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今日、1月13日はワース・マドルの誕生日。
「なのに、なんでアンタってば校内の図書館で勉強漬けなのよ。せっかくの誕生日、しかも休日だってのに」
当然、図書館という厳正な場所なので名前はその不満を小声でワースにぶつける。
「あぁ? 急に押しかけてきて説教かよ。ったく……余計なお世話だっつの。どんな日にオレがどこで何してようと勝手だろーが」
声をひそめたワースは名前に目もくれず、難しそうな参考文献を見ながら机上のノートにペンで何かの数式を走らせた。その綺麗な文字の羅列に名前が胸をときめかせていれば、急にペン先をこちらに向け、嫌そうに口元を歪ませて。
「おい、人のことジロジロ見てんじゃねーよ。ほら散った散った」
シッシッと手でおいやる動作を名前にする度、ワースの握ったペンの羽がふわりと揺れる。それを見て確かに邪魔をしたのは自分だと名前は考えを改め、ワースの元から一度離れた。ここは仕方がないがワースの気が済むまで待つしかないようだ。
*
自分の読みたいと思っていた本を二冊取り、静かに椅子を引き、名前は席に着く。
「……なんでテメェ、オレの前に座ってんだよ」
「席が空いてたから」
「あっちの広いところ使えばいいだろうが。誰もいねぇんだし」
「どんな日にわたしがどこで何してようと勝手でしょうが」
「テメェッ……!」
ワースは苛立ちを隠さず、プルプルと小刻みに震えたが、フゥと大きくため息をつくと「それもそうだな」と諦めたように言った。
「一段落したら声かけなさいよ」
「絶対かけねぇ」
露骨に嫌な表情を隠そうともせず、ワースは読んでいた参考文献に再度目を落とし、走らせたペン先をしばらく止めることはなかった。
それから、何時間経ったろうか。眠ることこそなかったが、名前はうとうとと船を漕ぎ、睡魔に何度か襲われかけていた。
ワースはそんな名前を見て呆れながら、持っていたペンを静かに置いた。名前が一体さっきから何の本を読んでいるのか気になったからだ。何読んでるのか見てやるよ。そう思い、ワースは向かい側から覗き込んだ。
「あ? なんだこれ」
そう。名前が開いていたそのページには、自分の好きなデザートの写真が大きく載っていて。キラキラと彩られた美しいフルーツたちはまさに芸術品のようだった。
「……ご丁寧にカモフラージュのつもりかよ」
本を同時に二冊被せるように開き、立てて読んでいたためにおかしいとは思っていたが。ワースは少しだけ口角を上げて、椅子に座り直した。すると、名前は寝ていたわけではなかったようで、ワースを見てムッとした顔で睨んできた。
「ちょっと。乙女の寝込みを邪魔しておきながらニヤニヤしてんじゃないわよ」
「どこに乙女がいんだよバーカ」
「は? ここにいるでしょうが。アンタ何のためにサングラスしてんのよ」
「少なくともテメェのためではねーよ」
ワースに言い返せなかったことが悔しかったのだろう。机に突っ伏して拗ね始めた名前を見てワースは少し考え込んでから、読んでいた文献を閉じることに決めた。
「おい」
「……」
「いじけてんじゃねぇよ」
「別にいじけてないし」
「……めんどくせぇな。遊んでやるっつってんだよ」
その一声でガバッと起き上がった名前に思わず犬かよと笑いそうになるのをワースは堪えた。
*
目的地こそ決まってないが、図書館を出て歩き出したワースは名前に疑問を投げかけた。
「で、なんだったんだよ。あのフルーツポンチは」
ご丁寧に他の本で隠してということは追求しなかったが。
「え、いや、あの、その……」
「煮えきらねぇな、なんかあんじゃねぇの?」
名前が言いにくそうに、でも意を決して理由を話そうとしたその瞬間。
「名前〜!」
