また一つ積み上げた思い出
世間がミクの誕生日だと騒ぎ始めたころ、オレはミクのことを思い出した
「そういえば、ミクの誕生日だったな…」
セカイに居るオレたちだけのミク
誕生日に何かしてやれることを考えても、ミクが喜ぶものは分からない
「とりあえず、セカイに行くだけ行くか」
セカイに行けば、ミクは居るだろう
そう思いオレは曲を再生した
セカイに行くと、予想通りミクはいた
「彰人?どうしたの、1人で来るなんて何か用事?」
「あー、いや。ミクに用があってな」
「私に?何かな?」
「…ミク、誕生日おめでとう」
「…え?あ、そっか。今日って私の誕生日だったんだ…すっかり忘れてたよ…」
「ミクらしいな。ま、誕生日おめでとう」
「ふふっ、ありがとう彰人」
「…プレゼントとかなんも用意来てねぇからとりあえず、何かしてやれることないかって来たんだが…」
「大丈夫だよ。その気持ちだけで嬉しい」
「そうは言っても、他に何かねぇか?」
「…それなら1つお願いしてもいい?」
「なんだ?」
「彰人の歌が聞きたいな」
「オレの歌?それだけでいいのか?」
「うん。彰人の歌が聴きたいんだ」
「分かった。それじゃあ、リクエストとかあるか?」
「彰人の好きな曲でいいよ」
「オレの好きな曲か…それなら…」
それから、オレはミクにオレの好きな曲を歌った
どの曲を歌ってもミクは嬉しそうに聴いてくれた
よく考えればミクに歌をちゃんと聞かせたのは初めてかもしれない
いつもは練習を見てもらったりしてるだけで、実際にちゃんと聞かせたことはなかった
だからかミクはいつもより嬉しそうに聴いていた
「どうだった?」
「うん、凄く良かったよ」
「それは良かった」
「やっぱり、彰人の歌声って素敵だね」
「そうか?」
「うん。私は好きだよ」
「ありがとな」
「ううん。こちらこそ、素敵な歌をありがとう」
「おう、でも本当にこれだけでいいのか?時間は作ってきたし多少長居しても今日は大丈夫だぞ?」
「本当にこれだけでいいよ。彰人の歌を聴けただけで嬉しいから」
「…お前、誕生日ぐらいもっとわがまま言ってもいいんだからな?」
「大丈夫。もう十分、わがままを言ってるから」
「そうは思えないけどな」
「私はいつも、彰人に甘えっぱなしだよ」
「…そうか?」
「うん。だって、私はこのセカイから出ることができないのに、それでも受け入れてくれたし、こうやって会いにも来てくれて…正直、申し訳なさもあるんだよ?だから、あんまりわがまま言えなくて…」
「そんなの気にしなくていい。オレがしたくてしてるだけだ」
「…ありがとう、彰人」
その笑顔の裏に、不安があることも理解してる
こいつが抱える不安を取り除いてやることはできない
そんな力なんてオレにはない
それが酷く悔しい
だから少しでも、こいつが嬉しそうな顔を見せてくれるならオレは望んでこいつの側に居よう
それがオレのできる唯一のことだから
「ねぇ、彰人」
「なんだ?」
「彰人は、私と一緒に居て楽しい?」
「なんだよ急に」
「いいから、答えてよ」
「…まあ、楽しくないって言ったら嘘になるな。ミクといるのは楽しいからな。でも、それがなんだ?」
「そっか…なら良かった」
「良かったって…何がだよ」
「ううん、なんでもない」
「そうか?」
ミクは嬉しそうにしている
なんでだ?オレなんか変なこと言ったか? まあ、ミクが嬉しそうだからいいか…
「彰人の歌を聞くのは好きなんだ」
「え?」
唐突な、ミクの話にオレの思考が止まる
でもそれは些細なことなのか気にせずミクは会話を続ける
「彰人の歌は心から楽しんで歌っていることが分かる。声も1音ずつはっきりと鳴ってる。そんな彰人の歌が好きだしもっと聞きたいと思えるんだ」
「…どうしたんだ、急に」
