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6.陽だまり
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数日後。
二人は、誘われた温泉へと向かっていた。
天元が寄越した大雑把な地図と、山奥の静かな場所だという情報だけを頼りに、山道を登っていく。
木々の間を流れる川に、太陽の光が差し込んでいた。
「わー!きれい!キラキラしてますね!」
山といえば、鍛錬のために駆けるか、鬼を追って走る場所だった。
任務で何度も一緒に入ったことはある。
けれど、こうして景色を眺めながら歩いたことはない。
「山って、歩くと結構時間かかるんですね」
「……そうだな」
義勇も、辺りへ視線を巡らせる。
「……木の葉の色も、深く見えるな」
「ほんとだ。秋になったら、紅葉も綺麗ですね。きっと」
茉子は楽しそうに辺りを見回し——ふと、足元で視線を止めた。
「あれ?キノコだ」
「…………」
「あ。あっちも!」
少し先の木の根元にも、見慣れないキノコが生えている。茉子はそちらへ歩み寄ると、その場にしゃがみ込んだ。
「見たことないキノコですね」
「…………」
「おいおい、触るなよ。で、間違っても食うなよ?毒入ってんぞ」
「………っ!」
茉子が勢いよく顔を上げる。
「よぉ、おてんば」
「……宇髄様……っ!」
「…………」
声をかけられるまで、茉子は天元の存在にまるで気づかなかった。
一方、隣にいる義勇は、驚いた様子もない。
「ったく、どこまで見守るのかと思ったぜ」
「……触る前に聞く」
それは、茉子が取るであろう行動の予測。
その言葉に天元は一瞬、目を丸くした。
そしてすぐに、口角を上げる。
「……そうかよ」
天元はくるりと背を向けた。
「こっちだ」
そのまま先を歩いていく。
歩く先では、雛鶴、まきを、須磨がこちらに手を振っていた。
「ご無沙汰してまーす!」
茉子も両手で手を振り返したあと、駆け寄った。
——歩く天元を通り越して。
「茉子さん、元気そうで良かった!」
「楽しそうじゃん〜!」
「茉子ちゃん、おひさ〜!」
「みなさんもお元気そうで!」
すぐに馴染む女子四人。
義勇と天元は、後ろを歩いていた。
「随分、仲良さそうじゃねぇか」
「……そうみたいだな」
「あっちじゃねぇよ。お前らおふたりさん」
そう言われた途端、義勇の眉が微かに動いた。
「元々が師弟関係だと、それが抜けきらなかったりすんだろ」
「……別に、師弟関係ではない」
「あ、そう?アイツの戦い方、お前のに似てたけど」
「…………」
「ただ見て覚えたものとは思えませんでしたけどねぇ」
「……………」
「速いだけでチョロチョロしてんなら、尻でも叩いてやろうかと思ったけどよ」
「…………」
カラッと笑う天元の隣で、義勇は沈黙した。
しかしその表情は、少し柔らかかった。
「……茉子は、おてんばと言われるのが心外らしい」
「なんだよ、褒めてるって言ってやったのに。図星かねぇ」
「……そうだな」
「「「天元さまーーー!!!」」」
少し離れた先で、三人嫁たちは声を張る。
「おう!先行っとけ!」
その返事に、女子達は先に宿の中へと入って行った。
「…………」
義勇はそのやりとりを眺めていた。
「三人いると、待たせた時がうるせぇんだよ」
「………そうか」
「そろそろ行くぞ」
「……ああ」
二人は少し歩調を早めた。
「そういやお前ら、もう一緒に住んでるんだよな?どんくらい?」
「……三ヶ月だ」
「ふーん」
「………」
「籍、入れねぇの?」
「………………」
——義勇の足が止まる。
天元は数歩進んだところで振り返った。
義勇の顔を見て、僅かに眉を上げる。
「……ま、その話は後だ。行くぞ」
天元はそれ以上追及せず、再び歩き出した。
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「え?!むりむり!!」
「全然大丈夫だって〜」
「うんうん、温泉なんてそんなもんよ」
「案外、気にならないわよ」
少し遅れて到着した男二人。
そこにいたのは、三人嫁に宥められている茉子。
茉子の顔は真っ赤だった。
「あ!天元様!」
「茉子ちゃん、恥ずかしいって〜」
「かわいい〜」
それを聞いた天元は、またハハッと笑った。
「なんだお前、ビビってんのか」
「………!」
わざと挑発する天元。
「そ、そういうことじゃなくって!」
「別に、お前の身体に興味ねぇから安心しろ」
「はぁ?!」
「………身体?」
何の話をしているのかわからず、義勇は思わず口を開いた。
「ああ。混浴なんだよ、ここ」
ニヤリと笑う天元のトドメの一言に、義勇は瞳を大きくして固まった。