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6.陽だまり
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禰󠄀豆子が太陽を克服して、束の間の平穏な日々。
柱稽古が始まった。
「櫻井茉子と申します。音柱様、よろしくお願いいたします」
茉子は深々と頭を下げる。
元音柱・宇髄天元は、片手に竹刀を持っていた。
茉子の姿を見て僅かに止まったあと
いつもの調子で口を開く。
「はいはいっと。胡蝶のとこの隊士だな」
「はい!」
「俺はもう柱じゃねぇから、その音柱様ってのだけやめてくれ」
「……え?ですが……」
「あーいいからいいから。宇髄サマとでも呼んでくれ」
「は、はい……っ」
上弦との戦いで片目と片足を失っている天元。
本人は柱ではないというが
その大きな体と声
そして見に纏う空気で
強い人だということがわかる。
茉子が畏まるのも無理はなかった。
「じゃ、とりあえず走ってこの坂から山道入って上まで行って降りて来い」
地面で屍のようになっている隊士たちが
「急に無理言い過ぎだろ」
「女の子にも容赦なさすぎてこえー」
などと小声で言っている。
「はい!」
隊士たちの心配をよそに
茉子は元気よく返事をして
ものすごい速さで走っていく。
「「「「……………」」」」
呆然となる隊士たち。
茉子の後ろ姿を見る天元の口角は
少し上がっていた。
********
山を降りてきた茉子。
「お疲れさま!はやいねぇ〜!」
「ほんと!アンタいい忍になれそうだね!」
「はーい、お水どうぞ」
上から、須磨、まきを、雛鶴。
天元自慢の3人女房。
「ありがとうございます……!」
茉子は水の飲みながら、微笑むのだった。
天元は、山の方を見た。
他の隊士たちはまだ降りて来れそうにもない。
「胡蝶の継子も随分涼しい顔してやっていたが、お前も結構やるじゃねぇか」
「あ、いえそんな……」
「こんなんじゃ張り合いねぇだろ」
天元はニヤリと笑い、竹刀を置いて木刀を構える。
「アイツら降りてくるまで、付き合ってやるよ」
「……えっ」
目を丸くする茉子。
「もう〜天元様が打ち合いしたいだけじゃないですかぁ〜」
「さすがに、今降りてきたばっかりですよ?」
「茉子さん、無理しなくていいですからね」
再び上から、須磨、まきを、雛鶴。
しかし、茉子はこう見えてタフだ。
水を飲み干すと
そばに置いてあった木刀を迷わず手に取った。
「お願いします」
「おーし!いい度胸だ!来い!」
木刀の打ち合う音が、響く。
雛鶴たち3人は「やれやれ」というように
顔を見合わせて笑う。
(力は……さほどあるようには見えねぇが)
天元はそんなことを思いながら、打っていく。
「………っ!」
(力、つよっ……!片手でこの威力……!)
天元は背も高い。
力も弱い茉子は、相当不利だ。
攻撃を受け流し、切り返す機会を窺う。
受け流された途端、天元は少し目を丸くした。
「……思い出したわ」
「……っ……はいっ?」
天元に木刀で払われ、2人は少し距離を空ける。
「いつかの柱会議で話題だったの、お前だな」
「……え?」
初耳。
それはそう。
柱合会議の内容など、知るはずもない。
「冨岡と行動してただろ」
「そう……ですね」
天元は再び打ち込んでいく。
「……っ!」
茉子は必死に受ける。
1回、2回、3回……
天元は数回打ち込んだあと
何かを確信したかのように、ピタリと手を止めた。
「……なるほどな」
「……?」
茉子は少し息を切らしていた。
「……なかなか、仕込まれてんな」
天元はそれだけ言って、木刀を下ろした。
茉子はよくわからず、首を少し傾げた。
「あ、あのっ……」
「俺から教えられることはねぇわ。お前、意外と体力あるし。次行け」
「え?!もうですか?!」
気分でも悪くさせてしまったのかと焦る茉子は
3人の妻たちに宥められていた。