「なんとなく、彰人に伝えたくなったんだ。彰人の歌が大好きだって」
「そ、そうかよ…」
「うん。だから、私は彰人の歌をもっと聞きたいんだ」
「それは…オレだって同じだ。オレは今までお前の歌を聞いたことがなくて、ここでお前と出会って初めてお前の歌を聴いて…すげぇなって思ったんだ。お前の歌は確かに大勢の人を魅了する力がある。だからこそ、お前のように大勢の人を惹きつける歌を歌いたい。そう思えたんだ」
「そっか…それは、嬉しいな」
「だから、ミクが歌を聞いてくれるならオレはもっと頑張れる気がするんだ」
「…ありがとう、彰人。でも私は…私は彰人の相棒でもないし、あの子達みたいに彰人の側にずっと居てあげることもできない。だから…」
「ミク」
オレはミクの言葉を遮り名前を呼ぶ
「確かにオレたちに明確な繋がりはないかもしれない。それでも、オレにとってお前はもう大切な仲間だ。それは変わらないし変える気もない」
「彰人…」
「それに、オレはお前の事を信頼してるしお前もオレのことを信頼してくれてるとも思ってる。だからこれからも一緒に歌っていきたい」
「私で…いいの?」
「当たり前だろ。オレはお前に信頼を置いてるんだ。それ以上にオレが好きになったのがミク、お前なんだよ」
「…ありが、とう」
「…なんで、泣くんだよ」
「泣いてな…え?わ、私泣いてるの…?」
ミクは目元に手を当てて自分が泣いていることに驚いていた
「あ、あれ?なんで…私…」
「…ったく、ほら」
オレはミクを優しく抱き寄せた
「え、彰人…?」
「泣きたいなら泣けよ。オレしか見てない」
「でも…私…そんなつもりじゃ…」
「いいから、泣けよ。その方が楽になるかもしれねぇぞ」
「う…うん…」
オレはまだガキだから、気の利いた言葉もかけてやれないし、慰め方も分からない
でも、側にいることならオレにだってできる
だから今はこうして少しでもミクの気持ちが楽になればいいと願いながら抱き寄せた
すると背中に手を回され、ぎゅっと抱き返された
それが嬉しくて、オレもミクの体を抱きしめる
「彰人…私…」
「ん?」
「…ううん、なんでもない」
「そうか?まあ、言いたくなったらいつでも言えよ」
「…うん」
それからしばらく、オレはミクを抱きしめていた
そして少しして落ち着いたのか、ゆっくりとミクは離れた
「落ち着いたか?」
「うん…ありがとう、彰人」
「気にすんな。それより、大丈夫か?まだ辛いならもう少し抱きしめててもいいぞ?」
「…ううん、大丈夫。もう大丈夫だよ」
そう言ってミクは笑顔を見せた
その笑顔に嘘はないように見えた
「なら、良かった」
「うん。ありがとう彰人」
「…なあ、ミク」
「何?」
「来年の誕生日もさ、こうやって一緒に過ごさないか?」
「…いいの?私は…」
「いいんだよ。それに、オレはお前と一緒にいたいんだ」
「そっか…じゃあ、来年も一緒に居てくれる?」
「もちろんだ。約束な」
そう言ってオレは小指を出す
するとミクも小指を絡めた
そして指切りをする
「うん、約束だよ」
そう言ってミクは嬉しそうに笑った
その笑顔を見て、オレは来年も絶対にこいつの誕生日を祝ってやろうと心に誓った
「改めて、誕生日おめでとうミク」
「うん、ありがとう彰人」
オレは改めてミクにお祝いの言葉を伝えた
すると、また嬉しそうに笑った
そんな笑顔を見れただけで十分だった
それからしばらく他愛もない話をして過ごした
ただ歌って、話して、それだけでも十分満たされた時間だった
しかしオレが満たされてどうすると、自分で自分をつっこんでしまい思わず笑ってしまった
「どうして急に笑ったの?」
「いや、別に何でもねぇよ」
そんな会話を続ける
これが幸せかってなんとなく分かった気がした
ミクもそう思ってくれているだろうか?
