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夜が、少しだけ濃くなった。
((.....今夜は、来る))
義勇も茉子も、そう思っていた。
虫の声が途切れたわけじゃない。
風が止んだわけでもない。
ただ、間が一拍、余った。
茉子は、ハッとする。
(……何.....?)
胸の奥で、呼吸が一度だけ、空振りする。
吸えている。
吐けている。
それなのに——合っていない。
「……冨岡さん」
呼ぶより先に、違和感が来た。
2人は、すぐさま外に出る。
空き家の裏手。
井戸の影。
さっきまで、何もなかったはずの場所に——
鬼が立っていた。
出てきた、という感じがしない。
現れた、でもない。
最初から、そこにいたみたいに。
背は低い。
痩せていて、力のなさそうな体。
夜の闇に溶ける色の着物の残骸を纏い、
裸足のまま、こちらを見ている。
笑っているようで、笑っていない。
目が合った気がした瞬間——
茉子は、ぞくりと肩を震わせた。
(……嫌だ)
理由はない。
理屈もない。
ただ、呼吸を見られている。
鬼は、一歩も動かない。
なのに。
——ちゃぷ
水を踏んだような、ありえない音がした。
その瞬間、茉子の呼吸が、わずかに乱れる。
鬼の口角が、ほんの少しだけ上がった。
「……ああ」
声は低くも高くもない。
感情が乗っていないのに、妙に耳に残る。
「……やっと、見てくれた」
義勇が、前に出る。
刀に手をかける、その一瞬。
鬼は、初めて視線を動かした。
—— 茉子から、義勇へ。
そして、一拍遅れて空気が変わる。
(……こっちは全く別物だな。付け入る隙がない)
鬼の中で、何かが確信に変わった。
「.......柱、か」
面倒そうでも、恐れてもいない声音。
むしろ——
期待している。
「……でも」
再び、視線が茉子に戻る。
「壊すのは……そっちだな」
茉子は寒気がした。
(......ダメだ。怯んじゃダメ。
しっかりしなきゃ.....
落ち着け.....大丈夫.....戻せる.....)
茉子は自分に言い聞かせ、刀を構える。
しかし、大丈夫だと思ったその瞬間、呼吸が“ずらされる”。
「ほら、ずれたよ?早く戻さないと」
そう言って笑う鬼に、義勇は瞬時に刀を振るった。
しかし、既に鬼の姿は消えていた。
(.....速い....。
......いや、そもそも、そこにいたのかどうか....)
義勇は刀を構えたまま周囲を見渡す。
「無理に深く吸うな」
それと同時に、茉子に短く指示を出す。
落ち着け
大丈夫か
そんな声かけでは、
余計に焦らせてしまうことを、わかっているから。
(......離れていても届く血鬼術なのか....?
だとしたら....)
義勇は、横目で茉子の様子を見ながら、鬼の気配を探る。
「.....綺麗な呼吸だねぇ。
これは、君にしか出せないだろうねぇ」
耳障りな声に、茉子は反射的に刀を振る。
息を切らしながら。
茉子らしくないその振る舞い。
「大抵は、簡単に崩れて終わりっていうか....
同じでつまらないんだけど。
君のは.....随分綺麗に作り込まれているね......」
(......うるさい)
茉子の感情が振れる。
「茉子。合わせるな」
不快な声の上に、義勇の声が届く。
茉子はその声で、我に返る。
(......そう.....合わせちゃいけない.....)
「かわいそうにねぇ。
どんなに頑張っても、完全には戻らない」
「.........っ」
呼吸だけではなく、自分自身が乗っ取られているような感覚に陥る。
(なんで、私の呼吸だけ乱れるんだろう....
冨岡さんだけなら、こんなことになってないのに.....)
——違う。ダメだ.....
茉子は、息を切らし、明らかに動揺していた。
ダメだとわかっていながら、負の感情に引きずられる。
(この鬼の1番近くにいるのは私だ。
冨岡さんじゃない。
私が斬る。斬らなきゃいけない......)
