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朝日が差すにはまだ早い。
周囲はまだ、薄暗かった。
義勇はピタッと足を止めて、山の向こうを見た。
「……この山を越えたところに、
藤の花の家紋の家がある」
茉子は、義勇の視線に合わせ、山を見る。
「今日は、そこに寄る」
ここから蝶屋敷までは距離がある。
(体調、気にしてくれてるのかな……)
茉子はそんなことを思いながら
静かに「はい」と頷いた。
---------
山を越えた先、古びた民家があった。
しっかりと、藤の花の家紋が入っている。
「……あら!」
戸を開けた先にいた年配の女性は、
義勇を見るなり驚いた様子だったが、
すぐに優しく微笑む。
「お久しぶりですね、水柱様。
すっかり立派になられて」
「……よせ。お春」
義勇はそれだけいって、玄関に入る。
お春、と呼ばれた女性は、にっこりと笑っていた。
藤の花の家紋の家。
鬼に狙われた所を鬼殺隊に助けられた過去を持ち、
無償で寝床や食事の世話をしてくれる家。
茉子も、話には聞いたことがあったが、
自身が蝶屋敷に身を置いているため、
こういった場所に立ち寄ったことは一度もなかった。
「冨岡くんが、誰かと一緒に来るなんて初めてね」
女性はそう言って笑顔で茉子を見る。
「……お世話になります。
櫻井茉子と申します」
茉子はそう言って深々と頭を下げた。
「そんな畏まらないで、
自分の家だと思って上がってちょうだい。
茉子ちゃん」
「あ、ありがとうございますっ……」
茉子はお春に言われるがまま、部屋に案内された。
「今、お茶を淹れるからね。楽にしてて」
義勇と茉子は、静かに茶の間に並んで座る。
お春は、お盆に急須と湯呑みを乗せてやってきた。
2人のそばに、そっと湯呑みを置く。
「冨岡くんはね、あんまり喋らないでしょう?
だからなんだかね、勝手に気にしてしまうというか」
お春は、お茶を注ぐ。
「怪我をしてここに来るたび、心配したよ」
「そう、ですよね……」
義勇が傷ついて帰ってくるなど、
今では想像もつかない。
どれほど叩き上げてここまできたのか。
義勇は、否定も肯定もせず、静かにお茶をすすっていた。
「…茉子ちゃんも、結構無茶しているでしょう?」
「……え?」
お春は、ジーッと茉子の顔を見る。
「……呼吸が、張り詰めてる」
茉子は目を見開いた。
「まぁ、こういうのはね。
ちゃんと温かいもの食べて、寝れば戻るもんだよ。
冨岡くんも、今日はこのままいられるんでしょ?」
「……いや、俺は……」
義勇は口を開く。
ここに来たのは茉子を休めるためであって自分のためではない。
いつ来るかわからない任務に備え、
茉子のことはお春に任せて発つつもりだった。
「まだ働く気かい?
今日はここで療養するってことにしな。
ちょっと休んだってバチは当たらないよ」
お春はそういって、義勇に詰め寄る。
義勇は視線を逸らし、小さくため息を吐いていた。
「はい、決まりだね!
体が休めって言ってるときは、逆らっちゃだめよ。
私はもうちょっとしたら買い出しに行って来るから。
いつものでいいね?」
「……ああ」
(す、すごい……)
茉子は素直にそう思った。
押し切るどころか、
義勇に返事までさせるお春さん、
恐るべしである。
周囲はまだ、薄暗かった。
義勇はピタッと足を止めて、山の向こうを見た。
「……この山を越えたところに、
藤の花の家紋の家がある」
茉子は、義勇の視線に合わせ、山を見る。
「今日は、そこに寄る」
ここから蝶屋敷までは距離がある。
(体調、気にしてくれてるのかな……)
茉子はそんなことを思いながら
静かに「はい」と頷いた。
---------
山を越えた先、古びた民家があった。
しっかりと、藤の花の家紋が入っている。
「……あら!」
戸を開けた先にいた年配の女性は、
義勇を見るなり驚いた様子だったが、
すぐに優しく微笑む。
「お久しぶりですね、水柱様。
すっかり立派になられて」
「……よせ。お春」
義勇はそれだけいって、玄関に入る。
お春、と呼ばれた女性は、にっこりと笑っていた。
藤の花の家紋の家。
鬼に狙われた所を鬼殺隊に助けられた過去を持ち、
無償で寝床や食事の世話をしてくれる家。
茉子も、話には聞いたことがあったが、
自身が蝶屋敷に身を置いているため、
こういった場所に立ち寄ったことは一度もなかった。
「冨岡くんが、誰かと一緒に来るなんて初めてね」
女性はそう言って笑顔で茉子を見る。
「……お世話になります。
櫻井茉子と申します」
茉子はそう言って深々と頭を下げた。
「そんな畏まらないで、
自分の家だと思って上がってちょうだい。
茉子ちゃん」
「あ、ありがとうございますっ……」
茉子はお春に言われるがまま、部屋に案内された。
「今、お茶を淹れるからね。楽にしてて」
義勇と茉子は、静かに茶の間に並んで座る。
お春は、お盆に急須と湯呑みを乗せてやってきた。
2人のそばに、そっと湯呑みを置く。
「冨岡くんはね、あんまり喋らないでしょう?
だからなんだかね、勝手に気にしてしまうというか」
お春は、お茶を注ぐ。
「怪我をしてここに来るたび、心配したよ」
「そう、ですよね……」
義勇が傷ついて帰ってくるなど、
今では想像もつかない。
どれほど叩き上げてここまできたのか。
義勇は、否定も肯定もせず、静かにお茶をすすっていた。
「…茉子ちゃんも、結構無茶しているでしょう?」
「……え?」
お春は、ジーッと茉子の顔を見る。
「……呼吸が、張り詰めてる」
茉子は目を見開いた。
「まぁ、こういうのはね。
ちゃんと温かいもの食べて、寝れば戻るもんだよ。
冨岡くんも、今日はこのままいられるんでしょ?」
「……いや、俺は……」
義勇は口を開く。
ここに来たのは茉子を休めるためであって自分のためではない。
いつ来るかわからない任務に備え、
茉子のことはお春に任せて発つつもりだった。
「まだ働く気かい?
今日はここで療養するってことにしな。
ちょっと休んだってバチは当たらないよ」
お春はそういって、義勇に詰め寄る。
義勇は視線を逸らし、小さくため息を吐いていた。
「はい、決まりだね!
体が休めって言ってるときは、逆らっちゃだめよ。
私はもうちょっとしたら買い出しに行って来るから。
いつものでいいね?」
「……ああ」
(す、すごい……)
茉子は素直にそう思った。
押し切るどころか、
義勇に返事までさせるお春さん、
恐るべしである。