名前は頬を朱に染め、少し緊張していた。
「あの、カルパッチョさん」
「なに」
「非常にね今、恥ずかしいです」
「どうして？」
「注目を集めてるのわかりませんか！」
「気にならない」
　注目になれてるやつはこれだからと名前。校内という公の場で、カルパッチョは全く目線が気にならないという。
「もう！ これですよこれ！」
　今、現在進行形でいわゆるカップルつなぎをしながら、歩いているわけで周囲の注目を集めている原因はそれだった。
「なんか問題？」
「問題というか……」
「この間読んだ本には、手の繋ぎ方が書いてあった。これは恋人同士がする繋ぎ方でしょ。だから間違ってないよね」
「うっ……間違ってはないし、それ自体は問題ないですが。あの、さすがにこんな人目のある校内でやるのがちょっと照れくさいというか」
　照れくさいだけで嫌ではない名前。だが注目を集めるのは嫌なので、ぶんぶん振って手を離そうとするが全く繋いだ手を離そうとしないカルパッチョ。
「あ、アナタも強情ですね！ 」
「いや、別に……んーと」
「なんですか」
「好きだから、触れてたいんだけど、ダメ？」
「！！」
「嫌なら離してって言ってよ」
「その言い方はちょっとズルくないですか……いつもはそんな事言わないくせに」
　軽く繋いだ手にぎゅっと力を込める名前。カルパッチョはこの間読んだ本で学んでいた。「照れる女の子にはこう言え」と。さすれば、想い人は黙って主に従うだろう。なるほど、本に書いてあった通りだ。カルパッチョは無表情ながら満足そうに深く頷いた。