茉子は、刀を構え直した。
((.....今夜は、来る))
義勇も茉子も、そう思っていた。
虫の声が途切れたわけじゃない。
風が止んだわけでもない。
ただ、間が一拍、余った。
茉子は、ハッとする。
(……何.....?)
胸の奥で、呼吸が一度だけ、空振りする。
吸えている。
吐けている。
それなのに——合っていない。
「……冨岡さん」
呼ぶより先に、違和感が来た。
2人は、すぐさま外に出る。
空き家の裏手。
井戸の影。
さっきまで、何もなかったはずの場所に——
鬼が立っていた。
出てきた、という感じがしない。
現れた、でもない。
最初から、そこにいたみたいに。
背は低い。
痩せていて、力のなさそうな体。
夜の闇に溶ける色の着物の残骸を纏い、
裸足のまま、こちらを見ている。
笑っているようで、笑っていない。
目が合った気がした瞬間——
茉子は、ぞくりと肩を震わせた。
(……嫌だ)
理由はない。
理屈もない。
ただ、呼吸を見られている。
鬼は、一歩も動かない。
なのに。
——ちゃぷ
水を踏んだような、ありえない音がした。
その瞬間、茉子の呼吸が、わずかに乱れる。
鬼の口角が、ほんの少しだけ上がった。
「……ああ」
声は低くも高くもない。
感情が乗っていないのに、妙に耳に残る。
「……やっと、見てくれた」
義勇が、前に出る。
刀に手をかける、その一瞬。
鬼は、初めて視線を動かした。
—— 茉子から、義勇へ。
そして、一拍遅れて空気が変わる。
(……こっちは全く別物だな。付け入る隙がない)
鬼の中で、何かが確信に変わった。
「.......柱、か」
面倒そうでも、恐れてもいない声音。
むしろ——
期待している。
「……でも」
再び、視線が茉子に戻る。
「壊すのは……そっちだな」
茉子は寒気がした。
(......ダメだ。怯んじゃダメ。
しっかりしなきゃ.....
落ち着け.....大丈夫.....戻せる.....)
茉子は自分に言い聞かせ、刀を構える。
しかし、大丈夫だと思ったその瞬間、呼吸が“ずらされる”。
「ほら、ずれたよ?早く戻さないと」
そう言って笑う鬼に、義勇は瞬時に刀を振るった。
しかし、既に鬼の姿は消えていた。
(.....速い....。
......いや、そもそも、そこにいたのかどうか....)
義勇は刀を構えたまま周囲を見渡す。
「無理に深く吸うな」
それと同時に、茉子に短く指示を出す。
落ち着け
大丈夫か
そんな声かけでは、
余計に焦らせてしまうことを、わかっているから。
(......離れていても届く血鬼術なのか....?
だとしたら....)
義勇は、横目で茉子の様子を見ながら、鬼の気配を探る。
「.....綺麗な呼吸だねぇ。
これは、君にしか出せないだろうねぇ」
耳障りな声に、茉子は反射的に刀を振る。
息を切らしながら。
茉子らしくないその振る舞い。
「大抵は、簡単に崩れて終わりっていうか....
同じでつまらないんだけど。
君のは.....随分綺麗に作り込まれているね......」
(......うるさい)
茉子の感情が振れる。
「茉子。合わせるな」
不快な声の上に、義勇の声が届く。
茉子はその声で、我に返る。
(......そう.....合わせちゃいけない.....)
「かわいそうにねぇ。
どんなに頑張っても、完全には戻らない」
「.........っ」
呼吸だけではなく、自分自身が乗っ取られているような感覚に陥る。
(なんで、私の呼吸だけ乱れるんだろう....
冨岡さんだけなら、こんなことになってないのに.....)
——違う。ダメだ.....
茉子は、息を切らし、明らかに動揺していた。
ダメだとわかっていながら、負の感情に引きずられる。
(この鬼の1番近くにいるのは私だ。
冨岡さんじゃない。
私が斬る。斬らなきゃいけない......)
茉子は、刀を構え直した。