サーカス
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「これが主な計画書です」
「うん、ありがとう」
計画書をチェックする英智さんの横で、私は内心ドキドキしていた。初めてひとりで作った計画書だ。あんずさんが『桜フェス』にかかりっきりだったからこの件は私が第一責任者となっている。いろんな人にアドバイスをもらいながら完成させたものだが、相手が納得してくれるかはわからないから不安になる。
「ふんふん、なるほど…」
最後のページを読み終えて、ホッチキスが止められた最初へと戻る。慈愛を含ませた微笑みを私に向けて、口元を動かした。
「おめでとう。最低限の要素は含まれているよ」
最低限、ということはベストではないということ。相変わらずこの人は捻くれて発言をする。
「…どこか、付け足した方がよろしいでしょうか」
「『fine』は最優のユニットでいなければいけないからいつもは隙間なく綿密に構成するのだけれど、この企画書では足りないものは山ほどある。だけど、今回は他のユニットとも合同でのイベントだからね。空白はあった方がいいよね」
君の実力がちょうどいい塩梅になってるね、と私に微笑む。
目の前が真っ赤にも真っ白にも染まった気がするが、それは心のうちに留めた。私も社会の一員で、アイドル界に従属しているのだ。幼稚な真似はしない。
♦︎
「悪魔!天使の皮を被った…えっと、そうルシファーよあの男!人の滑稽な姿に愉悦を感じてる!否定出来ない人の脆い所を突いてそうして自分の生を実感するなんて悪趣味!」
廊下を歩きながらただひとりの悪口を世界に響かせる。
辛口の評価を貰い、内心怒りに狂いながらもその場では表に出さず、仕事の内容を2人で決めていった。
その後、サーカスの映像を見るために残る英智さんと別れて不満を発散させている。
「私が悪口言ってるの、気づいてるんだろうなぁ」
「急いで向かわなくても平気だよ」と部屋を出る前に英智さんに言われた。きっと、感情が顔に出ていたのだろう。そしてその顔で他のアイドルに会うな、という意味もきっと含んでいた。
もう少しだけ不満を発散させてから、姫宮くんたちと合流することにした。
