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【おめでとうの気持ちを兄から弟へ(フィン、レイン/二次創作)】
まさか、兄さまから自分の部屋に呼ばれるなんて。エレベーターで11階に上がり、フィンは1106号室の扉の前に立っていた。確か、兄さまはマックスさんと同室だったはず。フィンは自らの緊張をもほぐすように、音のしない静かな廊下で扉をノックした。
――すると、すぐに部屋の住人である兄が顔を覗かせて。
「……フィン、呼び出して悪いな」
「ううん、兄さまから呼んでもらえるなんて嬉しいよ」
そのフィンの返答にレインはうつむきながら軽く咳払いをし、自分の部屋に入るように促した。その様子に何の疑問を抱くこともなく、誘導される形でフィンは部屋の中に入る。どうやら、ルームメイトであるマックスは気を使って外出しているようだった。
「今日、お前を呼んだのは渡したいものがあるからだ」
そう言ったレインの目線の先に置かれていたのは、カラフルな包み紙で梱包された少し大きめのプレゼントらしきものだった。
「えっ、兄さまからプレゼント!?」
あのレインが自分にプレゼントなんて。その衝撃でフィンの視界はグラりと揺れたが、いけないともう片足で自分の体を支える。夢じゃないよなと目をこするが夢ではないらしい。単純に、嬉しい。その気持ちだけが自分の中に溢れてくるのをフィンは感じていた。
「あ、あの兄さま……開けてもいいの?」
「あぁ……」
中には一体何が入っているのだろうか。
緊張しながらレインから受け取ると、そのプレゼントはずっしり重たく、渡された時に揺れたからかガサガサと音がした。ますます予想が出来ないまま、フィンはリボンをほどき、包み紙をはがしていく。
あれ、これは――。
「ウサギの、餌……?」
「あぁ」
ウサギが嬉しそうな顔でニンジンをかじっている姿がプリントされたそれはまさしくウサギの餌だった。
「ん……と、一応確認だけど、ウサギの誕生日じゃなくて、僕の誕生日だよね?」
レインは何を当たり前なことを……とでも言いたげな表情で自分の弟を見た。
「そうだが?それにウサギたちの誕生日はまだ先だ」
「あ、やっぱりそうだよね」
今、フィンがレインに確認できたのはこれが間違いではないことだけである。そもそも、自らの9羽の愛兎に愛情を注ぐレインなら、ウサギの誕生日を把握するくらいわけないだろう。
「最高級品だ。これがあればウサギたちともすぐ仲良くなれる」
「そ、そうなんだね」
……に、しても「目からウロコが出る」って冗談を信じちゃったこともあるくらいだし、兄様ってやっぱりちょっとずれてるよな。
だが、自分にとってのウサギが最優先事項であるように、レインにとっては愛するウサギたちと仲良くなれるという配慮は何よりのプレゼントなのだろう。物とは価値ではない、気持ちなのだ。
その背景を考えれば、何よりも嬉しいプレゼントと言える。
「あと……これを買う気はなかったんだが」
「なに?」
お礼を言おうとしたフィンの口が疑問を投げかけたのは、レインのその手にもう一つラッピングされた何かが乗っていたからだ。こちらもウサギの餌ほどではないが大きめである。
「同室のマックスに、弟へウサギの餌をプレゼントしようと思っていると話したらなぜか必死に止められたんでな……」
「えっ……」
なんて常識人なんだマックスさん。
マックスは学内での人望が厚いのはもちろんのこと、フィンに対しても気さくに話しかけてくれ、尊敬できる先輩の一人だった。ちなみにマックスは陰ながらレインの軌道修正をしてきた立役者でもあるらしい。いつも兄がお世話になってます。
「これも開けていいの?」
レインに許可を得て中を見れば、それはフィンが今一番欲しかったと言っても過言ではないものが入っていて。
「わ、DIY道具!?しかもこれ職人さんがひとつひとつ手作りしてるやつじゃん!えっ……名前まで彫られてるし……。待って、すっごく高かったでしょ」
レインの前で目をキラキラさせながら喜ぶフィンに、いつも険しい顔をしているレインの表情は少し柔らかくなった。それはきっとひとりの兄として、心を踊らせる嬉しそうな弟を見ることができたからだろう。
フィンの前では、皆を導く神覚者ではなく、あのレインでさえ、一人の兄の表情に戻るのだ。
「マックスが、個人でよく使うもの。かつ、自分でなかなか手が出せないようなものにしろと言うんでな……気に入ったか」
「気に入るどころじゃないよ!すっごく嬉しいよ!」
