in a twinkle2
結局、看護婦に見つかり二人揃ってお叱りを受けた。太陽は無断で病室を抜け出したこと、桃は大人の目が届かないところに行って保護者を心配させたからだ。
母親の病室の近くで見あたらない桃を探し、病院側にも尋ねていたらしい。そして偶然にも、太陽を探していた看護婦の女性が発見できたという。
「病室からこの公園が見えて、行ってみたくなったの」
しゅんと落ち込みながらここに来た理由を話した桃は迎えに来た看護婦に謝った。正直に話して反省していると見える子供に流石にこれ以上怒ることは止め、看護婦の女性も注意だけしてそれ以上桃を叱らなかった。
その後、病院に戻るまでの道を三人で手を繋いで歩いた。また気づいた時には姿が消えている、というのを看護婦が恐れたためである。
桃は何の抵抗もなく看護婦と手を繋ぎ、桃の反対の手を太陽が握って歩いている構図だ。
女性が見つけるまでの間にいつの間にか仲良くなったらしく、楽しそうに話している。どうやら今は太陽がサッカーについて熱く語っているらしく、体全体で楽しさを表現しながら桃に説明しているらしい。太陽がたまに擬音語で説明して分かりづらい時も、桃は笑って聞いていた。
女性から見た二人はとても可愛らしく、ずっと手を繋いでいる微笑ましい姿につい頬が緩んだ。
「ぼく、サッカーが大好きなんだ!サッカーってスッゴく楽しいんだよ!
桃ちゃんにも教えてあげたいな〜」
「もも、サッカー知ってるよ。てるみちゃんがプレーしてるの!それでね、頑張ってるてるみちゃん見ると、とってもドキドキするの…!だからサッカー大好き!」
「でもサッカーしたことはないんでしょ?ぼくが教えてあげる。ぼくだって上手だし、桃ちゃんが出来るようになったら、もっと好きになれるよ絶対!」
繋いでいた手を離し、そのまま桃の手首を掴み、右手の小指を突き出してみせた。
「なあに?」
「知らない?約束する時に指切りゲンマンするんだよ」
「指切りゲンマンは、知らない。でもジャンケンは出来る」
「ええ〜それじゃあ勝ち負けしか決まらないよ!指切りゲンマンするとね、絶対にみんな約束を守らなきゃいけないんだよ。針千本飲まされるんだ」
「針!?痛そう…」
「大丈夫!どんなに時間がかかっても、絶対絶対桃ちゃんにサッカーを教えるから…約束してくれる?」
太陽は生まれつき激しい運動が制限されている。小児科にいる医療関係者なら誰でも知っている事実で、看護師も分かっている。目の前でサッカーをするという発言は本来なら身体のために咎めるべきだが、太陽の表情を見て桃の前では言わないことにした。まだ幼い子がすぐに理解できる話ではないし、太陽本人がいる前自分が話すわけにもいかないからだ。
それに、やりたいことを全て否定するのは、間違っていることだと知っているから。
約束してくれるかどうか、顔を窺いながら桃の答えを待つ。
「いいよ」
あっさりと、約束した桃。
指切りゲンマンをするつもりらしく、同じように小指を突き出している。彼女の行動に太陽は思わず照れくさそうに笑い、小指を絡めた。
いつか果たせるかわからなくても、確かに太陽を勇気付ける約束だ。
詳しく知らない桃に歌を教えて、2人で歌いながら約束を交わし、最後に引っ掛けた指を外しながらこう言った。
「「指きぃーった!」」
「バイバイ、太陽くん」
「桃ちゃん、まだサッカー教えられないけど、会いに来てね…!」
看護婦の人に引き摺られながら距離が離れる桃に向かって大きく手を振った。
桃の母親の入院している部屋と太陽の部屋は階も違う、少し離れている場所にある。入口前で桃の家族が待っていると言うので2人はそこでお別れすることになったのだ。
病院の入口には桃の家族…照美ちゃんが仁王立ちして待っていた。見つかった桃の姿に安堵してこちらに気づいた時は嬉しそうな表情をしていたが、太陽の手を取る看護婦に会釈した後、すぐに笑顔を消した。
「駄目だよ桃ちゃん、姉さんも心配してたんだから」
怒鳴ることはせず、黙っていなくなったことを反省させようとする。桃の小さな肩に手を乗せ、言い聞かせるように桃に話した。
「僕が飲み物を買ってくるまで、姉さんの部屋で一緒に待つように言ったでしょ?
目が覚めたら姉さん、桃ちゃんがいなくてすごく焦ってたんだから」
「…ゴメンなさい。これからはちゃんと誰かに言ってからおでかけするから、その…あの、いっしょに…おかあさんにあやまってくれる?」
「うん、いいよ。ちゃんと心から謝ったら許してくれるよ」
「えへへ、よかった!」
また逸れることにならないように、二人は手を繋いで歩いていった。
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