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あ。路地の街灯、また切れかけてる。上を見上げた名前は、かじかむ指先を両の手でこすりながら冷え込んだ夜の中を歩いていた。
「何で、こんなに冷え込むかね……」
日中が暖かかったため、こんなに冷え込むとは思っておらず名前は軽装で出勤してしまっていた。残業をしなければここまで寒い思いをすることはなかっただろうと今更後悔しても、もう遅い。
そのまま歩いて二十分ほど経っただろうか。名前は一つ、不安な点があった。帰りの連絡を恋人のアビスに出来ていないことである。そう、伝言ウサギを遅くなった今日に限って、家に忘れてしまったのだ。心配性のアビスのことだ。家に帰ってから怒られるだろうと思うと名前は憂鬱だった。
そんな憂鬱を抱えながら、あと少しで家に着くという安心感と疲労感を噛みしめていれば、名前は家の前に誰かがいる事に気がついた。
「名前!」
名前の名前を呼んで駆け寄ってきたその人物は、先程名前が頭の中に思い浮かべていた人物だった。
「アビスくん!? どうしてここに」
「だって、連絡が取れないから……! あぁ、良かった。無事で」
安堵したように微笑むアビスの顔を見て、名前は怒られる心配をしていたことに罪悪感を感じた。
「うっ、心配かけてごめんね。昨日、家で使った後にバッグへ入れ忘れてしまって」
「いえ……アナタが入れ忘れないように促さなかった私にも非があります。だって名前が最後に話した相手は私でしょう」
「まぁ、そうだけど。でも」
「こんなに心配させられるのはもうごめんですから」
そう言ってアビスは名前の手を取り、自分の両手でぎゅっと包み込んだ。なのに、自分の手が温かくなることはなく、なぜだか余計に冷たくなって。
「あぁ、こんなに冷えきって……」
「いや、ちょっと待ってこっちのセリフ! アビスくんのがずっと冷たいじゃん!」
もしかして長い間家の前でわたしの帰りを待ってくれていたのだろうか。アビスをよく見ると暖かい服装をしてはいるが、頬や耳は赤く、その手も氷のように冷たかった。
「……あの、アビスくん。つかぬ事をお伺いしますが、いつからここに」
「おそらく……3時間前くらいですかね。恋人の私に連絡の一つも来ませんし、時間も遅いから心配ですし。もしかして何かあったらと思うと夜も眠れないので」
平然と名前に笑顔で言うアビスだったが、名前にはアビスの発言に棘が含まれていることに気付いていた。3時間前からってアトラクションじゃないんだから! なんて、空気の読めないツッコミをする程、空気が読めない名前ではない。驚かないのは、アビスならありえると思っているからである。
「ごめんなさい、そんな前から待たせて。いや、本当に心配かけて……あの」
「フフッ……いえ、連絡する方法はいくらでもあるなんて思っていませんよ。全然? いや全く。迎えに行っても良かったのですが、すれ違ってしまうのも困りますし」
美しいとすら表現できるような艶やかな笑みで、更にチクリと刺され、名前は縮こまり深々と頭を下げることしかできない。でも、それ以上にこの状況に喜びが込み上げてくるのは困ったものだ。
「ちょっと名前、何笑ってるんです」
「え、だって……愛されてるなって思っちゃってさ」
「そんなこと当然でしょう。そもそも、恋愛とは無縁だった私をこんなにしてしまったのは誰のせいですか」
名前はその指摘に首を傾げてみせたが、アビスのじとっとした目線に負けて苦笑いになった。そんな風に拗ねる表情だって可愛いんだもんな、ずるいや。
「うーん、わたしかな」
「責任取ってもらわないと困ります」
「そりゃもちろん、いくらでも。でもまずは……そうね、今日はお互い温まるところから始めませんか」
名前が笑えば、アビスも優しく微笑んで。あぁ、不思議とこの夜が寒く感じなくなってきたのはなぜだろう。
