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6.陽だまり
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禰󠄀豆子が太陽を克服して、束の間の平穏な日々。
柱稽古が始まった。
「櫻井茉子と申します。音柱様、よろしくお願いいたします」
茉子は深々と頭を下げる。
元音柱・宇髄天元は、片手に竹刀を持っていた。茉子の姿を見て僅かに止まったあと、いつもの調子で口を開く。
「はいはいっと。胡蝶のとこの隊士だな」
「はい!」
「俺はもう柱じゃねぇから、その音柱様ってのだけやめてくれ」
「……え?ですが……」
「あーいいからいいから。宇髄サマとでも呼んでくれ」
「は、はい……っ」
上弦との戦いで片目と片足を失っている天元。
本人は柱ではないというが、その大きな体と声、そして見に纏う空気で、強い人だということがわかる。
茉子が畏まるのも無理はなかった。
「じゃ、とりあえず走ってこの坂から山道入って上まで行って降りて来い」
地面で屍のようになっている隊士たちが
「急に無理言い過ぎだろ」
「女の子にも容赦なさすぎてこえー」
などと小声で言っている。
「はい!」
隊士たちの心配をよそに、茉子は元気よく返事をして、ものすごい速さで走っていく。
「「「「……………」」」」
呆然となる隊士たち。
茉子の後ろ姿を見る天元の口角は、少し上がっていた。
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山を降りてきた茉子。
「お疲れさま!はやいねぇ〜!」
「ほんと!アンタいい忍になれそうだね!」
「はーい、お水どうぞ」
上から、須磨、まきを、雛鶴。
天元自慢の三人女房。
「ありがとうございます……!」
茉子は水の飲みながら、微笑むのだった。
天元は、山の方を見た。
他の隊士たちはまだ降りて来れそうにもない。
「胡蝶の継子も随分涼しい顔してやっていたが、お前も結構やるじゃねぇか」
「あ、いえそんな……」
「こんなんじゃ張り合いねぇだろ」
天元はニヤリと笑い、竹刀を置いて木刀を構える。
「アイツら降りてくるまで、付き合ってやるよ」
「……えっ」
目を丸くする茉子。
「もう〜天元様が打ち合いしたいだけじゃないですかぁ〜」
「さすがに、今降りてきたばっかりですよ?」
「茉子さん、無理しなくていいですからね」
再び上から、須磨、まきを、雛鶴。
しかし、茉子はこう見えてタフだ。
水を飲み干すと、そばに置いてあった木刀を迷わず手に取った。
「お願いします」
「おーし!いい度胸だ!来い!」
木刀の打ち合う音が、響く。
雛鶴たち三人は「やれやれ」というように顔を見合わせて笑う。
(力は……さほどあるようには見えねぇが)
天元はそんなことを思いながら、打っていく。
「………っ!」
(力、つよっ……!片手でこの威力……!)
天元は背も高い。
力も弱い茉子は、相当不利だ。
攻撃を受け流し、切り返す機会を窺う。
受け流された途端、天元は少し目を丸くした。
「……思い出したわ」
「……っ……はいっ?」
天元に木刀で払われ、二人は少し距離を空ける。
「いつかの柱会議で話題だったの、お前だな」
「……え?」
初耳。
それはそう。
柱合会議の内容など、知るはずもない。
「冨岡と行動してただろ」
「そう……ですね」
天元は再び打ち込んでいく。
「……っ!」
茉子は必死に受ける。
一回、二回、三回……
天元は数回打ち込んだあと、何かを確信したかのように、ピタリと手を止めた。
「……なるほどな」
「……?」
茉子は少し息を切らしていた。
「……なかなか、仕込まれてんな」
天元はそれだけ言って、木刀を下ろした。
茉子はよくわからず、首を少し傾げた。
「あ、あのっ……」
「俺から教えられることはねぇわ。お前、意外と体力あるし。次行け」
「え?!もうですか?!」
気分でも悪くさせてしまったのかと焦る茉子は、三人の妻たちに宥められていた。