そのフィンのはしゃぎっぷりを見てマックスに意見を聞いて良かったとレインは思い、いつも自分を導いてくれる親友に心の中でお礼を言った。
「でも、兄さま」
「ん?」
「僕は兄さまがくれたこのウサギの餌も嬉しい」
そう言って、フィンはウサギの餌をカサカサと振って笑った。
「だって兄さまの溺愛しているウサギたちと早く仲良くなりたいし……!それにね最近、僕ちゃんと見分けられるようになってきたんだから。この子はウサノシン……」
「それはうさ吉だ」
「あれ?じゃ、あの子がウサノシン……」
「違う、あれはウサ山」
「……うっ、兄さまごめん!」
名前をなかなか当てられないフィンにレインは何も言わず、自らに寄ってきたウサギをそっと抱いて頭を撫でた。
一方のフィンは自分のポケットから折りたたまれた紙を取り出し、それを見てブツブツと何かを唱え始めた。それもウンウンと唸りながらである。
――その様子を疑問に思ったレインは紙に書いてある内容をフィンに問うた。
「なんだそれは」
「……えっとね、兄さまのウサギの一覧表。名前とそれぞれの特徴を書いた表なんだけど、まだ紙なしじゃ当てるのは難しいみたいだ。ごめんね」
「フン……別に構わない。少しづつ覚えられるように、何度でもこの部屋に来るといい」
「えっ、いいの」
素直に会いに来いと言えないレインにとってはその言葉が最大の譲歩であり、最高の愛情表現であった。
「あと言い忘れていたが……誕生日、おめでとう」
「フフッ、兄さまってば……それは普通最初に言うよ?でも今年は……今までで最高の誕生日だ。本当にありがとう兄さま」
それはまるで相手への愛情がこんこんと溢れ出るような温かい笑みだった。大事そうにプレゼントを抱え直したフィンに、レインはこの日を一緒に祝えたことに深く感謝した。
「フィン……」
「何度でも言うけど、僕は兄さまがいるだけでずっと幸せだったよ。今まで、長い間見守っていてくれてありがとう。大好きだよ」
危害が及ばないように距離をとってきた大事な弟から言われるその一言はレインの心に喜びと愛しさをもたらし、じわりとじわりと沁みていく。
またひとつ大人になったこの世にたった二人の兄弟。歳を重ねてもいつまでも可愛く思うのは、兄だからだろうか。レインの眉間のシワはいつのまにかとれ、いつもは見せないような優しい眼差しでフィンをずっと見つめるのだった。
まさか、兄さまから自分の部屋に呼ばれるなんて。エレベーターで11階に上がり、フィンは1106号室の扉の前に立っていた。確か、兄さまはマックスさんと同室だったはず。フィンは自らの緊張をもほぐすように、音のしない静かな廊下で扉をノックした。
――すると、すぐに部屋の住人である兄が顔を覗かせて。
「……フィン、呼び出して悪いな」
「ううん、兄さまから呼んでもらえるなんて嬉しいよ」
そのフィンの返答にレインはうつむきながら軽く咳払いをし、自分の部屋に入るように促した。その様子に何の疑問を抱くこともなく、誘導される形でフィンは部屋の中に入る。どうやら、ルームメイトであるマックスは気を使って外出しているようだった。
「今日、お前を呼んだのは渡したいものがあるからだ」
そう言ったレインの目線の先に置かれていたのは、カラフルな包み紙で梱包された少し大きめのプレゼントらしきものだった。
「えっ、兄さまからプレゼント!?」
あのレインが自分にプレゼントなんて。その衝撃でフィンの視界はグラりと揺れたが、いけないともう片足で自分の体を支える。夢じゃないよなと目をこするが夢ではないらしい。単純に、嬉しい。その気持ちだけが自分の中に溢れてくるのをフィンは感じていた。
「あ、あの兄さま……開けてもいいの?」
「あぁ……」
中には一体何が入っているのだろうか。
緊張しながらレインから受け取ると、そのプレゼントはずっしり重たく、渡された時に揺れたからかガサガサと音がした。ますます予想が出来ないまま、フィンはリボンをほどき、包み紙をはがしていく。
あれ、これは――。
「ウサギの、餌……?」
「あぁ」
ウサギが嬉しそうな顔でニンジンをかじっている姿がプリントされたそれはまさしくウサギの餌だった。
「ん……と、一応確認だけど、ウサギの誕生日じゃなくて、僕の誕生日だよね?」
レインは何を当たり前なことを……とでも言いたげな表情で自分の弟を見た。
「そうだが?それにウサギたちの誕生日はまだ先だ」
「あ、やっぱりそうだよね」
今、フィンがレインに確認できたのはこれが間違いではないことだけである。そもそも、自らの9羽の愛兎に愛情を注ぐレインなら、ウサギの誕生日を把握するくらいわけないだろう。
