Metropolis Unknown Antiques
「私の小鳥」
違う。貴女の小鳥じゃないと、エマは否定する。
しかし、目の前の男はただ微笑んでエマに触れる。
「私の小鳥」
触らないで、この檻から出して。
エマはそう言うが男は彼女の意見は一切聞き入れない。
「やめて!エマはエマなの!!」
スリープモードに入っていたエマが突然声を上げて起きた。私は心配になり、彼女に近づく。
「どうした?大丈夫か?」
「え、ええ、ごめんなさい。大丈夫なの」
「悪夢でも見たのかしら?」
栄養剤をエマに差し出したのは役職コード:ゴシップ、識別コード:パトリシア・ドーヴァルという女性だ。
現在我々が滞在しているのはメトロポリスの嘘を暴く為だけに存在する一味のアジトだ。彼女はその一味のメンバーなので当然此処にいると言うわけだ。
「悪夢?人造人間でも悪夢は見るの?」
「見るとも。最も、人間の様に創作性はない。過去の出来事の再現だけど」
「再現……」
「まぁまぁ!嫌な夢は忘れた方がいいぜ!エマ!この俺のナイスな顔を見て元気出しな!」
「……(こくこくと頷く)」
「ふふふ、ありがとうなの、みんな!」
同じく彼女に話しかけているのは役職コード:ネオン先鋒、識別コード:ウィリアム・エリスと役職コード:新聞紙の怪客、識別コード:ビクター・グランツの二人だ。
一味には後一人メンバーが居る。
しかし彼は滅多に顔を出さない。
『やぁみんな、揃っている様だね』
昔の映画で見た事ある、チャーリーズエンジェルのチャーリーの様にラジオ放送を通して私達に指示を出す。役職コード:海賊チャンネル、識別コード:ホセ・バーデン。一味のリーダーだ。
『エマ、体調の方はどうだい?』
「かなり良くなりましたなの。動作環境は正常です」
『よろしい。なら現状把握とこれからどうするかについて、話し合おうじゃないか』
全員が思い思いの格好で狭いアジトで寛ぎつつも真剣な表情になる。
エマも深刻な顔で頷いた。
『ではエマ、聞かせてくれないかい?君はどうして彼らに追われているのかを』
エマは一瞬私を見た。
私は後押しするように頷く。それを見て彼女は意を決して口を開いた。
「エマは……あのお方の籠の中の鳥だったなの」
「あのお方?それって誰の事だ?」
「???」
「籠の中の鳥と言うことはエマは監禁されていたのね。許せないわ」
三人は思い思いの事を口にする。(正確にはビクターは喋ってはいないが)
「あのお方……えっと、役職コードは知らないの。エマはあのお方をスキャンする事を許可されてなかったから。だから本人から教えてもらった識別コードの名前の部分だけになるんだけど」
「まぁ、無いよりはマシだ。教えてくれないか、エマ」
「ジョゼフさん、と言うの」
ジョゼフ?聞き覚えのない名前だった。
他の三人も首を傾げている。心当たりはない様だ。
「ホセ、君はジョゼフなる人物を知っているか?」
私はラジオ越しにホセに声をかける。
彼の声は戸惑っていた。
『もしや……いや、わからない。役職コードと識別コードのフルネームがないと確証が無い』
「なに?」
『もし私が思ってる最悪の人物だとしたら、彼の役職コードを口に出すべきではない。発した人物は即座に見つかる可能性がある』
「どう言う事だ?そんなにマズイ人物なのか?」
『とりあえず、エマの話の続きを聞こう。私の勘違いかもしれないのだからね』
「………わかった」
モヤモヤしつつも確かにエマの話を聞くべきだと思い、彼女を再び見る。
エマはおずおずと続きを話し始めた。
「いつどこで製造されたのかとか覚えてないの。気がついたらジョゼフさんの所で囚われていたわ」
だがエマは制限はあったがデーターベースにアクセスをして外界を知る事は許可されていた。そこでずっと外の世界に焦がれていたのだと言う。
「ジョゼフさんがお出かけしている間にお世話ロボットさん達の前で歌ったの」
「歌う?」
なんだか急に不釣り合いな単語が出てきて戸惑った。何故そこで歌が出てくる?
