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5.帰る場所
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木々の奥に、鬼がいた。
義勇は静かに、頸に向かって斬りかかる。
身の危険を感じた鬼は、
周囲の木々の枝を一斉に向かわせる。
鬼の攻撃が義勇に届くより先に、頸を刎ねた。
一方でその攻撃は、
茉子側にも一気に押し寄せていた。
隊士たちの間でも緊張が走る。
『香の呼吸 風の舞 静華』
またも、音がしない。
最小動作で攻撃を逸らすその技は
伸びる枝の数々から、全員を守っていた。
義勇が鬼の頸を斬った瞬間、
枝は崩れるように塵となり消えていく。
隊士たちは安堵し、
茉子もまた、深く息を吐いた。
鬼を斬り伏せ、
山に静けさが戻る。
負傷した隊士たちは、
茉子のもとで治療の続きを受けていた。
「重症の方は、順に蝶屋敷まで運びますね」
茉子が処置を終えた頃、隠たちが次々と現れた。
立ち上がり、視線を上げると
少し離れたところにいた義勇と視線が合った。
義勇は何も言わず、腕を差し出す。
「………?」
茉子は首を傾げた。
そっと駆け寄り、義勇の腕を見る。
「あ……」
その腕には、掠った傷。
薄く血が滲んでいた。
茉子は、義勇を見る。
視線は合わない。
いつもなら絶対、気にも留めない傷だ。
「……これくらいなら、平気ですよね?」
「………」
答えない。
ただ、腕も引っ込めない。
茉子は困ったように笑って、包帯を取り出す。
そっと反対側の手が伸びて、茉子の簪に触れる。
「……曲がっている」
「え?」
戦闘で乱れた髪を、
崩さないよう静かに整えていく。
「……これでいい」
揺れる水色の小花が、小さく音を立てた。
「……また、曲がってました?」
茉子は少し首を傾げる。
「走ってきたからかな」
義勇は答えない。
ただ、その簪を見つめる目だけが
わずかに柔らかかった。
「「「「「………………」」」」」
隠に担がれ待ちの隊士たちは、口に開けたままだ。
「……え?今のなに?あんなかすり傷の手当受けるの?柱って」
「ていうか距離近くね?」
「水柱様ってあんな感じだったっけ?」
小声で繰り広げられる隊士たちの会話。
義勇の腕が降りる。
「他の処置は済んだのか」
「はい、あとは蝶屋敷で治療します」
それを聞いて、義勇は歩き出す。
「……帰るぞ」
(((((帰る………?!)))))
隊士たちは停止する。
茉子も一瞬止まる。
(……あ、さすがの義勇さんも疲れて休みたいのかな?私も一旦屋敷に戻らないと……)
「はい」
(帰って休んだ方がいいですもんね)
(((((「はい」?!)))))
駆け寄る茉子。
息が止まる隊士たち。
2人の姿は、次第に遠くなっていった。
「……帰るって、どこに?」
「いや、普通に考えたら水柱様の家……?」
「……どういうこと?」
「え?櫻井さんって蝶屋敷じゃ……」
「いやだからそれは……」
隊士たちはそこまで言って、沈黙。
「「「「「いやいやいやいやいや」」」」」
沈黙。
「……どういう関係?」
隠たちも、なんとも言えない顔で視線を逸らした。