肩に頭を落とす。
「......そうだな」
そう言って、義勇は走るスピードを緩めた。
背中に、茉子の体温を感じる。
義勇はぼんやりと、自身が幼き頃に姉に背負われたことを思い出す。
「......安心.....したな」
心にも少し温もりを感じながら、義勇は蝶屋敷へと向かうのだった。
**********
ここまでお読みいただきありがとうございます。
義勇さんが好きすぎてついに妄想に走り出しました。映画かっこよすぎますよね。
もしよろしければお付き合いいただければと思います。
最後の名前呼びの裏話ですが、
前回、しのぶさんに「茉子は役に立ちましたか?」と言われ、義勇さんはそこで初めてヒロインちゃんの名前を知りました。
2人は話す機会がなさすぎて自己紹介もできてなかったのです。
名字知らないので下の名前で呼んだんです。
ずるいよねぇ笑
水柱のスケジュールは想像以上にハードであった。
この他に、義勇だけの単独任務もあるらしいと聞き、
茉子は耳を疑った。
任務中は、特に何を指示されるわけでもなく、
会話をするわけでもなかった。
茉子は毎回、自分ができると思うことを淡々とこなしていた。
今晩も、山の中での任務を終えた。
茉子はいつものように負傷した隊士たちの処置をしていたが、だいたい目処が立ったので
あとは隠に任せることにした。
ふと顔を上げると、遠くに義勇の姿が見えた。
いつもなら、気配ごとすぐに姿を消すはずなのに。
(……あれ?)
目が合うと、次の瞬間にはもう近くにいた。
「......っ!びっ....くりしたぁ.....」
「お前の速さと、大して変わらない」
「そ、そうですか……ありがとうございます」
ぎこちないまま、並んで歩き出す。
沈黙が続いた。
「……疲れているだろう。いつもより、動きが鈍い」
茉子の目元が、わずかに揺れた。
「もう、俺に構うな」
唐突な言葉に、茉子は足を止める。
「……どうしてですか……?」
その瞬間、視界が黒い霧に覆われた。
「.......?」
「....っ!伏せろ!!!」
義勇は刀を抜いて、背中で茉子を庇うようにして構える。
——鬼だ。
「兄貴、俺は女の方を喰いたい!うまそう!先にやっちゃっていいだろ?」
「いや、男の方が厄介だ。まずこちらを先に....」
兄弟の鬼なのか、2匹でああでもないこうでもないと話している。
義勇は、胸の奥に小さなざわめきを覚えた。
茉子はあとどれだけ動けるのか、果たして戦えるものかもわからなかったからだ。
「まだ動けるか」
「はい」
義勇は背を向けたまま、茉子に声をかける。
茉子は自身の刀の柄に手を添えていた。
「攻撃がきたら、俺に構わず自分だけでも避けろ。必ずだ」
「........」
「.....必ず、だ」
「.....はい」
茉子の返事と共に、義勇は兄鬼を目掛けて刀を振るった。
『水の呼吸 参ノ型 流流舞』
兄鬼はニヤリと笑う。
『血鬼術 黒霧』
兄鬼の使う血鬼術は、黒霧により視界を奪う。
「.......くっ...」
技は当たったものの、腕を掠った程度で致命傷は与えられなかった。
水の呼吸は、攻守共に可能な柔軟な技。
しかし、黒霧は視界や空気の層を乱し、義勇の動きをいつもより鈍らせる。
水の呼吸の“流れ”そのものを殺してしまうのだ。
「あーあ、お兄さん、水の呼吸かぁ。俺らと相性良さそうだねぇ〜」
弟鬼はニタニタと笑う。
『血鬼術 凝露』
次の瞬間、黒霧の中で、霧が一部鋭く光る。
そして光った部分は次々と刃に変わっていき、義勇と茉子に向かっていく。
『水の呼吸 拾壱ノ型 凪』
『香の呼吸 霞ノ舞 漂霞』
義勇は凪で攻撃を防ぐ。
茉子は漂霞で姿を消し、回避する。
「チッ、なんだなんだその技は!めんどくせぇ!」
「落ち着け、そのうち力尽きるだろう」
「そんなん待ってられるかよ!」
攻撃を防がれ、鬼たちは何やら言い合っている。
茉子は義勇の側に姿を現す。
「私が、霧を飛ばします」
義勇は、僅かに沈黙したあと
「.....やってみろ」
そう短く答えた。
茉子は静かに頷き、耳元の蝶のピアスに一瞬触れる。
そして静かに呼吸を整えた。