「エマは『怪鳥』。エマが歌うと」
その時だった。
私の高性能スキャナーに熱源が感知された。これは……爆弾だ!
「みんな伏せろ!!」
「ひゃ!?」
私はそばに居たエマを抱えて臥せる。
みんなも私の言葉に従ってそのまま臥せた。
そしてその直後
ドォォォン!!という爆発音が天井から響き渡った。
お陰で屋根は吹き飛び、アジトの物品はほぼ全部吹き飛んだ。
『み、ガガ、無事、かガガガガガ』
ホセのラジオも壊れた。私は届いているか不明だが一応答えた。
「私とエマは無事だよ、ホセ」
「俺とパトリシアも無事だぜ!」
「んん!(僕とウィックも無事です!と書かれた新聞記事を見せる)」
良かった。全員煤だらけだが無事の様だ。
「ルカさん、また助けて貰っちゃったなの。本当にありがとうございますなの」
「まだ危険が去った訳じゃない。油断してはいけない」
ガシャン、ガシャン、ガシャン
爆弾を投げた奴がこちらに近づいて来た。
ペンギンの様な姿をした、人造人間ではなくロボット。
こいつは……犯罪者を壊す為の殲滅用の機体じゃないか!
「ボンボン、カイチョウ、トラエル。ジャマスルヤツ、コワス」
「エマも爆発に巻き込まれていたんだが!?これだから殲滅用は仕事が荒いんだ!!」
「ボンボン、メイレイ、ジッコウスル」
グシャッ!
ホセのラジオがボンボンに踏み潰される。
「ウィリアム!君はエマを抱えて逃げろ!君が一番機動力がある!」
「え、けどお前達はどうするんだよ!?」
「足止めをするしかない。ある程度時間をかけたら撤退する!」
「……そうだな。ウィリアムがいないとボンボンを倒す事は難しそうね。なら足止めが精一杯か」
「ん!」
「けどよ、そうだとしても最後に逃げたやつは……!」
安心しろ。言い出しっぺの私がちゃんとしんがりを務めるさ。
「大丈夫よ、ルカさん」
突然、エマがボンボンに向かって歩き出した。あんなにもオドオドしてた彼女が、真っ直ぐに殲滅用ロボットに向かって歩いて行った。
「何をしている!?戻るんだ、エマ!そいつは殲滅用だ、ちゃんと君を認識しているかすら怪しいんだぞ!?」
するとエマは振り向いて微笑んだ。
「ボンボンさんなら大丈夫なの。彼ならエマが歌えばなんとかなるから」
「えっ」
どう言う事だ?計算が追いつかない。
彼女の言葉の意味がわからない。
戸惑っていると彼女はそのまま歌い始めた。
嘘に塗り固まれた歌姫、永夜のオーロラよりも拙い、素人同然の歌声だ。
けれど、回路がひりつく様な感覚があった。
どう言う事だ??
「ボ、ン、、、ボ、ン………」
「そう。良い子ね、ボンボンさん。そのまま帰ってくれるわよね?」
「メイレイ、ボンボン、シタガウ……」
バチバチとショート音がしつつも、ボンボンはそのまま帰っていった。
彼女は歌っただけなのに。
もしや、もしかして……!
