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生まれ変わる
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「いいか、除霊をするとき大切なのは、何より悪霊に負けない強い意志だ。どんなことがあっても、決して取り乱すんじゃないぞ。」
雷が窓の外を明るく照らす、天気の悪い頃。
俺と稲葉さんは、立野くんにとりついているらしい霊を祓うソレの見学に来ていた。
不安しかないが、それでも先生の目は本気だし…でも、それは俺だけじゃなかった。
「俺、まだ半信半疑なんだよ…そんな霊なんてものがいるなんて…。」
立野くんも、不安に感じている存在の一人だった。
あたしは信じてるよ、なんて稲葉さんは言うが、先生が過去にどんな感じだったのかとか知らない俺達にとって、それは気休めにもならない。
だが…
「かまわない。戦う意思さえあればね。さあ、始めるぞ。」
なんとなく、本当になんとなくだが、先生を見るとなんとかしてくれるんじゃないかって気になった。
「南無大慈大悲 救苦救難 広大霊感 白衣観世音…立野広にとりつきし悪霊よ、我が前にその姿を見せよ。
南無大慈大悲 救苦救難───」
先生の声のみが聞こえていたが、少しずつ立野くんの様子が変わる。
…手のひらからにょろにょろと出てくる虫。
……そのあまりの気持ち悪さに、俺は一瞬吐きそうになったが堪える。
いや、あれは気持ち悪いって!!
何だよアレ!
「───広大霊感 白衣観世音…悪霊よ!その姿を見せよーっ!!」
少しずつにょろにょろと現れていただけだった虫は、太く大きく、そして、勢いよく手から飛び出してきた。
出てきたのは、俺が何人分になるかと言うほどのサイズ。
「おえっ…気持ち悪ッ!!」
実はにょろにょろ系が苦手な俺はその姿についに吐き気を堪えきれなくなったが、汚い話で喉まで這い上がってきたものを飲み込んだ。
「衷妖…九十九の蟲が成長し、巨大化した姿だ…。これほど巨大なものは始めてみた!」
そんなことはいいから退治できるなら退治してくれ!!
それが俺の心からの叫びだった。
驚くだとかなんだとかの前に、気持ち悪い…。とにかく気持ち悪いしか言えない俺は、きっと此処にいるには一番にあわない存在だと思う。
「ククク…誰だ誰だ、俺様を呼び出した奴は?身の程知らずの生臭坊主か?」
腹の奥底から響くような気持ち悪い声に、俺はまた吐き気がするが流石に他の奴等が目の前のにょろにょろに恐れ戦きながらも逃げてないってのに俺がここでギャーギャーするのは恥ずかしいために我慢する。
何だかんだで、男ってのはプライドの塊だ。
どれだけ自分が嫌だろうと立ち向かわなければならないこともある…ホント、女に生まれても男は男だからな。
「霊能力者、鵺野鳴介!立野広の担任だ!…貴様に命令する!広から離れておとなしくあの世へ帰るんだ!」
「ケケケ…冗談じゃない、誰が帰るものか!その子の体は住み心地がいい…気が満ち溢れているからな。」
「ふん…ならば力ずくで除霊してやろう。」
「ククク…除霊するだとォ?貴様のような青二才が…この衷妖様を…ククク…。ふざけるな!!」
にょろにょろと先生との言葉の応酬が続いたが、それもにょろにょろが先生を攻撃したことにより終わりを告げた。
「先生!」
「大丈夫、かすり傷だ。」
…かすり傷でも腕から大量に流れる血。
実は俺、自分の血は大丈夫だが他人の血は大の苦手だったりする。
なんてことだ!!偶然立野くんに声をかけたことによって此処にいることになったが、既ににょろにょろと血の2コンボによって俺の精神がガリガリと削られていく…!!
そして、更に巻き起こる騒霊ポルターガイスト現象にガリガリどころかバリバリと剥がれ落ちていく俺の精神。
good bye…俺の精神の平穏!come on 精神の平穏!
「に、逃げよう!あんなの相手に戦えるわけないよ!」
「警察を…いや、自衛隊を呼ぼう!!」
「神父でもシスターでも住職さんでも連れて…。」
二人が先生に向かって言うことに便乗してさりげなく言ったが、先生は俺が倒すと言って聞かなかった。
でも、その次の行動でその理由がわかった。
俺達は忘れていたんだ。
見せてもらったばかりの、俺達の目には普段は見えない手の存在を…
鬼の力を──────
「南無大慈 大悲救苦救難 広大霊感 白衣観世音…我が左手に封じられし“鬼”よ!!今こそその力を…示せ!!」
その言葉に、手袋のはずされた左手は眩いほどに光を放つ。
心臓がドクドクと音が鳴って…人間の手とは明らかに違う、紫ともピンクとも言えない色の、初めて見るタイプの手が現れた。
これが、噂の鬼の手…
信じられなかった。本当にこんなものがあるとは思わなかった。
でも、実際に見てしまえば…妖怪が倒されるのを見てしまえば信じるしかなくて…
俺は、今までの先生の認識を改めた。
「あ、あれが…ぬ~べ~先生の本当の…。」
「そうよ!私たちの先生よ!」
稲葉さんと立野くんが何か言っているが、そんなの耳に入らない。ただ、
「あれが、先生の本当の姿…。」
ただ、純粋に先生の姿に見惚れていた。カッコ良かった。
これからは先生のことを尊敬しようと思った俺だったが、その翌日、立野くんをサッカー部に入部させるために、あのにょろにょろがとり憑いたせいで暴力を振るった相手にやり返せと言わんばかりに立野くんに向けて暴力を振るわせた鵺野先生に、俺の中での先生の評価が、認識が、格段に下がったことは言うまでもない。
「あ、蓮!ありがとな!」
「いや、俺の方、こそ…。ありがとう。」
サッカーが終わった後、俺は立野くんと話した。
その表情は、少し前とは違って前よりも明るくなったように感じた…。