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5.帰る場所
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「俺、攻撃は見えます!」
「……俺も、なんとか……」
「………」
(……二人だけか)
他の隊士たちは怯えて震えていて、立つのがやっとのようだった。
「まだ戦えます……!」
技が見えると言うこの二人も、あまり体力は残っていないように見える。
「……あまり前に出過ぎるな。来た攻撃を返せ」
義勇は視線を逸らしたまま、それだけ指示した。
怯えた隊士たちを庇いながら、鬼を探す。
それは多少なりとも、自分が盾となる必要がある選択だった。
(……近くにいるはずだ)
再び、木々が軋む。
枝が、四方から襲いかかった。
「……来るぞ」
義勇は力みもせず、一撃で二本斬り落とす。
「行きます……!」
一人の隊士がそう言って技を放とうとした、その瞬間だった。
「……っ!」
足元の地面が沈み、体勢が崩れる。
枝が、死角から一直線に伸びた。
「しまっ……」
その瞬間、義勇はその隊士の腕を掴み、強引に後ろへ引いた。
枝が、義勇の腕を掠める。
「水柱様っ……!」
隊士が目を見開く。
義勇はそのまま枝を斬り落とす。
確かにその腕を掠ったが、眉一つ動かさず、表情は全く変わらない。
「……前を見ろ」
次の瞬間、枝が伸びて向かってくる。
義勇が再び刀を振ろうとした、その時だった。
「露の呼吸——滴閃」
一瞬で、辺りの空気が変わる。
音のないその斬撃は、目にも見えない。
周囲の枝が次々と崩れ落ちた。
「………え?」
近くにいた隊士たちは、瞳を大きくしたまま停止している。
そこには、刀を持ち、その場に低くしゃがみ込んでいる茉子の姿があった。
義勇は小さく息を吐く。
茉子は、珍しく肩を揺らしていた。
息も、わずかに乱れている。
「……遅い」
息を切らしているのは、技のせいではない。
余程、急いで走ってきたのだろう。
そんなことはすぐにわかったのだが、思わずその言葉が出た。
待っていた、などとは言えない。
茉子は、その声にハッと顔を上げた。
義勇がいるとは思ってもいなかったのだ。
「申し訳ありません……!」
茉子はすぐに立ち上がる。
任務を共にするのは、露の呼吸を連発して以来。
とても久しぶりだ。
けれど、こうして並んでみると、感覚が自然と戻ってくる。
二人は、それ以上の言葉を交わさない。
「出血している方から手当します!こちらに!」
茉子の処置は手早い。
傷を圧迫して、包帯を巻く。
そして必要に応じて、止血剤、鎮痛剤を投与していく。
「すげぇ……櫻井さんってあんな強いの……?」
「いや、刀抜いてるとこ初めて見た……戦うんだなあの人」
「なんで枝崩れたんだ……?何したらあんなんなるの?」
応急処置を受けた隊士たちは安心からか、茉子の姿を見ながら口々に声を漏らした。
その間、義勇は伸びてくる枝をひたすら斬り落とす。隊士たちに向かう枝も、茉子に向かう枝も。
奥の方にいる、鬼の気配を感じながら。
茉子は一通り処置を終えると、再び立ち上がって刀を抜いた。
「ここは引き受けます」
「ああ」
刺すように向かってくる枝を、茉子は受け流すように斬っていく。
「……速」
「状況把握も早すぎだろ」
「やば……」
茉子のその太刀筋は、どこか少し義勇のものに似ていた。
義勇は、そんな茉子を一瞥する。
「………」
何も言わない。
振り返らない。
義勇はそのまま、鬼の方へと向かった。