その声とともにピンク色の綺麗なツインテールを揺らしながら走ってきたのは、同じ寮の仲間であるラブだった。
ラブは隣のワースを一目見るなり、にんまりと笑って名前に耳打ちした。
「その調子だと誘えたの?」
「誘えたっていうか、誘われたっていうか……」
「も〜、二人きりで祝いたいからって名前が言ってたから私は気を使ったの! あれだけ、ワースの好物作って喜んで欲しいって言ってたんだから大丈夫なの」
名前の目の前でパチンと可愛いウインクをしたラブはするっと目の前からいなくなってしまった。その間、数秒。感謝を伝える暇もなかった。
「……急に出てきてなんだアイツ。というかよ」
「なによ」
「アイツ声デカくね? 全部丸聞こえだっつーの。でも、名前が反論してないっつーことは……合ってるって認識でいいのかよ」
ワースは軽く頭をかいて、名前を窺うように目線を合わせた。名前は肯定の意を込めて、ただコクリと頷く。
「素直じゃねぇよな。テメェはいつも」
「……誰のせいだと」
「誰のせいだか」
飄々と歩き出すワースの服の袖を名前がグイッと引っ張れば、もちろん動きも止まるわけで。
「んだよ」
「祝いたいの! アナタの誕生日! だから待ってたの……フルーツポンチも作ってあるし」
「素直じゃねぇか」
「だって……その人一倍努力してる姿を好きって思っちゃったんだから、そりゃその時間は待つしかないでしょ。大事な時間だし」
「……」
「ちょっと、なんか言いなさいよ」
不意にこぼれた笑みを名前に気づかれないように、ワースは自分のサングラスを指でクイッと上げた。自分の血のにじむような努力を認めてくれる存在がいる。ただそれだけのことが、ワースの心を軽くさせ、気を良くさせた。
「悪いもんじゃねぇな」
「え?」
「なんでもねぇ。ほら、早く案内しろ。腹減った」
文句を言う名前を促して先導させたワースの足取りは軽く、これから好物を食べられるというのもあって気分が高揚していた。名前の心づかいに感謝しつつ、お礼も込めて頭をわしゃわしゃしたら怒られたのは余談である。
「なのに、なんでアンタってば校内の図書館で勉強漬けなのよ。せっかくの誕生日、しかも休日だってのに」
当然、図書館という厳正な場所なので名前はその不満を小声でワースにぶつける。
「あぁ? 急に押しかけてきて説教かよ。ったく……余計なお世話だっつの。どんな日にオレがどこで何してようと勝手だろーが」
声をひそめたワースは名前に目もくれず、難しそうな参考文献を見ながら机上のノートにペンで何かの数式を走らせた。その綺麗な文字の羅列に名前が胸をときめかせていれば、急にペン先をこちらに向け、嫌そうに口元を歪ませて。
「おい、人のことジロジロ見てんじゃねーよ。ほら散った散った」
シッシッと手でおいやる動作を名前にする度、ワースの握ったペンの羽がふわりと揺れる。それを見て確かに邪魔をしたのは自分だと名前は考えを改め、ワースの元から一度離れた。ここは仕方がないがワースの気が済むまで待つしかないようだ。
*
自分の読みたいと思っていた本を二冊取り、静かに椅子を引き、名前は席に着く。
「……なんでテメェ、オレの前に座ってんだよ」
「席が空いてたから」
「あっちの広いところ使えばいいだろうが。誰もいねぇんだし」
「どんな日にわたしがどこで何してようと勝手でしょうが」
「テメェッ……!」
ワースは苛立ちを隠さず、プルプルと小刻みに震えたが、フゥと大きくため息をつくと「それもそうだな」と諦めたように言った。
「一段落したら声かけなさいよ」
「絶対かけねぇ」
露骨に嫌な表情を隠そうともせず、ワースは読んでいた参考文献に再度目を落とし、走らせたペン先をしばらく止めることはなかった。
それから、何時間経ったろうか。眠ることこそなかったが、名前はうとうとと船を漕ぎ、睡魔に何度か襲われかけていた。