「え?どう言う事?パトリシア、ビクター、お前らわかるか?」
「さっぱりね」
「(首を横に振る)」
「ルカならわか」
「エマ!君、君はもしかして……!」
私は彼女の肩を掴んでまっすぐ彼女を見て問う。彼女は悲しそうな目を私に向けた。
「ええ。エマは、歌を歌う事によって命令コードを書き換える事が出来るの」
私は、とんでもない女性を助けてしまったようだ。
とある高層マンションの最上階。
そのフロアどころかマンション丸ごとがジョゼフの持ち物だ。
彼は今、とても苛立っていた。
自分の大切な小鳥が逃げ出したので捕獲を命じた男が何の成果もなく帰ってきたからだ。
「で、私の小鳥を見つけたいから自分達をバージョンアップしろと?本当に図々しい奴らだな。命令を失敗しておいて」
「恥を偲んで頼んでいます。私達も怪鳥さんをなんとしても捕まえたいと思っているのです。後もう少しという所で邪魔が入ってはらわたが煮えくり帰っているのです」
「……その言葉に嘘はなさそうだな」
ジョゼフは内蔵している嘘発見器で必安の状態を逐一確認しているが、変化はなかった。
「だが、お前達以外にももう既に刺客を何人か送った。バージョンアップが終わる前にそいつらが小鳥を捕まえてしまうかもしれないぞ?」
「ああ、ボンボンが向かっているのは確認しました。けれど……彼では無理でしょう?何せ怪鳥さんの『歌』への対策が全く打てないんですから」
「他にも居る」
「無駄ですよ。彼女は私達が捕まえるので」
自信満々に、ニッコリと笑う必安にジョゼフはまた質問する。
「お前達、私の小鳥に特別な感情を抱いたりしてないだろうな?」
「それなりには抱いてますよ?何せ彼女は悲劇的で、面白い。私達のお気に入りですから」
「……本当に食えない男だ」
「ふふ。こう言う男が一人は居ないと貴方様は退屈で死んでしまうでしょう?」
「うるさい。もう良い。好きなだけバージョンアップでもグレードアップでもしていけ。費用も問わない」
「謝々」
必安が去っていくのを憎々しく見つめた後、ジョゼフは部屋の中にある大きな鳥籠を眺めた。一部屋分程の大きさのある超巨大な鳥籠。その中には、何もない。
「ああ、早く帰ってきてくれ……早く君に会いたいんだ……今なら君のワガママを少しだけは聞いてあげるから……私の小鳥……」
彼のその言葉に、返事をする者はいなかった。
to be continued……
違う。貴女の小鳥じゃないと、エマは否定する。
しかし、目の前の男はただ微笑んでエマに触れる。
「私の小鳥」
触らないで、この檻から出して。
エマはそう言うが男は彼女の意見は一切聞き入れない。
「やめて!エマはエマなの!!」
スリープモードに入っていたエマが突然声を上げて起きた。私は心配になり、彼女に近づく。
「どうした?大丈夫か?」
「え、ええ、ごめんなさい。大丈夫なの」
「悪夢でも見たのかしら?」
栄養剤をエマに差し出したのは役職コード:ゴシップ、識別コード:パトリシア・ドーヴァルという女性だ。
現在我々が滞在しているのはメトロポリスの嘘を暴く為だけに存在する一味のアジトだ。彼女はその一味のメンバーなので当然此処にいると言うわけだ。
「悪夢?人造人間でも悪夢は見るの?」
「見るとも。最も、人間の様に創作性はない。過去の出来事の再現だけど」
「再現……」
「まぁまぁ!嫌な夢は忘れた方がいいぜ!エマ!この俺のナイスな顔を見て元気出しな!」
「……(こくこくと頷く)」
「ふふふ、ありがとうなの、みんな!」
同じく彼女に話しかけているのは役職コード:ネオン先鋒、識別コード:ウィリアム・エリスと役職コード:新聞紙の怪客、識別コード:ビクター・グランツの二人だ。
一味には後一人メンバーが居る。
しかし彼は滅多に顔を出さない。
『やぁみんな、揃っている様だね』
