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4.静水に咲く
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部屋に差し込む朝日で、 茉子は目覚める。
(……やってしまった……)
枕に顔を埋める。
(どうしてあんな言い方……)
胸がきゅっと痛む。
昨日の言葉。
昨日の涙。
背を向けたまま去っていった背中。
(呆れられたかも……)
その想像が、一番怖い。
——考えろ
義勇の声が脳裏に響く。
茉子は目を開けた。
立ち止まっている時間はない。
布団から抜け出し、頬を軽く叩く。
「……よし」
歩き出す足取りは、昨日より少しだけ強い。
朝の空気はまだ冷たい。
木刀を握る音だけが、乾いた地面に響く。
昨日よりもゆっくり。
考えながら振っている。
振りかぶって——止める。
(……速さだけじゃない)
呼吸を整える。
その時、背後に気配を感じた。
「……早いな」
静かな声。
茉子の肩が、ほんの少しだけ強張る。
「……おはようございます」
振り返らない。
いや、振り返れない。
目が合ったら、昨日がそのまま出てしまいそうだから。
数歩、近づく音がした。
「目、腫れていないな」
「そ、そんなに泣いてませんっ……!」
「……泣くなとは言っていない」
茉子の指が、木刀を握り直す。
「……昨日は、ごめんなさい」
小さい声。
「……感情的になってしまいました」
「……いや。向き合う気があるなら、それでいい」
茉子は、義勇を見上げた。
やっと、目が合う。
「……困っている顔だな」
「……えっ……?」
茉子は思わず顔に手を当てる。
そう。困っている。
わからなくて。
怖くて。
崩れそうで。
義勇は視線を外し、横に置かれていた木刀を拾う。
「……来い」
そう言って、茉子に向かって木刀を構えた。