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6.陽だまり
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一通り挨拶を終えた茉子は、
最後に炭治郎の病室へ向かった。
「あ、茉子!」
ちょうど、1人だった。
「お客さん、いっぱいだったね」
「うん、会えて良かったよ」
茉子は笑顔で「そっか」と言って、
炭治郎の隣のベッドに腰掛ける。
「……茉子と義勇さん、恋仲だったんだな」
「……っ!う、うん……あれ?話、したっけ……?!」
そんな話から始まるとは思わず、動揺した。
「さっき義勇さんが、家に帰るって言ってたから、『来たばかりなのに疲れませんか?大丈夫ですか?』って言ったら、『茉子がいるから大丈夫だ』って言われて」
「……」
「茉子のこと話す時の義勇さんの匂い、いつもと違うなと思って、『義勇さん、茉子のこと好きなんですか』って聞いたら……」
「聞いたんだ……」
「義勇さん、黙っちゃって」
「………」
「隣にいた鱗滝さんに『わかることを聞くな』って言われた……」
思い出して、シュン、と小さくなっている炭治郎。
匂いでそんなことまでわかるものなのだろうか。
いずれにしても、なんだか申し訳ない。
「……俺、たくさんの人たちに守ってもらってたんだけど、義勇さんは、はじめからずっと、俺のこと守ってくれてて」
「……うん」
「俺が気絶してた時も、義勇さんずっと戦ってたし……」
「…………」
「……最後までずっと、守ってくれてたから」
「……うん」
話を少し聞くだけでも、
その壮絶な戦いに震えそうになる。
「……でも」
炭治郎は、小さく息を吸う。
「義勇さんにも、弱いところはあるだろうから」
「……うん」
「茉子がいてくれるなら、安心だな」
ニコッと笑う炭治郎。
茉子も微笑んだ。
「義勇さん、全然頼ってくれないからなぁ。たくさん甘やかしちゃおうかな」
「うーん……」
炭治郎は少し考える。
「甘やかしは良くないぞ?」
「え?!そうかな?」
他愛のない会話をして
その日は過ぎていくのだった。
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本当に最後。
家を出る前。
茉子は、仏壇に手を合わせていた。
いつも、しのぶが手を合わせていた仏壇。
今は、しのぶの蝶の髪飾りが置いてある。
ゆっくりと手を下ろし、目を開ける。
顔を上げる時に、
かすかに蝶のピアスが音を立てた。
「……行ってまいります」
任務に行く前に、いつも言っていた言葉。
もう、しのぶの姿はないけれど。
——気をつけて、いってらっしゃい
いつもの返事が、聞こえてくるような気がした。
茉子はそれだけ言って、立ち上がった。
表情は穏やかだった。
玄関には、カナヲとアオイも来てくれて。
なほ、きよ、すみは
泣いて寂しがってくれていたが
茉子は泣かなかった。
もちろん、寂しいけれど。
失ったものも、多すぎるけれど。
「行ってきます!」
茉子は、笑顔で手を振って蝶屋敷を後にした。
春の風が、吹き抜ける。
——前を向くことが、今の自分にできることだから。