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1.名のない始まり
*名前変換*
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「よぉ、ご苦労さん」
「……後藤さん!」
茉子は持っていたもう1枚の隊服に着替えて、
桶に入れた冷水と手拭いを運んでいるところだった。
もちろん、義勇の部屋に。
「ご苦労さん」と言っているのは、
ベテラン隠の後藤である。
「後藤さん!きてくれると思ってたのに…呼んでってお願いしてたのにー…」
子供の頃から蝶屋敷にいた茉子にとって、
後藤は頼れる兄のような存在であった。
困った時に呼んでしまうのである。
「いや、行ったわ」
「え?」
「他でもない茉子チャンの頼みとありゃあね。
持ち場から離れてたからちょっと遅れたけど
ちゃんと行ったわ」
「あ、そ、そうだったんですね。すみません、ありがとうございます。退散済みだったのかな…?」
「いや、水さんと茉子、ずいぶん近かったから。
とても俺が入れる空気じゃなくてそのまま帰ってきたけど?」
「…え?!ちょっ…と待って……?!」
「あーほら、水こぼれるって!
こういう時はお前がちゃんとしなきゃダメだろ」
後藤はそれだけ言って、
「じゃあな」と茉子を置いて行ってしまった。
(……そんなに近かった…っけ……?)
茉子は手にした桶を見つめる。
思い返してみても、看病していただけのはずだ。
茉子は一瞬、義勇の顔を思い浮かべて、
すぐにその考えを振り払った。