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2.理由になる前
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足の位置を確かめ、肩の力を抜く。
いつも通り。
いつも通りのはずなのに、呼吸がわずかに合わない。
——一拍、遅れる。
(……戻せる。戻せるはず)
そう思った瞬間、空気が、すっと冷える。
「ほら」
鬼の声が、すぐ近くで響いた。
姿は見えない。
けれど、確かに“距離”を詰められている。
「柱の声がするたび、揺れてるよ?
随分頼りにしてるんだねぇ」
茉子の奥歯が、ぎゅっと噛み締められる。
「合わせるな」
義勇の声が、また届く。
それは命令ではなく、抑えた指示。
けれど——
その声を“基準”にしようとした瞬間、呼吸が、さらにずれた。
茉子の胸が、大きく上下する。
義勇は、その変化を見逃さなかった。
(......違う)
呼吸の乱れ。
刀の軌道。
足運びの癖。
——俺が近くにいるせいだ。
鬼は、まだ姿を見せない。
だが、確信に近いものがあった。
こいつは、俺を“使って”いる。
義勇は、一瞬だけ、視線を伏せる。
(……最悪だな)
自分が前に立つほど、
声をかけるほど、
茉子の呼吸は、引きずられる。
無意識に、義勇を基準にしているからだ。
守っているつもりで、崩している。
「…… 茉子」
短く呼ぶ。
茉子が、ハッとこちらを見る。
不安と、焦りと、必死さが混じった目。
義勇は、刀を握り直した。
そして——
一歩、後ろに下がる。
ほんの一歩。
けれど、はっきりと距離ができる。
「……?」
茉子の瞳が揺れる。
義勇は、視線を逸らさないまま、低く言った。
「……前だ」
それだけ。
理由は言わない。
説明もしない。
今ここで言えば、
茉子は余計に呼吸を意識してしまう。
義勇は、静かに距離を取る。
鬼と茉子の“間”から、外れる位置へ。
その瞬間——
空気が、ぞくりと震えた。
鬼の声が、愉快そうに響く。
「……ああ」
低く、楽しげに。
「やっとだ」
姿が、初めてはっきりと現れる。
「それでいい。
その方が……ずっと、壊しやすい」
茉子は、背中がひやりとするのを感じた。
(……離れた?)
理解が追いつかない。
でも、胸の奥が、嫌な音を立てる。
義勇は、前に出ない。
戻ってこない。
——任せた、という距離。
(……冨岡、さん)
呼びかけそうになって、喉で止める。
呼べば、また乱れる。
それを、もうわかってしまった。
鬼は、にやりと笑った。
「さあ——
1人で、斬ってみなよ」
いつも通り。
いつも通りのはずなのに、呼吸がわずかに合わない。
——一拍、遅れる。
(……戻せる。戻せるはず)
そう思った瞬間、空気が、すっと冷える。
「ほら」
鬼の声が、すぐ近くで響いた。
姿は見えない。
けれど、確かに“距離”を詰められている。
「柱の声がするたび、揺れてるよ?
随分頼りにしてるんだねぇ」
茉子の奥歯が、ぎゅっと噛み締められる。
「合わせるな」
義勇の声が、また届く。
それは命令ではなく、抑えた指示。
けれど——
その声を“基準”にしようとした瞬間、呼吸が、さらにずれた。
茉子の胸が、大きく上下する。
義勇は、その変化を見逃さなかった。
(......違う)
呼吸の乱れ。
刀の軌道。
足運びの癖。
——俺が近くにいるせいだ。
鬼は、まだ姿を見せない。
だが、確信に近いものがあった。
こいつは、俺を“使って”いる。
義勇は、一瞬だけ、視線を伏せる。
(……最悪だな)
自分が前に立つほど、
声をかけるほど、
茉子の呼吸は、引きずられる。
無意識に、義勇を基準にしているからだ。
守っているつもりで、崩している。
「…… 茉子」
短く呼ぶ。
茉子が、ハッとこちらを見る。
不安と、焦りと、必死さが混じった目。
義勇は、刀を握り直した。
そして——
一歩、後ろに下がる。
ほんの一歩。
けれど、はっきりと距離ができる。
「……?」
茉子の瞳が揺れる。
義勇は、視線を逸らさないまま、低く言った。
「……前だ」
それだけ。
理由は言わない。
説明もしない。
今ここで言えば、
茉子は余計に呼吸を意識してしまう。
義勇は、静かに距離を取る。
鬼と茉子の“間”から、外れる位置へ。
その瞬間——
空気が、ぞくりと震えた。
鬼の声が、愉快そうに響く。
「……ああ」
低く、楽しげに。
「やっとだ」
姿が、初めてはっきりと現れる。
「それでいい。
その方が……ずっと、壊しやすい」
茉子は、背中がひやりとするのを感じた。
(……離れた?)
理解が追いつかない。
でも、胸の奥が、嫌な音を立てる。
義勇は、前に出ない。
戻ってこない。
——任せた、という距離。
(……冨岡、さん)
呼びかけそうになって、喉で止める。
呼べば、また乱れる。
それを、もうわかってしまった。
鬼は、にやりと笑った。
「さあ——
1人で、斬ってみなよ」