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生まれ変わる
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俺の名前は南雲蓮。
性別は女。普通の小学校に通う、ごくごく普通の小学生だ。
父は、江戸時代以前から続く老舗の料理店を経営している。
母は俺を産んですぐ亡くなったらしく、顔も見たことがない。だから、俺は母の代わりに祖母に育てられた。
…男として。
その理由だが、…この家には不思議な言い伝えがあった。
俺は信じるつもりはないんだが、
〝この家に産まれた女は、20を迎えるまで男の姿をしなければならない。〟
というもの。
過去にそれを破った女性は、それから3日と経たずに亡くなったそうだ。
だから、俺は男物の服を身につけ過ごしていた。当然だが下着は男物で、胸もさらしを巻き付けなければならないという、成長期にはよろしくない上、裸というのも女の格好とカウントされないように急ぐため、風呂もゆっくり入ってられない。そして、その生活をあと約10年も続けなければならない。
この言い伝えで得をしたことはあまりないと思う。
突然だが、俺には前世の記憶というものがある。
和菓子職人だった両親の跡を継ぎたくなく、でも人を食べ物で幸せにしたかった俺は、パティシエになることを決意し、本場のフランスで学ぶ許可を両親からもぎ取った。
そして、数年間修行して一人前と認められた俺は、日本へ帰ろうと空港行きのバスに乗り…死んだ。
そして、気が付いた時には、今の俺である南雲蓮になっていた。
それから、俺は物静かな子を演じるようになっていた。
はっきり言うと、小学生のノリについていけないからだが、今じゃ演技じゃなくてもそんな風な態度になるまでに成長した。…そのことは置いておこう。
前世は男だった分、男のフリをするのはそこまで苦痛ではなかった。だが、兄は違ったらしく…俺が男として生きることを良しとしてはいなかった。何度俺は満足してると言っても信じてもらえず、気が付くと民俗学で狐の伝承について調査をするようになっていた。兄は、この俺が男のふりをしなければならないいう伝承には狐が絡んでいるだろうと言っていた。きっと、俺の言葉を信じてもらえなかったのは、俺が物静かな子を演じていたことも関係しているだろうな。
兄は家業を継ぐことを条件に調査に出かけたが、最後にただ一言、「解決法を必ず見付け出してくる。」とだけ言ってから出て行き、どれだけの月日が流れたのだろうか…兄はまだ帰ってこない。今はどこで何をしているのか、分からないということが辛いとは思っていなかった。
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俺の朝は早い。
朝起きてやることは、食事作りだったりする。
と言っても、当たり前だが客の朝食ではなく、俺と父の分だ。前までは祖母が作っていたのだが、高齢のために兄が調査で家を出る数年前に亡くなり、それ以来、俺が作ることとなった。
学校が遠いために仕方がないとはいえ、始めた頃はなかなか起きることができずに大変だった。
前世の頃ならまだしも、今の俺は小学生で、早寝早起き朝御飯を続けていたが、流石に早すぎる朝は馴染むのに一苦労だった。…もし家業の仕事もするようになったらどうなるんだろう…。
簡単な味噌汁に卵焼きと大根おろし、ご飯を炊いて、沢庵に白菜のお浸し。昨日は焼き魚だったし、明日はちょっとした肉料理も良いかもしれない。
そう考えながら、朝食を作った。
が、そろそろ準備しないと俺が遅刻する。
俺は、テーブルに食事を並べると、先に食べて家を出た。この家は山の方にあるために学校は遠いが、通えない距離ではない。
本当に遅刻しそうなときはバスを使うが、今日はそうでもないから助かった。
父は忙しい人であり、顔をあわせることは滅多にないが、その分お小遣いははずんでいる。いくら忙しくても、俺が準備した朝食をしっかり食べてくれて、そのご飯の評価した紙をテーブルの上に置いていてくれるというのが嬉しい。まぁ、評価があった方が分かりやすいし、お互い美味しいものが食べれるようになっていいだろう。
俺は亡くなった母にそっくりな顔立ちをしている(らしい)というのも、お小遣いがはずむ理由の一つとしてあげられるのだろう。
だから、バス代はお小遣いがあればなんとかなる。
もうすぐ学校だというところまで歩いたところで、誰かが工事中の溝から這い上がってくるのを見た。
いや、誰かと表現したが、俺はその人物が何者かわかっているのだから、心のどこかで他人のフリをしたかったようだ…。
「先生、何しているんですか?」
「お!蓮か…悪いが手を貸してくれないか?」
「構いませんが、その格好で学校へ行くつもりですか?」
伸ばされた手を掴み踏ん張る。
なんとか出ることができた先生…鵺野鳴介先生は照れたように着替えてから行くと言うと、急いで走っていった。
きっと、その走っていった方向に自宅があるのだろう。後を追いたいが時間は待ってくれない。このままでは遅刻確定になる。先生は先生で何とかするだろう。
そう結論付けて、俺は学校へと走った。