「最高級品だ。これがあればウサギたちともすぐ仲良くなれる」
「そ、そうなんだね」
……に、しても「目からウロコが出る」って冗談を信じちゃったこともあるくらいだし、兄様ってやっぱりちょっとずれてるよな。
だが、自分にとってのウサギが最優先事項であるように、レインにとっては愛するウサギたちと仲良くなれるという配慮は何よりのプレゼントなのだろう。物とは価値ではない、気持ちなのだ。
その背景を考えれば、何よりも嬉しいプレゼントと言える。
「あと……これを買う気はなかったんだが」
「なに?」
お礼を言おうとしたフィンの口が疑問を投げかけたのは、レインのその手にもう一つラッピングされた何かが乗っていたからだ。こちらもウサギの餌ほどではないが大きめである。
「同室のマックスに、弟へウサギの餌をプレゼントしようと思っていると話したらなぜか必死に止められたんでな……」
「えっ……」
なんて常識人なんだマックスさん。
マックスは学内での人望が厚いのはもちろんのこと、フィンに対しても気さくに話しかけてくれ、尊敬できる先輩の一人だった。ちなみにマックスは陰ながらレインの軌道修正をしてきた立役者でもあるらしい。いつも兄がお世話になってます。
「これも開けていいの?」
レインに許可を得て中を見れば、それはフィンが今一番欲しかったと言っても過言ではないものが入っていて。
「わ、DIY道具!?しかもこれ職人さんがひとつひとつ手作りしてるやつじゃん!えっ……名前まで彫られてるし……。待って、すっごく高かったでしょ」
レインの前で目をキラキラさせながら喜ぶフィンに、いつも険しい顔をしているレインの表情は少し柔らかくなった。それはきっとひとりの兄として、心を踊らせる嬉しそうな弟を見ることができたからだろう。
フィンの前では、皆を導く神覚者ではなく、あのレインでさえ、一人の兄の表情に戻るのだ。
「マックスが、個人でよく使うもの。かつ、自分でなかなか手が出せないようなものにしろと言うんでな……気に入ったか」
「気に入るどころじゃないよ!すっごく嬉しいよ!」
そのフィンのはしゃぎっぷりを見てマックスに意見を聞いて良かったとレインは思い、いつも自分を導いてくれる親友に心の中でお礼を言った。
「でも、兄さま」
「ん?」
「僕は兄さまがくれたこのウサギの餌も嬉しい」
そう言って、フィンはウサギの餌をカサカサと振って笑った。
「だって兄さまの溺愛しているウサギたちと早く仲良くなりたいし……!それにね最近、僕ちゃんと見分けられるようになってきたんだから。この子はウサノシン……」
「それはうさ吉だ」
「あれ?じゃ、あの子がウサノシン……」
「違う、あれはウサ山」
「……うっ、兄さまごめん!」
名前をなかなか当てられないフィンにレインは何も言わず、自らに寄ってきたウサギをそっと抱いて頭を撫でた。
一方のフィンは自分のポケットから折りたたまれた紙を取り出し、それを見てブツブツと何かを唱え始めた。それもウンウンと唸りながらである。
――その様子を疑問に思ったレインは紙に書いてある内容をフィンに問うた。
「なんだそれは」
「……えっとね、兄さまのウサギの一覧表。名前とそれぞれの特徴を書いた表なんだけど、まだ紙なしじゃ当てるのは難しいみたいだ。ごめんね」
「フン……別に構わない。少しづつ覚えられるように、何度でもこの部屋に来るといい」
「えっ、いいの」
素直に会いに来いと言えないレインにとってはその言葉が最大の譲歩であり、最高の愛情表現であった。
「あと言い忘れていたが……誕生日、おめでとう」
「フフッ、兄さまってば……それは普通最初に言うよ?でも今年は……今までで最高の誕生日だ。本当にありがとう兄さま」
それはまるで相手への愛情がこんこんと溢れ出るような温かい笑みだった。大事そうにプレゼントを抱え直したフィンに、レインはこの日を一緒に祝えたことに深く感謝した。
「フィン……」
「何度でも言うけど、僕は兄さまがいるだけでずっと幸せだったよ。今まで、長い間見守っていてくれてありがとう。大好きだよ」
危害が及ばないように距離をとってきた大事な弟から言われるその一言はレインの心に喜びと愛しさをもたらし、じわりとじわりと沁みていく。
またひとつ大人になったこの世にたった二人の兄弟。歳を重ねてもいつまでも可愛く思うのは、兄だからだろうか。レインの眉間のシワはいつのまにかとれ、いつもは見せないような優しい眼差しでフィンをずっと見つめるのだった。