このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

ボーダー女子は王子を知りたい



「堤さん見てない?」

「う~ん、見てないよ。また死んでるんじゃないの」

「そうかあ~」

ボーダーの中で堤さんを探しながら時刻は昼前。探し始めた時から既に時計の長針が一周しそうである。防衛任務前に借りた小説を読み終えたので返そうと思ったけれど、知り合いの誰に聞いても目的の人物は見ていないと言われる。
よく見かける諏訪隊の隊室やランク戦ブースにもいなかった。あと探していないのは、A級の隊室くらいだが行こうという気は湧かない。堤死ぬところに加古あり。もし見つけることが出来たとしても近くに炒飯を作っている加古さんがいる可能性もあるので、見つけるのは諦めた方がよさそうだ。

気付けば正午の時間で、午前中ずっと歩き回っていたからお腹も空く。何か食べようと来た食堂には学生が多く、既に席が埋まっていた。見渡しても席が空いている場所が見つからない。もう少し待ってからにしようかと思ったその時、顔見知りが声を掛けてきた。

「宮矢さんだ~こんにちは~」

「こんにちはおサノ。堤さん探してるんだけど今日ってまだ本部に来てない?」

「つつみん来てるけど、加古さんのところに行くって言ってたよ~連絡ないから多分死んでる」

「そっか~」

「夜はうちの隊ランク戦するから、復活してると思うよ。連絡しとく?」

「ああB級ランク戦の最中だっけ、そういえば」

去年の春に私が所属していた部隊が解散してから、チームでの対戦に全く参加していなかったため、つい忘れていた。
聞くと既に3日目に突入していた。序盤はもう終了してしまって残念だが、まだ3分の2が残っているからそれだけでも忘れずに観に行こうと決めた。
隊員たちの動きを大画面で観ながら、正隊員の解説を聞くのは結構貴重なことだと思う。自分とは違う考えを持つ人の意見を聞いて、戦い方や戦略を見直すチャンスに繋がるからだ。

「いや、炒飯にやられてるなら、回復に専念させなきゃ。また後日改めて会ってくるよ」

「りょーかい」


目的は果たすことは出来なかったが仕方ない。借りたものは彼が生きてるときに渡そう。


とりあえず、やるべきことはなくなったので、おサノと昼ご飯を共にすることにした。
わたしはきつねうどんで、おサノはオムライスを頼んで談笑しながら食べた。ボーダーの食堂のメニューはどれを選んでも美味しい。今日はうどんを食べたい気分だったから頼んだけど、気になるので小佐野からオムライスを一口貰ってしまった。やっぱり美味しい。

「美味しい~おサノありがとう!」

「良いってことよ」

食後のデザートも注文していたおサノがデザートのナタデココを見ながら「すわさ~ん」と言う。正方形なら何でも良いのか。そういえば風間さんの似たような光景を先週見た。この前食パンを見て「諏訪の6枚切りだな」と言いながら食べていた。あれはいくら何でもひどいと思う。

「そういえば、おうじせんぱいが宮矢さんのこと探してるって」

「えっなんだろう、学校のことかな」

「わかんない。ひさとがランク戦ブースで見かけたんだけど、ずっと本部で宮矢さん探してるらしいよ」

「王子隊も今日昼にランク戦あったんだよね?事前の準備とかあっただろうに、
それは申し訳ない。堤さん探して歩き回ってたからすれ違いしたかも」

「メールとかで連絡すればいいのにね」

「わたし今日財布とトリガーしか持たないで本部来たから。昨日の夜からスマホ触ってない」

「女子高校生とは思えませんわ~」

「そりゃどうも。もうすぐ卒業するしね」

「…そういう意味で言ってないもん。まだ卒業しないでしょ~」

不満だと、眉をひそめてポカポカ肩を叩いてくる。もうすぐわたしが卒業してしまうからなのか、最近はいつもよりも学校で後輩たちに声をかけられることが多い。わたしはボーダー辞めないから本部に来ればいつもと同じように会えるのに、寂しい思いはするらしい。思っていたよりも好かれていたんだなと思えて、ちょっと嬉しかったりする。
機嫌を直そうと、おサノの頭を撫でながら言葉をかける。

「大丈夫。学校には行かなくなるけど、本部に来ればいつでもわたしは会えるから」

「ほんと?」

「いつでもは言い過ぎた。でも、サークルにも入らないし、あと、授業聞いて…研究室に入り浸る…忙しいかも」

「絶対もっと忙しくなるやつだ。も~大学生になってもいいから、ちゃんと諏訪隊に遊びに来てよね」

「うん。約束。ボーダーに来たらおサノたちに声かけるよ」

「いい?おうじせんぱいよりもわたしたちの方にだよ」

小指を向けられてはやく、と催促してくるのでわたしの指を絡ませて指切りげんまんをする。
親戚の子供たちと時々会うと、別れ際にまた今度遊ぶことを約束するときも今のと方法だった。同じことしているからか、その親戚の子と目の前の一つ年下の後輩が重なって見えた。

「おお?うん、分かってるって」

そう言ってまた後輩の頭を撫でる。ツヤツヤのきちんと手入れされている髪に触っても怒らないでくれる、おサノとの距離感がなんだか卒業前になって今更うれしくなった。


後日、小説を返した時に会った堤さんは元気そうだった。「今日は暇ですか」と聞けば、前回加古さんが自分の作った炒飯を食べた後堤さんが意識混濁となってしまったことを悔やんでいるらしく、詫び炒飯をご馳走したいと言ったらしく、堤さんは今日も加古隊の作戦室に行くらしい。

ああ、今日新たに借りた小説もこれでは返すのはまた少し先になりそうだ。
とりあえずおサノに連絡することにした。
4/4ページ
スキ