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4.静水に咲く
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湯上がり。
茉子は薄い藤色の浴衣に身を纏い、白い帯をつけていた。
肩ほどまでの長さの髪。
いつもは下ろしているが、今日は薄桃の蝶の髪飾りで後ろにまとめられている。
「きれいだなぁ」
温泉のあるこの高い場所から、ゆっくりと夕陽が沈むのを眺めた。
こうやって外の景色を綺麗だと思ったのは、ずいぶん久しぶりのような気がする。
辺りが暗くなっていく。
「……暗くならないうちに、と言っただろう」
背後からの声に振り返る。
義勇もまた、浴衣に身を纏っていた。
「ふふ。結構細かいんですね、冨岡さん」
そう言って笑う茉子は、湯上がりの頬にほんのり赤みが残っている。
髪に留めた薄桃の蝶と、耳元のピアスの蝶が夜風に揺れる。
義勇の視線が、わずかに止まった。
「……怒っちゃった?」
「いや……」
義勇はそれだけ言って前に向かったかと思うと、サッと茉子の手を取って歩き出した。
「……暗いと、危ないだろう」
それだけ言って。
茉子は瞳を大きくしたあと、顔が熱くなっていくのを感じた。
(……そんなの、嘘……)
いつも任務は夜の暗闇の中。
ここよりもっと暗い山奥入るのも当たり前。
鬼殺の剣士なら。
でも。
(……嬉しい、な……)
茉子はその手を握り返す。
そしてその瞬間、義勇の指が、わずかに強く絡んだ。
茉子はそっと顔を上げる。
ちょうど同じタイミングで、義勇も視線を落としていた。
目が、合う。
言葉はない。
ただ、繋がれた手の温度だけが確かにそこにある。
義勇は一拍だけ止まり、ほんの僅かに目を細めた。
「……足元、見ろ」
ぶっきらぼうに言って、前を向く。
でも、手は離れなかった。
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補足。
義勇さんの方があとで温泉に行ったんだけど、
女子の入浴時間長めなのでちょうどよかったみたいです。