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4.静水に咲く
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二人は、里の宿の和室で、朝食をとっていた。
「……悪いことをしてしまいましたね……」
「……そうだな」
それもそのはず。
この宿の板前は、職人魂に溢れている。
丹精込めて作った朝食。
それも食べずに二人で外で打ち合いしているところが見つかり、それはそれはお怒りであった。
近くにいた刀鍛冶が仲裁に入り、なんとか事なきを得た。
「柱でも怒られちゃうんですね」
「………」
義勇は静かに味噌汁をすすっていた。
そして隣に座っている茉子の手元に視線を落とす。
「それだけか」
「え?」
「少ない」
茉子の御膳には、白米、焼き魚、味噌汁、小鉢があったが、それぞれの量はかなり少なめだった。
ここに来た頃はもう少し食べていたのだが、茉子は、僅かでも体が重たくなったと感じると
食事の量を調整する癖があった。
速さに影響すると思っているからだ。
「重くなると動きが悪くなるので……」
「動く前に倒れたら意味がない」
義勇はお椀を静かに置いた。
「言っておくが」
茉子は義勇を見上げる。
「お前の稽古に手を抜くつもりはない」
義勇はそれだけいって、いつのまにか食べ終わった御膳に手を合わせると、一足先に立ち上がって部屋を出て行った。
茉子は静かに、自分の御膳を見つめる。
「……ちょっとだけ、おかわりもらおうかな……」