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6.陽だまり
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辺りには、信じられないほどの血の量。
死体、負傷者。
茉子はその後、応急処置をしたあと、負傷者を順に蝶屋敷へと運び治療をしていた。
義勇のことはもちろん気がかりだったが、重症者が多すぎて、手が回らない。
隠に義勇に投与する薬を託し、他の者たちの処置にあたっていた。
アオイたちと協力しながら、手分けして。
時々、義勇の容態の報告を受けながら。
出血が多く状態の安定しない者もいて、とにかくあちこち動き回っていた。
「痛すぎるぅぅ!むりぃぃぃいい!!!」
「はーい、ごめんねぇー」
「あ゛ーー!!!!!」
善逸は、処置のたびに大声をあげていた。
こう見えて彼も重症である。
休んでいる暇もなく、夜が更けた。
茉子は一息吐き、義勇が眠る部屋へと足を運んだ。
義勇は、眠っている。
ベッドの横の椅子があったが、茉子はそこには座らず、膝をついてそばに寄った。
脈は弱くない。
呼吸も規則的。
寝顔も辛そうではない。
「………」
痛みが強くなるだろうと思い、鎮痛剤を多めに投与するよう隠に頼んだ。
眠気が来るほどの鎮痛剤だ。
目を覚まさないのは、そのせいかもしれない。
けれど——
「……義勇さん……」
思わず、呼びかける。
残された左手に、そっと手を添えた。
ずっと張り詰めていた糸が、少し緩む。
しのぶや他の仲間たち、たくさんの命が奪われたこと。
みんなの目や手がボロボロにされたこと。
無くしたものの大きさが、今になって胸の奥へ押し寄せて来る。
茉子はぎゅっと、その手を握った。
「…………」
(……大丈夫)
茉子は自分に言いきかせるように、心の中で呟いた。
「………っ?」
一瞬、指先が動いた気がした。
「…………」
「……義勇、さん……?」
義勇の左手が、茉子の手を握る。
「……茉子……」
義勇はそう言って、静かに目を開いた。
「……心配、かけたな」
茉子は目を見開いたあと、首を横に振った。
義勇の指が、茉子の涙を拭う。
「………っ?」
茉子は、そこではじめて、自分が涙を流していることに気が付いた。
「……炭治郎は……」
「……無事です、大丈夫」
「……そうか」
そう答える義勇の表情は、どこか少し、柔らかい。
安堵していることが伝わる。
「……痛みませんか?」
「……大丈夫だ」
微笑む茉子。
だが、髪は少し乱れ、目には疲労が滲んでいる。
義勇はそっと、茉子の簪に手を伸ばす。
「……?……また、曲がってる?」
「………」
義勇は簪を直しながら、茉子を見る。
「……休め」
茉子は一瞬、目を丸くしたあと、笑った。
「義勇さん、鱗滝様と話し方そっくり」
茉子はそう言って、ケラケラと笑っている。
その笑顔は、いつもより幼く見えた。
義勇は静かに目を細める。
「……そうか」
その口元は少しだけ緩んでいた。
「……少し、寝ろ」
義勇がそっと頭を撫でると、茉子は小さく息を吐いた。
「……もうちょっと、やってから」
声には、少し眠気が混じっている。
「……義勇さん」
茉子は、ベッドに横たわっている義勇を
そっと抱きしめた。
「……ありがとう」
生きていてくれて。
戻ってきてくれて。
みんなを、守ってくれて。
「……ああ」
義勇は茉子の頭に手を添えたまま、静かに目を閉じた。