昔の映画で見た事ある、チャーリーズエンジェルのチャーリーの様にラジオ放送を通して私達に指示を出す。役職コード:海賊チャンネル、識別コード:ホセ・バーデン。一味のリーダーだ。
『エマ、体調の方はどうだい?』
「かなり良くなりましたなの。動作環境は正常です」
『よろしい。なら現状把握とこれからどうするかについて、話し合おうじゃないか』
全員が思い思いの格好で狭いアジトで寛ぎつつも真剣な表情になる。
エマも深刻な顔で頷いた。
『ではエマ、聞かせてくれないかい?君はどうして彼らに追われているのかを』
エマは一瞬私を見た。
私は後押しするように頷く。それを見て彼女は意を決して口を開いた。
「エマは……あのお方の籠の中の鳥だったなの」
「あのお方?それって誰の事だ?」
「???」
「籠の中の鳥と言うことはエマは監禁されていたのね。許せないわ」
三人は思い思いの事を口にする。(正確にはビクターは喋ってはいないが)
「あのお方……えっと、役職コードは知らないの。エマはあのお方をスキャンする事を許可されてなかったから。だから本人から教えてもらった識別コードの名前の部分だけになるんだけど」
「まぁ、無いよりはマシだ。教えてくれないか、エマ」
「ジョゼフさん、と言うの」
ジョゼフ?聞き覚えのない名前だった。
他の三人も首を傾げている。心当たりはない様だ。
「ホセ、君はジョゼフなる人物を知っているか?」
私はラジオ越しにホセに声をかける。
彼の声は戸惑っていた。
『もしや……いや、わからない。役職コードと識別コードのフルネームがないと確証が無い』
「なに?」
『もし私が思ってる最悪の人物だとしたら、彼の役職コードを口に出すべきではない。発した人物は即座に見つかる可能性がある』
「どう言う事だ?そんなにマズイ人物なのか?」
『とりあえず、エマの話の続きを聞こう。私の勘違いかもしれないのだからね』
「………わかった」
モヤモヤしつつも確かにエマの話を聞くべきだと思い、彼女を再び見る。
エマはおずおずと続きを話し始めた。
「いつどこで製造されたのかとか覚えてないの。気がついたらジョゼフさんの所で囚われていたわ」
だがエマは制限はあったがデーターベースにアクセスをして外界を知る事は許可されていた。そこでずっと外の世界に焦がれていたのだと言う。
「ジョゼフさんがお出かけしている間にお世話ロボットさん達の前で歌ったの」
「歌う?」
なんだか急に不釣り合いな単語が出てきて戸惑った。何故そこで歌が出てくる?
「エマは『怪鳥』。エマが歌うと」
その時だった。
私の高性能スキャナーに熱源が感知された。これは……爆弾だ!
「みんな伏せろ!!」
「ひゃ!?」
私はそばに居たエマを抱えて臥せる。
みんなも私の言葉に従ってそのまま臥せた。
そしてその直後
ドォォォン!!という爆発音が天井から響き渡った。
お陰で屋根は吹き飛び、アジトの物品はほぼ全部吹き飛んだ。
『み、ガガ、無事、かガガガガガ』
ホセのラジオも壊れた。私は届いているか不明だが一応答えた。
「私とエマは無事だよ、ホセ」
「俺とパトリシアも無事だぜ!」
「んん!(僕とウィックも無事です!と書かれた新聞記事を見せる)」
良かった。全員煤だらけだが無事の様だ。
「ルカさん、また助けて貰っちゃったなの。本当にありがとうございますなの」
「まだ危険が去った訳じゃない。油断してはいけない」
ガシャン、ガシャン、ガシャン
爆弾を投げた奴がこちらに近づいて来た。
ペンギンの様な姿をした、人造人間ではなくロボット。
こいつは……犯罪者を壊す為の殲滅用の機体じゃないか!
「ボンボン、カイチョウ、トラエル。ジャマスルヤツ、コワス」
「エマも爆発に巻き込まれていたんだが!?これだから殲滅用は仕事が荒いんだ!!」
「ボンボン、メイレイ、ジッコウスル」
グシャッ!
