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6.陽だまり
*名前変換*
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「…………」
腕の中の茉子に、視線を落とす。
目を閉じている。
(………寝たか)
茉子はいつもそうだ。
疲れた時は、眠るのが早い。
「………」
こうするつもりはなかった。
欲がなかったといえば嘘になる。
しかし、今の暮らしに不満はなかった。
——あとは、自分の覚悟だけだと。
「……茉子」
思わず、名前を呼んだ。
茉子の目がゆっくりと開く。
「………すまない。起こしたか」
その言葉に、茉子は微笑んだ。
「……ずっと、起きてました」
「……そうか」
茉子は腕の中で、義勇の方へ体を向けた。
「……お昼に藤村さんに、夫婦って言われて……」
「…………」
「今まで、そんなこと考えたことなかったんですけど」
茉子は義勇の胸元へ視線を落とした。
背に回された腕のぬくもりを感じながら、ぽつりぽつりと言葉を続ける。
「……考えてたら、自分の家族のこと、思い出したんです」
「……そうか」
「……私に弟がいたの、聞いてるんですよね?」
「……ああ」
「父と母と、四人家族でした。みんな鬼に殺された。弟のこと、守りたかった。……けど、体が震えて、全然……」
茉子の指先が、義勇の寝間着をわずかに掴む。
「…………」
「……義勇さんは?兄弟いるんですか?」
義勇は、少し沈黙した。
そして天井を見たまま、口を開く。
「………姉がいた」
それを聞いた茉子は、瞳を大きくした。
「……両親は、俺が幼い時に病死した。姉は………」
義勇は茉子に視線を落とす。
「……祝言の前日に鬼に襲われ、俺を庇って死んだ」
「…………………」
「……俺も、何もできなかった」
「…………………」
「恐ろしくて、動けなかった」
「…………………」
「一緒に逃げることさえ……できなかった」
「…………………………」
茉子の瞳から、静かに涙が溢れた。
義勇はそれを見つめたまま、静かに続ける。
「………俺も、ずっと後悔していた」
——知らなかった。
いや、義勇も間接的に茉子の話を聞いただけだ。
茉子自身も、家族の話を誰かにしたことなどほとんどなかった。
おそらく、理由はほとんど同じだろう。
「………義勇さんも、だったんですね……」
「………ああ」
義勇は左腕に少し力を込め、茉子を抱きしめた。
「………私、弟が生まれた時、嬉しかったんです。お姉ちゃんだから、我慢しなきゃいけないこともあったけど……」
茉子の声が、わずかに揺れる。
「……毎日楽しかった。大好きでした」
「………」
「……もし、生まれ変わっても……」
茉子は、少しだけ目を伏せた。
「……許されるなら……また、あの子のお姉ちゃんがいいな……」
「……………っ」
義勇の瞳が揺れる。
「…………そうか」
義勇はそれ以上、何も言わなかった。
ただ、茉子を抱く腕に、もう一度わずかに力を込める。
茉子も何も言わず、その胸元に頬を寄せた。
二人はそのまま、静かな夜を過ごした。