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6.陽だまり
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二人で暮らし始めて、三ヶ月が経った。
桜の季節はとうに過ぎ、木々の緑が濃くなる頃。
茉子は袴の裾を軽く払うと、草むらにしゃがみ込んだ。
「……これか」
「あ!すごい!正解です!よくわかりましたね」
二人は、薬草を摘みに来ていた。
「……お前の持ってきた本に載っていた」
「え?!いつのまに?!」
草むらの中、二人でそんな会話をする。
「……調合の仕方も読んだが、複雑だった」
「慣れるまではそうかもしれないですね」
「戦闘中に、よく瞬時に調合できていたな」
「……褒めてくれてます?」
「…………褒めてる」
その言葉を聞くと、茉子は笑った。
「一緒に摘んでくれてるから、いつもより早く終わりそうです」
「……そうか」
籠の中には、たくさんの薬草。
「これだけあれば、しばらく大丈夫そうです」
茉子が籠を持ち上げようと手を伸ばす。
その前に、義勇がすっと持ち上げた。
「あ……」
「帰るぞ」
「……ありがとうございます」
義勇はそのまま歩き出す。
茉子は少し笑って、その隣に並んだ。
籠を持つ手の反対側。
「茉子」
「ん?」
立ち止まる義勇の顔を見て数秒考えたあと
「………あ。」
茉子はまた笑って、義勇の左側に並び直した。
左手は、籠で塞がっているというのに。
「私、こないだ義勇さんが買ってきてくれた焼き鳥食べたいなぁ。おいしかったですよね」
「……これを置いたら、買いに行くか」
「やった!」
そんな他愛のない話をしながら、家へと向かった。
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草むらから、家が並ぶ通りに出る。
「あら、茉子ちゃん!」
声をかけてきたのは、近所に住む藤村さん。
「こないだはありがとねぇ。薬効いたみたい」
「そうでしたか。良かった!」
「うちの人がね、『こんなに効く薬初めてだ〜』とか言っちゃって。最初は『いらん』とか言ってたくせに調子いいんだから!本当に、ありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ!今、藤村さんに教えてもらった場所で、薬草を採ってきたところなんです」
「あら、そうだったの!」
そこまで話をしたところで、義勇に視線が向いた。
「茉子ちゃんのところはいいわねぇ、優しそうなご主人で!」
「………え?!あ。えっと……」
「………」
「あらやだ夫婦揃って照れちゃって!新婚さん?!お幸せにね!またうちにも寄ってねぇ〜!」
一方的にそう言って立ち去って行った。
「………」
「………」
茉子は、少しだけ頬を赤くする。
「……夫婦って……」
「……そう見えたのだろう」
「……っ」
あまりにも平然と返されて、茉子は言葉に詰まる。
「……あ、あはは、藤村さんったらいっつもあんな感じなんだから」
「……お前が家で話していた通りのご婦人だな」
「ですよね?とても気さくで……!」
茉子は少しだけ義勇の前を歩く。
「ゆ、夕飯どうします?」
「……焼き鳥じゃなかったのか」
「……そうでした」
この三ヶ月で、茉子は薬師として少しずつ顔を知られるようになっていた。
義勇もまた、目を引く容姿に加え、いつも茉子と一緒にいることから、自然と近所の人に顔を覚えられていた。
いつしか二人は、この辺りではちょっとした有名人になっていた。
(……夫婦……そっか……普通そう思うよね。今、一緒に過ごせることが幸せすぎて、この先のことなんて考えたことなかった……)
「…………」
「茉子。そっちじゃない」
「………へ?」
気づけば逆方向に向かっていた茉子。
「……あれ?」
「……行くぞ」
少しぼんやりしながら、帰り道を歩いた。