――心配性の彼に風邪をひかせないようにするのが、この冬の目標だなと名前は心の中で反省するのだった。
「何で、こんなに冷え込むかね……」
日中が暖かかったため、こんなに冷え込むとは思っておらず名前は軽装で出勤してしまっていた。残業をしなければここまで寒い思いをすることはなかっただろうと今更後悔しても、もう遅い。
そのまま歩いて二十分ほど経っただろうか。名前は一つ、不安な点があった。帰りの連絡を恋人のアビスに出来ていないことである。そう、伝言ウサギを遅くなった今日に限って、家に忘れてしまったのだ。心配性のアビスのことだ。家に帰ってから怒られるだろうと思うと名前は憂鬱だった。
そんな憂鬱を抱えながら、あと少しで家に着くという安心感と疲労感を噛みしめていれば、名前は家の前に誰かがいる事に気がついた。
「名前!」
名前の名前を呼んで駆け寄ってきたその人物は、先程名前が頭の中に思い浮かべていた人物だった。
「アビスくん!? どうしてここに」
「だって、連絡が取れないから……! あぁ、良かった。無事で」
安堵したように微笑むアビスの顔を見て、名前は怒られる心配をしていたことに罪悪感を感じた。
「うっ、心配かけてごめんね。昨日、家で使った後にバッグへ入れ忘れてしまって」
「いえ……アナタが入れ忘れないように促さなかった私にも非があります。だって名前が最後に話した相手は私でしょう」
「まぁ、そうだけど。でも」
「こんなに心配させられるのはもうごめんですから」
そう言ってアビスは名前の手を取り、自分の両手でぎゅっと包み込んだ。なのに、自分の手が温かくなることはなく、なぜだか余計に冷たくなって。
「あぁ、こんなに冷えきって……」
「いや、ちょっと待ってこっちのセリフ! アビスくんのがずっと冷たいじゃん!」
もしかして長い間家の前でわたしの帰りを待ってくれていたのだろうか。アビスをよく見ると暖かい服装をしてはいるが、頬や耳は赤く、その手も氷のように冷たかった。
「……あの、アビスくん。つかぬ事をお伺いしますが、いつからここに」
「おそらく……3時間前くらいですかね。恋人の私に連絡の一つも来ませんし、時間も遅いから心配ですし。もしかして何かあったらと思うと夜も眠れないので」
平然と名前に笑顔で言うアビスだったが、名前にはアビスの発言に棘が含まれていることに気付いていた。3時間前からってアトラクションじゃないんだから! なんて、空気の読めないツッコミをする程、空気が読めない名前ではない。驚かないのは、アビスならありえると思っているからである。
「ごめんなさい、そんな前から待たせて。いや、本当に心配かけて……あの」
「フフッ……いえ、連絡する方法はいくらでもあるなんて思っていませんよ。全然? いや全く。迎えに行っても良かったのですが、すれ違ってしまうのも困りますし」
美しいとすら表現できるような艶やかな笑みで、更にチクリと刺され、名前は縮こまり深々と頭を下げることしかできない。でも、それ以上にこの状況に喜びが込み上げてくるのは困ったものだ。
「ちょっと名前、何笑ってるんです」
「え、だって……愛されてるなって思っちゃってさ」
「そんなこと当然でしょう。そもそも、恋愛とは無縁だった私をこんなにしてしまったのは誰のせいですか」
名前はその指摘に首を傾げてみせたが、アビスのじとっとした目線に負けて苦笑いになった。そんな風に拗ねる表情だって可愛いんだもんな、ずるいや。
「うーん、わたしかな」
「責任取ってもらわないと困ります」
「そりゃもちろん、いくらでも。でもまずは……そうね、今日はお互い温まるところから始めませんか」
名前が笑えば、アビスも優しく微笑んで。あぁ、不思議とこの夜が寒く感じなくなってきたのはなぜだろう。
――心配性の彼に風邪をひかせないようにするのが、この冬の目標だなと名前は心の中で反省するのだった。