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2人は、空き家に戻る。
「先に休め」
義勇はそれだけ言って、玄関を出る。
「あ、ありがとうございます....」
茉子はひとまず、玄関のそばに座った。
(……大丈夫……)
茉子はまた、自分の胸に手をあて、
言い聞かせるように心で唱えた。
(……今日は出ない)
そう判断したのは、経験だ。
鬼がどこかに潜んでいるのは確か。
知性のある鬼なら、
柱が来たことがわかると逃げようとすることも多い。
(……だが、必ず現れる)
自分には全く影響がない。
乱されているのは茉子の呼吸だけ。
あえて襲って来ないのは、様子を見ているのか。
あるいは——
義勇は室内に戻る。
茉子は、玄関のそばに座っていた。
「休め」
「……はい」
——俺が、離れるのを待っているのか。
「横になるだけでもだいぶ違う。眠れなくても」
それは、横になって休め、という義勇の言葉。
「……はい」
眠れるはずがないが、
呼吸がズレる今、
体は休めた方がいいのかもしれない。
義勇がそばにいると、
その呼吸が少し整うような気もしていた。
夜は、さらに深くなっていた。
空き家の中は静まり返っている。
茉子は横になったまま、目を閉じていた。
眠ろうとしている。
けれど、やはり眠れていない。
呼吸を整えようとするたび、どこか“合わない”。
(……だいじょうぶ)
そう思った瞬間、
その“間”を、また一拍、ずらされた。
胸が、ひくりと揺れる。
その時だった。
——床が、わずかに沈む気配。
足音はない。
空気が、そっと動いただけ。
義勇は、いつの間にかそこにいた。
茉子のすぐそばに。
刀には手をかけていない。
ただ、様子を見る距離。
呼吸の乱れは、消えていない。
鬼はまだ、茉子の呼吸に“触れている”。
義勇は声をかけない。
かければ、茉子は無理に整えようと焦るだろう。
そのまま、静かに見守っていると——
「……と、み……」
かすれた声。
義勇は、ぴたりと動きを止めた。
「……冨岡さん……」
ほとんど、息だけの声。
義勇は、ためらわずに一歩近づき、
茉子のすぐ横に膝をつく。
「……起こしたか」
低く、静かな声。
茉子は首を横に振る。
それでも、胸元に手を当てたまま。
「……ちょっと、息が……」
義勇は、初めて視線を落とした。
——やはり、狙われている。
「……俺がいる」
短く、それだけ言う。
そして、
莉子の呼吸の“間”に合わせて、
同じ速さで、同じ深さで、息をする。
教えるためじゃない。
引っ張るためでもない。
“ずらされない基準”を、そばに置くため。
莉子の肩が、少しずつ下がる。
「……離れるな」
今度は、はっきりと。
茉子の整った呼吸を、わざと乱す。
おそらく、
感じ取ったものを共鳴させる鬼なのだろう。
感じ取った呼吸を
“ 茉子の呼吸として”ずらして返す。
茉子は、ずらして返された呼吸を
“自分の呼吸として”認識する。
だから、合わなくなる。
そうやって、ジリジリと追い詰める。
だが
なぜ茉子だけなのか
なぜ姿を見せないのか
何が目的なのか——
(……いい予感はしないな)
義勇は、静かにそう思った。
「先に休め」
義勇はそれだけ言って、玄関を出る。
「あ、ありがとうございます....」
茉子はひとまず、玄関のそばに座った。
(……大丈夫……)
茉子はまた、自分の胸に手をあて、
言い聞かせるように心で唱えた。
(……今日は出ない)
そう判断したのは、経験だ。
鬼がどこかに潜んでいるのは確か。
知性のある鬼なら、
柱が来たことがわかると逃げようとすることも多い。
(……だが、必ず現れる)
自分には全く影響がない。
乱されているのは茉子の呼吸だけ。
あえて襲って来ないのは、様子を見ているのか。
あるいは——
義勇は室内に戻る。
茉子は、玄関のそばに座っていた。
「休め」
「……はい」
——俺が、離れるのを待っているのか。
「横になるだけでもだいぶ違う。眠れなくても」
それは、横になって休め、という義勇の言葉。
「……はい」
眠れるはずがないが、
呼吸がズレる今、
体は休めた方がいいのかもしれない。
義勇がそばにいると、
その呼吸が少し整うような気もしていた。
夜は、さらに深くなっていた。
空き家の中は静まり返っている。
茉子は横になったまま、目を閉じていた。
眠ろうとしている。
けれど、やはり眠れていない。
呼吸を整えようとするたび、どこか“合わない”。
(……だいじょうぶ)
そう思った瞬間、
その“間”を、また一拍、ずらされた。
胸が、ひくりと揺れる。
その時だった。
——床が、わずかに沈む気配。
足音はない。
空気が、そっと動いただけ。
義勇は、いつの間にかそこにいた。
茉子のすぐそばに。
刀には手をかけていない。
ただ、様子を見る距離。
呼吸の乱れは、消えていない。
鬼はまだ、茉子の呼吸に“触れている”。
義勇は声をかけない。
かければ、茉子は無理に整えようと焦るだろう。
そのまま、静かに見守っていると——
「……と、み……」
かすれた声。
義勇は、ぴたりと動きを止めた。
「……冨岡さん……」
ほとんど、息だけの声。
義勇は、ためらわずに一歩近づき、
茉子のすぐ横に膝をつく。
「……起こしたか」
低く、静かな声。
茉子は首を横に振る。
それでも、胸元に手を当てたまま。
「……ちょっと、息が……」
義勇は、初めて視線を落とした。
——やはり、狙われている。
「……俺がいる」
短く、それだけ言う。
そして、
莉子の呼吸の“間”に合わせて、
同じ速さで、同じ深さで、息をする。
教えるためじゃない。
引っ張るためでもない。
“ずらされない基準”を、そばに置くため。
莉子の肩が、少しずつ下がる。
「……離れるな」
今度は、はっきりと。
茉子の整った呼吸を、わざと乱す。
おそらく、
感じ取ったものを共鳴させる鬼なのだろう。
感じ取った呼吸を
“ 茉子の呼吸として”ずらして返す。
茉子は、ずらして返された呼吸を
“自分の呼吸として”認識する。
だから、合わなくなる。
そうやって、ジリジリと追い詰める。
だが
なぜ茉子だけなのか
なぜ姿を見せないのか
何が目的なのか——
(……いい予感はしないな)
義勇は、静かにそう思った。