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義勇と茉子は、山を下り、村に入る。
「……小さな村だと、あまり聞き回っても
かえって警戒されるかもしれませんね……」
「……ああ」
茉子は周りを見渡しながら話す。
田んぼ、畑があり、
川も透き通るような水が流れていて、
食べ物には困らなさそうな村だ。
「……あんたら、見ない顔だね」
やはり目立ってしまうのか、
案の定、警戒したように村人に話しかけられる。
義勇と茉子は足を止める。
茉子は静かに息を吸って、村人に答える。
「……旅の途中で、薬を扱っていまして。
もし体調を崩している方がいればと思ったんですが」
「……ふーん……薬ねぇ……」
「ここは空気も綺麗でお水も綺麗ですね。
見たことのない薬草もあるかも。
少し村を見て回ってもいいでしょうか」
茉子は両手を合わせて、
にっこりと笑顔で問いかける。
「い、いや、まぁ、そういうことなら、まぁ…」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
村人は照れたように頭を掻く。
警戒心は薄まったようである。
さすがはしのぶ式と言ったところか。
義勇は、
そのやりとりを黙って聞きながら、
静かに周囲を見渡していた。
----------
「…すみません。
咄嗟に勝手な設定で喋ってしまいましたが、
大丈夫だったでしょうか?」
「いや、上出来だ」
それだけ言って、
義勇は再び周囲に視線を戻した。
茉子は「……よかった」と小さく息をつく。
義勇は突然、
茉子の手首を掴んで軽く引き、
自分側に体を引き寄せる。
そして次の瞬間、
空き缶が茉子の背後を通って飛んでいった。
「……缶蹴りだな」
義勇はそういってすぐに茉子から手を離す。
空き缶は地面に転がっていった。
「…す、すみません。
殺意がないと気づけないものですね…っ」
茉子は、
自分の頬に両手を当てて恥ずかしそうにしていた。
……自力で、避けられなかったことに。
「わー!お兄さんお姉さんごめんなさい!!」
「どこ向かって蹴ってるんだよっ」
「だってあっち、
畑荒らされてて危ないから近づくなって…」
「俺も山側の畑は行くなって
かーちゃんに言われた〜」
子供達の話を聞いて、
義勇と茉子は顔を見合わせる。
「……畑、荒らされちゃったの?」
「あ、うん。でも、変なんだ」
「変?」
茉子が聞くと、子供たちは次々に
「足跡が全然ないんだって〜」
「黒い影は見えたって聞いたぞ?」
「えーそれは隣のおばちゃんちの犬だって…」
と話し始める。
義勇は、子供たちの言葉を反芻するように
わずかに視線を伏せ、
そのあと一度だけ山の方を見た。
「にいちゃーん!まってーー!!」
「…もー…だからお前にはまだ無理だって…」
「にいちゃんとあそぶ!あそびたぁいっ」
突然、後ろから幼い男の子が、
たどたどしく走ってきた。
茉子は子供達に視線を合わせるようにしゃがむ。
「…あんまり暗くならないうちに、
帰った方がいいかもね。気をつけてね」
そう言って微笑んだ茉子は、
すぐに立ち上がった。
それは少し、切ない表情にも見えて——
「……行くぞ」
義勇の声に、茉子は静かに頷き、
その場を後にした。
「……小さな村だと、あまり聞き回っても
かえって警戒されるかもしれませんね……」
「……ああ」
茉子は周りを見渡しながら話す。
田んぼ、畑があり、
川も透き通るような水が流れていて、
食べ物には困らなさそうな村だ。
「……あんたら、見ない顔だね」
やはり目立ってしまうのか、
案の定、警戒したように村人に話しかけられる。
義勇と茉子は足を止める。
茉子は静かに息を吸って、村人に答える。
「……旅の途中で、薬を扱っていまして。
もし体調を崩している方がいればと思ったんですが」
「……ふーん……薬ねぇ……」
「ここは空気も綺麗でお水も綺麗ですね。
見たことのない薬草もあるかも。
少し村を見て回ってもいいでしょうか」
茉子は両手を合わせて、
にっこりと笑顔で問いかける。
「い、いや、まぁ、そういうことなら、まぁ…」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
村人は照れたように頭を掻く。
警戒心は薄まったようである。
さすがはしのぶ式と言ったところか。
義勇は、
そのやりとりを黙って聞きながら、
静かに周囲を見渡していた。
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「…すみません。
咄嗟に勝手な設定で喋ってしまいましたが、
大丈夫だったでしょうか?」
「いや、上出来だ」
それだけ言って、
義勇は再び周囲に視線を戻した。
茉子は「……よかった」と小さく息をつく。
義勇は突然、
茉子の手首を掴んで軽く引き、
自分側に体を引き寄せる。
そして次の瞬間、
空き缶が茉子の背後を通って飛んでいった。
「……缶蹴りだな」
義勇はそういってすぐに茉子から手を離す。
空き缶は地面に転がっていった。
「…す、すみません。
殺意がないと気づけないものですね…っ」
茉子は、
自分の頬に両手を当てて恥ずかしそうにしていた。
……自力で、避けられなかったことに。
「わー!お兄さんお姉さんごめんなさい!!」
「どこ向かって蹴ってるんだよっ」
「だってあっち、
畑荒らされてて危ないから近づくなって…」
「俺も山側の畑は行くなって
かーちゃんに言われた〜」
子供達の話を聞いて、
義勇と茉子は顔を見合わせる。
「……畑、荒らされちゃったの?」
「あ、うん。でも、変なんだ」
「変?」
茉子が聞くと、子供たちは次々に
「足跡が全然ないんだって〜」
「黒い影は見えたって聞いたぞ?」
「えーそれは隣のおばちゃんちの犬だって…」
と話し始める。
義勇は、子供たちの言葉を反芻するように
わずかに視線を伏せ、
そのあと一度だけ山の方を見た。
「にいちゃーん!まってーー!!」
「…もー…だからお前にはまだ無理だって…」
「にいちゃんとあそぶ!あそびたぁいっ」
突然、後ろから幼い男の子が、
たどたどしく走ってきた。
茉子は子供達に視線を合わせるようにしゃがむ。
「…あんまり暗くならないうちに、
帰った方がいいかもね。気をつけてね」
そう言って微笑んだ茉子は、
すぐに立ち上がった。
それは少し、切ない表情にも見えて——
「……行くぞ」
義勇の声に、茉子は静かに頷き、
その場を後にした。