ワースはそんな名前を見て呆れながら、持っていたペンを静かに置いた。名前が一体さっきから何の本を読んでいるのか気になったからだ。何読んでるのか見てやるよ。そう思い、ワースは向かい側から覗き込んだ。
「あ? なんだこれ」
そう。名前が開いていたそのページには、自分の好きなデザートの写真が大きく載っていて。キラキラと彩られた美しいフルーツたちはまさに芸術品のようだった。
「……ご丁寧にカモフラージュのつもりかよ」
本を同時に二冊被せるように開き、立てて読んでいたためにおかしいとは思っていたが。ワースは少しだけ口角を上げて、椅子に座り直した。すると、名前は寝ていたわけではなかったようで、ワースを見てムッとした顔で睨んできた。
「ちょっと。乙女の寝込みを邪魔しておきながらニヤニヤしてんじゃないわよ」
「どこに乙女がいんだよバーカ」
「は? ここにいるでしょうが。アンタ何のためにサングラスしてんのよ」
「少なくともテメェのためではねーよ」
ワースに言い返せなかったことが悔しかったのだろう。机に突っ伏して拗ね始めた名前を見てワースは少し考え込んでから、読んでいた文献を閉じることに決めた。
「おい」
「……」
「いじけてんじゃねぇよ」
「別にいじけてないし」
「……めんどくせぇな。遊んでやるっつってんだよ」
その一声でガバッと起き上がった名前に思わず犬かよと笑いそうになるのをワースは堪えた。
*
目的地こそ決まってないが、図書館を出て歩き出したワースは名前に疑問を投げかけた。
「で、なんだったんだよ。あのフルーツポンチは」
ご丁寧に他の本で隠してということは追求しなかったが。
「え、いや、あの、その……」
「煮えきらねぇな、なんかあんじゃねぇの?」
名前が言いにくそうに、でも意を決して理由を話そうとしたその瞬間。
「名前〜!」
その声とともにピンク色の綺麗なツインテールを揺らしながら走ってきたのは、同じ寮の仲間であるラブだった。
ラブは隣のワースを一目見るなり、にんまりと笑って名前に耳打ちした。
「その調子だと誘えたの?」
「誘えたっていうか、誘われたっていうか……」
「も〜、二人きりで祝いたいからって名前が言ってたから私は気を使ったの! あれだけ、ワースの好物作って喜んで欲しいって言ってたんだから大丈夫なの」
名前の目の前でパチンと可愛いウインクをしたラブはするっと目の前からいなくなってしまった。その間、数秒。感謝を伝える暇もなかった。
「……急に出てきてなんだアイツ。というかよ」
「なによ」
「アイツ声デカくね? 全部丸聞こえだっつーの。でも、名前が反論してないっつーことは……合ってるって認識でいいのかよ」
ワースは軽く頭をかいて、名前を窺うように目線を合わせた。名前は肯定の意を込めて、ただコクリと頷く。
「素直じゃねぇよな。テメェはいつも」
「……誰のせいだと」
「誰のせいだか」
飄々と歩き出すワースの服の袖を名前がグイッと引っ張れば、もちろん動きも止まるわけで。
「んだよ」
「祝いたいの! アナタの誕生日! だから待ってたの……フルーツポンチも作ってあるし」
「素直じゃねぇか」
「だって……その人一倍努力してる姿を好きって思っちゃったんだから、そりゃその時間は待つしかないでしょ。大事な時間だし」
「……」
「ちょっと、なんか言いなさいよ」
不意にこぼれた笑みを名前に気づかれないように、ワースは自分のサングラスを指でクイッと上げた。自分の血のにじむような努力を認めてくれる存在がいる。ただそれだけのことが、ワースの心を軽くさせ、気を良くさせた。
「悪いもんじゃねぇな」
「え?」
「なんでもねぇ。ほら、早く案内しろ。腹減った」
文句を言う名前を促して先導させたワースの足取りは軽く、これから好物を食べられるというのもあって気分が高揚していた。名前の心づかいに感謝しつつ、お礼も込めて頭をわしゃわしゃしたら怒られたのは余談である。