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1.名のない始まり
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茉子は、今夜も義勇と共に任務に来ていた。
今回の鬼は、
一見逃げ回ってばかりだが、
独自の毒を撒き散らし、
その毒を浴びた隊士たちは
火傷を負ったようになるものだった。
火傷は、深くなると治るまで時間がかかる。
そして傷口からの感染のリスクも上がる。
意外と厄介なものだ。
火傷といえばすぐに冷やすのが重要であるが、
戦場で逐一氷枕などあてていられるはずもなく、
そうならないよう、
茉子は必死に解毒剤を使ってまわっていた。
この鬼の攻撃を避けられるのは
義勇と茉子だけだった。
やられる数が多く、
いくら解毒をしたところで焼け石に水であった。
その上、天気は雨だった。
動きにくいし視界も悪い。
義勇は鬼を追っていたが、
鬼は不規則に動き回り、
雨で視界が悪いのもあり
なかなか仕留められずにいた。
(早く倒さないと…これ以上は……っ)
茉子は、焦っていた。
解毒剤がなくなりそうだったからだ。
かれこれ数時間走り回っているし、
雨もまた体力を奪っていく。
(私も攻撃側に加勢した方がいい…?
でもこの環境じゃ、
私の動きも不十分で露の呼吸は通用しないかも…。
雨のせいで、
香の呼吸もどこまで効くかわからない……)
茉子の動きは、雨と共に、判断しきれずに鈍る。
(……迷ってる場合じゃない…考えなきゃ…!)
茉子は他の隊士に鬼の毒があたらないよう、
攻撃を払いながら考えるが、
あまり頭が回っていなかった。
(……どうしよう、決められない……)
茉子は、無意識に義勇を探した。
「戦えるか」
振り返ると、
背後で義勇が鬼を目で追いながら、
刀を構えていた。
「捨て身で斬りに行く必要はない。
お前の一撃が、少しでも当たればいい」
「……少しでも……?」
茉子は思わず視線を逸らす。
露の呼吸は、一撃必殺だが——
「俺はすぐ後ろに付く。
攻撃したあとは、俺に任せろ」
その一言で、迷いが切り替わった。
茉子は義勇を見る。
義勇もまた、その目を見て、頷いた。
「そこを少し下ったところに洞窟があった。
隊士たちはそこに避難させろ。隠を呼べ。
俺は先に鬼を追う。ついて来い」
「.……はいっ…!」
義勇の指示は、一切淀まない。
振り返りもせず、そのまま鬼を追って行った。
茉子はすぐに隊士たちを洞窟へ誘導する。
本来この攻撃を受けていれば
動けない者もいただろうが
茉子の手当により皆軽傷で済んでいた。
「華……!」
茉子は、自身の鎹鴉を呼ぶ。
「ここに隠のみなさんを呼んで。
あと後藤さん呼んで…!」
華と呼ばれた茉子の鴉は「任セテ!」と
頼もしい返事をして飛んでいった。
茉子は、フゥと息を吐いたあと、
鬼の気配を探りながら走り出した。
今回の鬼は、
一見逃げ回ってばかりだが、
独自の毒を撒き散らし、
その毒を浴びた隊士たちは
火傷を負ったようになるものだった。
火傷は、深くなると治るまで時間がかかる。
そして傷口からの感染のリスクも上がる。
意外と厄介なものだ。
火傷といえばすぐに冷やすのが重要であるが、
戦場で逐一氷枕などあてていられるはずもなく、
そうならないよう、
茉子は必死に解毒剤を使ってまわっていた。
この鬼の攻撃を避けられるのは
義勇と茉子だけだった。
やられる数が多く、
いくら解毒をしたところで焼け石に水であった。
その上、天気は雨だった。
動きにくいし視界も悪い。
義勇は鬼を追っていたが、
鬼は不規則に動き回り、
雨で視界が悪いのもあり
なかなか仕留められずにいた。
(早く倒さないと…これ以上は……っ)
茉子は、焦っていた。
解毒剤がなくなりそうだったからだ。
かれこれ数時間走り回っているし、
雨もまた体力を奪っていく。
(私も攻撃側に加勢した方がいい…?
でもこの環境じゃ、
私の動きも不十分で露の呼吸は通用しないかも…。
雨のせいで、
香の呼吸もどこまで効くかわからない……)
茉子の動きは、雨と共に、判断しきれずに鈍る。
(……迷ってる場合じゃない…考えなきゃ…!)
茉子は他の隊士に鬼の毒があたらないよう、
攻撃を払いながら考えるが、
あまり頭が回っていなかった。
(……どうしよう、決められない……)
茉子は、無意識に義勇を探した。
「戦えるか」
振り返ると、
背後で義勇が鬼を目で追いながら、
刀を構えていた。
「捨て身で斬りに行く必要はない。
お前の一撃が、少しでも当たればいい」
「……少しでも……?」
茉子は思わず視線を逸らす。
露の呼吸は、一撃必殺だが——
「俺はすぐ後ろに付く。
攻撃したあとは、俺に任せろ」
その一言で、迷いが切り替わった。
茉子は義勇を見る。
義勇もまた、その目を見て、頷いた。
「そこを少し下ったところに洞窟があった。
隊士たちはそこに避難させろ。隠を呼べ。
俺は先に鬼を追う。ついて来い」
「.……はいっ…!」
義勇の指示は、一切淀まない。
振り返りもせず、そのまま鬼を追って行った。
茉子はすぐに隊士たちを洞窟へ誘導する。
本来この攻撃を受けていれば
動けない者もいただろうが
茉子の手当により皆軽傷で済んでいた。
「華……!」
茉子は、自身の鎹鴉を呼ぶ。
「ここに隠のみなさんを呼んで。
あと後藤さん呼んで…!」
華と呼ばれた茉子の鴉は「任セテ!」と
頼もしい返事をして飛んでいった。
茉子は、フゥと息を吐いたあと、
鬼の気配を探りながら走り出した。