「…彰人」
「なんだ?」
「今日は本当にありがとう。すごく嬉しかったし、楽しかった」
「そうか。なら、良かったよ」
「うん、本当にありがとう。それと…これからもよろしくね」
「おう、任せとけ」
「うん、ありがとう」
そんな会話を交わしてオレとミクは笑い合う
そして、オレはミクに手を差し伸べる
ミクはその手を見て、少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔になりオレの手を取り握り返してくれる
その繋いだ手の温もりを感じながら、オレは改めてミクに出会えたことを嬉しく思った
そして、これからもこいつと…ミクと一緒にいられることを嬉しく思う
「これからもよろしくな、ミク」
「こちらこそよろしくね、彰人」
そう言ってオレとミクは笑い合う
きっとこれからも、こうして2人で笑い合える日々が続くことを願って…
ミク、誕生日おめでとう
これからも、ずっと…オレの支えでいてくれ
「そういえば、ミクの誕生日だったな…」
セカイに居るオレたちだけのミク
誕生日に何かしてやれることを考えても、ミクが喜ぶものは分からない
「とりあえず、セカイに行くだけ行くか」
セカイに行けば、ミクは居るだろう
そう思いオレは曲を再生した
セカイに行くと、予想通りミクはいた
「彰人?どうしたの、1人で来るなんて何か用事?」
「あー、いや。ミクに用があってな」
「私に?何かな?」
「…ミク、誕生日おめでとう」
「…え?あ、そっか。今日って私の誕生日だったんだ…すっかり忘れてたよ…」
「ミクらしいな。ま、誕生日おめでとう」
「ふふっ、ありがとう彰人」
「…プレゼントとかなんも用意来てねぇからとりあえず、何かしてやれることないかって来たんだが…」
「大丈夫だよ。その気持ちだけで嬉しい」
「そうは言っても、他に何かねぇか?」
「…それなら1つお願いしてもいい?」
「なんだ?」
「彰人の歌が聞きたいな」
「オレの歌?それだけでいいのか?」
「うん。彰人の歌が聴きたいんだ」
「分かった。それじゃあ、リクエストとかあるか?」
「彰人の好きな曲でいいよ」
「オレの好きな曲か…それなら…」
それから、オレはミクにオレの好きな曲を歌った
どの曲を歌ってもミクは嬉しそうに聴いてくれた
よく考えればミクに歌をちゃんと聞かせたのは初めてかもしれない
いつもは練習を見てもらったりしてるだけで、実際にちゃんと聞かせたことはなかった
だからかミクはいつもより嬉しそうに聴いていた
「どうだった?」
「うん、凄く良かったよ」
「それは良かった」
「やっぱり、彰人の歌声って素敵だね」
「そうか?」
「うん。私は好きだよ」
「ありがとな」
「ううん。こちらこそ、素敵な歌をありがとう」
「おう、でも本当にこれだけでいいのか?時間は作ってきたし多少長居しても今日は大丈夫だぞ?」
「本当にこれだけでいいよ。彰人の歌を聴けただけで嬉しいから」
「…お前、誕生日ぐらいもっとわがまま言ってもいいんだからな?」
「大丈夫。もう十分、わがままを言ってるから」
「そうは思えないけどな」
「私はいつも、彰人に甘えっぱなしだよ」
「…そうか?」
「うん。だって、私はこのセカイから出ることができないのに、それでも受け入れてくれたし、こうやって会いにも来てくれて…正直、申し訳なさもあるんだよ?だから、あんまりわがまま言えなくて…」
「そんなの気にしなくていい。オレがしたくてしてるだけだ」
「…ありがとう、彰人」
その笑顔の裏に、不安があることも理解してる
こいつが抱える不安を取り除いてやることはできない
そんな力なんてオレにはない
それが酷く悔しい
だから少しでも、こいつが嬉しそうな顔を見せてくれるならオレは望んでこいつの側に居よう
それがオレのできる唯一のことだから
「ねぇ、彰人」
「なんだ?」
「彰人は、私と一緒に居て楽しい?」
「なんだよ急に」
「いいから、答えてよ」
「…まあ、楽しくないって言ったら嘘になるな。ミクといるのは楽しいからな。でも、それがなんだ?」
「そっか…なら良かった」
「良かったって…何がだよ」
「ううん、なんでもない」
「そうか?」
ミクは嬉しそうにしている
なんでだ?オレなんか変なこと言ったか? まあ、ミクが嬉しそうだからいいか…
「彰人の歌を聞くのは好きなんだ」
「え?」
唐突な、ミクの話にオレの思考が止まる
でもそれは些細なことなのか気にせずミクは会話を続ける
「彰人の歌は心から楽しんで歌っていることが分かる。声も1音ずつはっきりと鳴ってる。そんな彰人の歌が好きだしもっと聞きたいと思えるんだ」
「…どうしたんだ、急に」
「なんとなく、彰人に伝えたくなったんだ。彰人の歌が大好きだって」
「そ、そうかよ…」
「うん。だから、私は彰人の歌をもっと聞きたいんだ」
