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探査生命体は愚者の夢を見るか?

 ジャックが拠点の中を色々案内してくれた。
何故自分にここまで好意を見せてくれるのが分からなかったが、アストスは悪い気はしなかったので彼と共に色んな場所を見て回った。
 最後に彼の部屋にも案内された。
生活するのに必要最低限のものしか置いてない空間の中、1箇所だけ目につくものがあった。
「これはなんですか?……ぐしゃ…愚者の、手記…?」
「それは俺たちにとってかけがえのないものだ。それのおかげで今、ここまで俺たちは辿り着けた。」
 読んでみるとコーネリアの土地のことや、ジャック達ストレンジャーのこと、カオスのこと等などが書かれていた。
「なるほど…。あらゆる知識が書かれていますね。しかし、これを書いた人は愚かですね。」
「どうしてそう思う?」
「だって、貴方たちは皆優秀です。こんなものを残さずとも貴方達ならどんな困難だって乗り越えられるはずですから」
「買い被りすぎだ…。俺たち渡鳥には導き手が必要だった。これを書いた奴のおかげで俺たちはルフェイン共からこの世界を救えた。」
 ジャックが愛おしそうに手記達を眺める。普段冷静なこの男の口からここまで賛辞を出せるとは…廃棄された生命体は手記の作者に感心と、ほんの少し嫉妬心を感じてしまった。
「この手記を書いた人は、とてもジャック様に気に入られているのですね」
嫉妬心なんて自分らしくない、そう思いつつもついつい口走ってしまった。
「ああ、そうだな。俺はそいつのことを気に入ってる、いつかまた会えると信じてる。」
 それが誰なのか、真実を言うのはもう少し先でいい。
「そろそろ戻るか、アッシュ達が待ってる。」
仲間たちの元へ向かうため、2人は仲間達の元へ向かおうと行動を移す。
「今度は俺がお前の導き手になる番だ。」
 部屋を出かけた彼の背中へ向かって小さく呟く。
「…?何か言いましたか、ジャック?」
「いいや、何も言ってない。行くぞ、仲間達が黒水晶の間でまってるかもしれん」

 俺はもう忘れない、俺はもう悲しませない、俺はもう離さない。ジャックはそう心に誓ってアストスと共に部屋を出た。
 導き手に寄って旅立った渡鳥は、執着という名の愛を覚えて愚者の元へ戻ってきたようだ。
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