ホセのラジオがボンボンに踏み潰される。
「ウィリアム!君はエマを抱えて逃げろ!君が一番機動力がある!」
「え、けどお前達はどうするんだよ!?」
「足止めをするしかない。ある程度時間をかけたら撤退する!」
「……そうだな。ウィリアムがいないとボンボンを倒す事は難しそうね。なら足止めが精一杯か」
「ん!」
「けどよ、そうだとしても最後に逃げたやつは……!」
安心しろ。言い出しっぺの私がちゃんとしんがりを務めるさ。
「大丈夫よ、ルカさん」
突然、エマがボンボンに向かって歩き出した。あんなにもオドオドしてた彼女が、真っ直ぐに殲滅用ロボットに向かって歩いて行った。
「何をしている!?戻るんだ、エマ!そいつは殲滅用だ、ちゃんと君を認識しているかすら怪しいんだぞ!?」
するとエマは振り向いて微笑んだ。
「ボンボンさんなら大丈夫なの。彼ならエマが歌えばなんとかなるから」
「えっ」
どう言う事だ?計算が追いつかない。
彼女の言葉の意味がわからない。
戸惑っていると彼女はそのまま歌い始めた。
嘘に塗り固まれた歌姫、永夜のオーロラよりも拙い、素人同然の歌声だ。
けれど、回路がひりつく様な感覚があった。
どう言う事だ??
「ボ、ン、、、ボ、ン………」
「そう。良い子ね、ボンボンさん。そのまま帰ってくれるわよね?」
「メイレイ、ボンボン、シタガウ……」
バチバチとショート音がしつつも、ボンボンはそのまま帰っていった。
彼女は歌っただけなのに。
もしや、もしかして……!
「え?どう言う事?パトリシア、ビクター、お前らわかるか?」
「さっぱりね」
「(首を横に振る)」
「ルカならわか」
「エマ!君、君はもしかして……!」
私は彼女の肩を掴んでまっすぐ彼女を見て問う。彼女は悲しそうな目を私に向けた。
「ええ。エマは、歌を歌う事によって命令コードを書き換える事が出来るの」
私は、とんでもない女性を助けてしまったようだ。
とある高層マンションの最上階。
そのフロアどころかマンション丸ごとがジョゼフの持ち物だ。
彼は今、とても苛立っていた。
自分の大切な小鳥が逃げ出したので捕獲を命じた男が何の成果もなく帰ってきたからだ。
「で、私の小鳥を見つけたいから自分達をバージョンアップしろと?本当に図々しい奴らだな。命令を失敗しておいて」
「恥を偲んで頼んでいます。私達も怪鳥さんをなんとしても捕まえたいと思っているのです。後もう少しという所で邪魔が入ってはらわたが煮えくり帰っているのです」
「……その言葉に嘘はなさそうだな」
ジョゼフは内蔵している嘘発見器で必安の状態を逐一確認しているが、変化はなかった。
「だが、お前達以外にももう既に刺客を何人か送った。バージョンアップが終わる前にそいつらが小鳥を捕まえてしまうかもしれないぞ?」
「ああ、ボンボンが向かっているのは確認しました。けれど……彼では無理でしょう?何せ怪鳥さんの『歌』への対策が全く打てないんですから」
「他にも居る」
「無駄ですよ。彼女は私達が捕まえるので」
自信満々に、ニッコリと笑う必安にジョゼフはまた質問する。
「お前達、私の小鳥に特別な感情を抱いたりしてないだろうな?」
「それなりには抱いてますよ?何せ彼女は悲劇的で、面白い。私達のお気に入りですから」
「……本当に食えない男だ」
「ふふ。こう言う男が一人は居ないと貴方様は退屈で死んでしまうでしょう?」
「うるさい。もう良い。好きなだけバージョンアップでもグレードアップでもしていけ。費用も問わない」
「謝々」
必安が去っていくのを憎々しく見つめた後、ジョゼフは部屋の中にある大きな鳥籠を眺めた。一部屋分程の大きさのある超巨大な鳥籠。その中には、何もない。
「ああ、早く帰ってきてくれ……早く君に会いたいんだ……今なら君のワガママを少しだけは聞いてあげるから……私の小鳥……」
彼のその言葉に、返事をする者はいなかった。
to be continued……