「それは…オレだって同じだ。オレは今までお前の歌を聞いたことがなくて、ここでお前と出会って初めてお前の歌を聴いて…すげぇなって思ったんだ。お前の歌は確かに大勢の人を魅了する力がある。だからこそ、お前のように大勢の人を惹きつける歌を歌いたい。そう思えたんだ」
「そっか…それは、嬉しいな」
「だから、ミクが歌を聞いてくれるならオレはもっと頑張れる気がするんだ」
「…ありがとう、彰人。でも私は…私は彰人の相棒でもないし、あの子達みたいに彰人の側にずっと居てあげることもできない。だから…」
「ミク」
オレはミクの言葉を遮り名前を呼ぶ
「確かにオレたちに明確な繋がりはないかもしれない。それでも、オレにとってお前はもう大切な仲間だ。それは変わらないし変える気もない」
「彰人…」
「それに、オレはお前の事を信頼してるしお前もオレのことを信頼してくれてるとも思ってる。だからこれからも一緒に歌っていきたい」
「私で…いいの?」
「当たり前だろ。オレはお前に信頼を置いてるんだ。それ以上にオレが好きになったのがミク、お前なんだよ」
「…ありが、とう」
「…なんで、泣くんだよ」
「泣いてな…え?わ、私泣いてるの…?」
ミクは目元に手を当てて自分が泣いていることに驚いていた
「あ、あれ?なんで…私…」
「…ったく、ほら」
オレはミクを優しく抱き寄せた
「え、彰人…?」
「泣きたいなら泣けよ。オレしか見てない」
「でも…私…そんなつもりじゃ…」
「いいから、泣けよ。その方が楽になるかもしれねぇぞ」
「う…うん…」
オレはまだガキだから、気の利いた言葉もかけてやれないし、慰め方も分からない
でも、側にいることならオレにだってできる
だから今はこうして少しでもミクの気持ちが楽になればいいと願いながら抱き寄せた
すると背中に手を回され、ぎゅっと抱き返された
それが嬉しくて、オレもミクの体を抱きしめる
「彰人…私…」
「ん?」
「…ううん、なんでもない」
「そうか?まあ、言いたくなったらいつでも言えよ」
「…うん」
それからしばらく、オレはミクを抱きしめていた
そして少しして落ち着いたのか、ゆっくりとミクは離れた
「落ち着いたか?」
「うん…ありがとう、彰人」
「気にすんな。それより、大丈夫か?まだ辛いならもう少し抱きしめててもいいぞ?」
「…ううん、大丈夫。もう大丈夫だよ」
そう言ってミクは笑顔を見せた
その笑顔に嘘はないように見えた
「なら、良かった」
「うん。ありがとう彰人」
「…なあ、ミク」
「何?」
「来年の誕生日もさ、こうやって一緒に過ごさないか?」
「…いいの?私は…」
「いいんだよ。それに、オレはお前と一緒にいたいんだ」
「そっか…じゃあ、来年も一緒に居てくれる?」
「もちろんだ。約束な」
そう言ってオレは小指を出す
するとミクも小指を絡めた
そして指切りをする
「うん、約束だよ」
そう言ってミクは嬉しそうに笑った
その笑顔を見て、オレは来年も絶対にこいつの誕生日を祝ってやろうと心に誓った
「改めて、誕生日おめでとうミク」
「うん、ありがとう彰人」
オレは改めてミクにお祝いの言葉を伝えた
すると、また嬉しそうに笑った
そんな笑顔を見れただけで十分だった
それからしばらく他愛もない話をして過ごした
ただ歌って、話して、それだけでも十分満たされた時間だった
しかしオレが満たされてどうすると、自分で自分をつっこんでしまい思わず笑ってしまった
「どうして急に笑ったの?」
「いや、別に何でもねぇよ」
そんな会話を続ける
これが幸せかってなんとなく分かった気がした
ミクもそう思ってくれているだろうか?
「…彰人」
「なんだ?」
「今日は本当にありがとう。すごく嬉しかったし、楽しかった」
「そうか。なら、良かったよ」
「うん、本当にありがとう。それと…これからもよろしくね」
「おう、任せとけ」
「うん、ありがとう」
そんな会話を交わしてオレとミクは笑い合う
そして、オレはミクに手を差し伸べる
ミクはその手を見て、少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔になりオレの手を取り握り返してくれる
その繋いだ手の温もりを感じながら、オレは改めてミクに出会えたことを嬉しく思った
そして、これからもこいつと…ミクと一緒にいられることを嬉しく思う
「これからもよろしくな、ミク」
「こちらこそよろしくね、彰人」
そう言ってオレとミクは笑い合う
きっとこれからも、こうして2人で笑い合える日々が続くことを願って…
ミク、誕生日おめでとう
これからも、ずっと…オレの支えでいてくれ
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