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6.陽だまり
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蝶屋敷の門を出ると、
少し離れたところで義勇が立っていた。
振り返ると、カナヲ達がまだ手を振ってくれていた。
茉子も手を振り返した。
そして、前を向く。
義勇は、その様子を静かに見ていた。
「……行くか」
「はい」
2人は歩き出す。
茉子は自然と、無くした腕を庇うかのように
義勇の右側にいた。
「………」
義勇は少し黙ったあと、口を開く。
「茉子」
名を呼ばれ、隣にいる義勇を見上げると
視線が合う。
「……左だ」
義勇はそれだけ言って、自身の左側を指差した。
「でも……」
「いい」
「……?」
「こっちにいろ」
茉子は少し目を丸くした。
(……珍しい)
いつもの義勇なら
どちらでもいいと言いそうなものなのに
まるで左側しかダメというような言い方。
確かに、任務の時は左にいる方が多かった。
しかし、指示されたことはない。
義勇が刀を抜く時に邪魔になると思っていたから、
そうしていただけだ。
(でも今は……違うのになぁ)
「……はい」
茉子はそれ以上は何も言わず、
義勇の左側にまわった。
(なんでだろう?)
義勇はいつも、理由を言わない。
(……まぁ、いっか)
茉子はそれ以上考えるのをやめた。
2人は、並んで歩くのだった。
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しばらく歩くと、大きめの通りに出た。
たくさんの人が行き交っていた。
「こっちの道って、人多かったんですね」
いつも近道として、
この近くの山道を走り抜けていた茉子。
普通の景色が新鮮だった。
ふと、道行く男性が
足早に駆けてこちら側に向かってきた。
何かに急いでいるようで
時々周囲の人にぶつかっている。
義勇は瞬時に茉子の右手を取って
自分の方へ引き寄せた。
「……わっ!」
茉子は少しバランスを崩して、
義勇の腕の中におさまる。
(……やだ。自分で避けなきゃいけなかったのに……)
しかし、顔を見上げると——
「……大丈夫か」
その表情は、どこか少し柔らかかった。
「………っ」
茉子の鼓動が跳ねる。
これまで何度も、隣を歩いてきた。
けれど、それとは違っていた。
「……あ、ありがとうございます」
いつもなら「油断するな」とでも
言われただろうか。
しかし今は、そうではない。
義勇は茉子の手を取ったまま、歩き出す。
「………」
茉子は、繋がれた手を見る。
そして、少しだけ笑った。
(……もっと、自分のこと考えてくれていいのに)
だが、現に守られている。
そして、嬉しい気持ちの自分がいる。
「……義勇さん」
その声に、
義勇は視線を落として、茉子を見る。
「どうした」
茉子を見つめるその瞳は、穏やかだった。
「……なんでもない」
「……何だ、それは」
嬉しそうに笑う茉子。
義勇も思わず、少し目を細めた。
耳元がわずかに、赤く染まっていた。