言い合いしていたはずの兄鬼は、義勇たちの動きを察し、再び血鬼術を使う。
『血鬼術 黒霧』
『香の呼吸 花ノ舞 乱華香(はなのまい らんかこう)』
茉子は刀を持ち舞うように回転、それが高速になり竜巻が起こり霧を飛ばす。
風に乗って藤の花の香りが舞い、これは鬼たちの動きを少し鈍らせるものだった。
義勇はそれと同時に兄鬼に向かって行く。
『水の呼吸 拾ノ型 生生流転』
義勇の刀から、大きな水龍が生み出される。
『香の呼吸 白檀ノ舞 花霞誘(びゃくだんのまい はながすみのいざない)』
茉子は、弟鬼の周りを高速で四方八方に移動する。
そして、白檀を思わせる強い香りにより視覚・嗅覚共に撹乱させる。
弟鬼は、義勇も兄鬼もどこにいるのかもわからなくなっていた。
「クッソ!ちょこまかしやがって!!!」
しかし、弟鬼の血鬼術は、兄鬼の黒霧さえあれば発動させることができる。
『血鬼術 凝露!!!』
吹き飛ばした霧のわずかな残りがまた光り、刃となる。
義勇は、上から光る刃の気配を感じながらも、そのまままっすぐ兄鬼の首を狙う。
義勇から繰り出された水龍は、そのまま兄鬼の首に届き、その首を落とした。
「テメェぇぇ!!ふざけんなよ!!」
兄鬼を斬られ叫ぶ弟鬼。
弟鬼の刃もまた、まっすぐ義勇に向かっていた。
次の瞬間、その血鬼術によって生まれた刃の隙間を縫うように、淡い光が走った。
それは一瞬、刃よりも速く——
気づいた時には、茉子の日輪刀が弟鬼の首元に届いていた。
『露の呼吸 滴閃(てきせん)』
弟鬼は、音もなく崩れ落ちる。
血鬼術から生まれた刃もまた、遅れて塵となり、霧の中へ消えた。
(..........今のは....何だ......?)
義勇ですら、速すぎて何が起きたのかわからなかった。
茉子が呼吸を使い分けられるとも思わなかったし、こんな風に戦えるとも思っていなかった。
茉子は一瞬だけこちらを見て、少し困ったように笑った。
「……たまに、うまくいくんです」
茉子の日輪刀の色は淡い水色。
両耳のピンクの蝶のピアスが、月夜に照らされて光る。
が。
茉子は突然力が抜けてしまう。
義勇は瞬時に、倒れかける茉子を片腕で抱きしめるように支えた。
「.....無茶はするな」
「.....すみません....」
茉子はそう言ってまた立ち上がった。
これは普通の斬撃じゃない。
迷いがない。
一点に集中し、防御を捨てて踏み込んでいる。
——無茶だ。
体への負担が大きすぎる。
義勇はそんなことを思いながら、
背を向けて無言で茉子の目の前にしゃがみ込む。
「.....え?」
背中に乗れ、ということのようだ。
「で、できません!柱に背負われて帰るなど....!」
「走れるのか」
そう言われて、茉子は黙ってしまう。
呼吸がうまく整わずにいたからだ。
「.....乗れ、茉子」
初めて名前を呼ばれ、茉子の瞳が揺れる。
「....ずるいかも、水柱様....」
茉子は小さな声で呟き、義勇の背中に体を預けた。
鬼を二度相手した夜だ。
夜明けが近づいてきているとはいえ、油断はできない。
義勇は走って山を降る。
---------
下山して平地を移動している途中で、徐々に朝日が昇ってくる。
「......朝日を見ると、安心しますね....」
茉子はそう言って、うとうとと、義勇の肩に頭を落とす。
「......そうだな」
そう言って、義勇は走るスピードを緩めた。
背中に、茉子の体温を感じる。
義勇はぼんやりと、自身が幼き頃に姉に背負われたことを思い出す。
「......安心.....したな」
心にも少し温もりを感じながら、義勇は蝶屋敷へと向かうのだった。
**********
ここまでお読みいただきありがとうございます。
義勇さんが好きすぎてついに妄想に走り出しました。映画かっこよすぎますよね。
もしよろしければお付き合いいただければと思います。
最後の名前呼びの裏話ですが、
前回、しのぶさんに「茉子は役に立ちましたか?」と言われ、義勇さんはそこで初めてヒロインちゃんの名前を知りました。
2人は話す機会がなさすぎて自己紹介もできてなかったのです。
名字知らないので下の名前で呼んだんです。
ずるいよねぇ笑