笑顔と感情の裏側

自分の喘ぎ声が恥ずかしくて頑なに声を我慢するミク
それがオレは面白くなくては執拗に奥を責めたてる

「おい、ミク、声我慢するな」
「やあ…っ…、彰人にこんな声聞かせたくない…からっ」
「いいから聞かせろよ。ミクの声聞きたい」

そんな恥ずかしいことできないと、ミクは首をぶんぶんと横に振る

「じゃあ、オレにも考えがある」

そんなミクにオレは意地の悪い笑みを浮かべると、ミクの腕を掴んで引っ張り、腰を突き上げる

「やあああっ!奥、だめぇっ」

突然の強い刺激にミクは背中をしならせると悲鳴のような嬌声を上げる

「やあっ、あ、ああんっ」

オレのモノがミクの奥を何度も強く突き上げる
その度にミクは身体を跳ねさせ甘い声を上げる
その声と表情はとてもいやらしくて、もっと鳴かせたいという欲望がふつふつと湧き上がってくる

「ミク…っ、もっと声聞かせろ」

グリグリと奥に押し付けながら、オレはミクの胸を愛撫する

「やあっ…胸やだぁっ」

ミクが泣きながら訴える
そんな切なげで甘い嫌がる声にそそられていることをミクは知らないだろう
もっとよがらせてやりたくなるのは男の本能だ
オレの欲望はもう止められなかった

「ほら、もっと気持ちよくなろうな」

下腹部に手を伸ばし、ぷっくりと膨らんだ秘芽を指で摘まんだ
その瞬間、ミクの腰がビクッと大きく震えた

「っ…!?あ…ああっ、やぁん!それ、だめぇ!」

敏感な部分を指で愛撫され、ミクは激しく身を捩らせた
強い快楽から逃れようと暴れるが、当然逃れられる訳はなく、オレは指の動きをさらに早めた

「やんっ、やだぁっ…ああぁっ!」

秘芽を擦りながら奥を突き上げると、ミクが喉を仰け反らせて身体をしならせた

「やだっ…何か変なのきちゃうっ」
「イきそうなんだろ?我慢せずにイケよ」

オレはミクの腰を掴み、さらに強く腰を打ち付けた

「やあっ!ああぁっ…だめぇっ!」

その瞬間、ミクが身体を大きくしならせたかと思うとビクビクッと痙攣した

「〜〜〜っ!!」

声にならない悲鳴を上げ、ミクが達したのだと分かったオレのモノを痛いぐらいに締め付ける膣内にオレも限界を迎え、オレはミクの中に欲望を吐き出していた
その熱を感じてか、ミクはまた小さく身体を震わせた

「あ…っ、ん」

ずるりとオレのモノを引き抜くとミクの中から白濁液がトロリと流れ出した

「はぁ…っ、はあ…」

ミクは大きく肩で息をしながらぐったりとベッドに身体を預けた

「ミク…」

オレはまだ息が整わない様子のミクの上に覆い被さると、頬に手を添えて口付けた
唇を割り開き舌を滑り込ませれば、ミクはそれに応えるようにオレの首に腕を回してきた
そのまま何度も角度を変えながら深く口付ける

「ん…彰人…」

唇を離すと、ミクは潤んだ瞳でオレを見つめた
その顔を見てまた下半身が熱を持とうとするのけを感じ、オレは慌ててミクから離れた
これ以上は駄目だ…ミクに無理をさせたくない

「ミク、大丈夫か?」

なんとか気を紛らわそうと話しかけるが、ミクは返事もすることなくオレの身体に抱きついてきた

「彰人…」

甘えるような声でミクがオレを呼び、脚を絡ませてきた
心臓の鼓動がバクバクと音を立てているのが自分でも分かる

「もう無理だろ?」

なんて言葉は無意味なことは分かっている
そんなことはとうの昔に理解していたし、ミクをこんな風にしたのは自分だ
けど、これ以上は駄目だと脳が警鐘を鳴らす

「無理だって…」

オレはミクを引き離そうと肩を掴むが、その行動すら許さないと言わんばかりに抱きついてくるから厄介なことこの上ない

「彰人…お願い」

ミクは消え入りそうな声でそう言った
もうこのまま流されるしかないのかと、オレはミクをベッドに押し倒す

「後悔しても知らねぇからな」

そう言って、もう一度深く口付けた

「ん…っ」

舌を入れれば、ミクもそれに応えるように舌を絡めてきたお互いの唾液を交換しながら、何度も角度を変えて深い口付けを繰り返す

「ミク、舌出せ」

言われた通りに素直に出されたミクの舌を甘噛みし、吸い上げる
それを繰り返す内にだんだんと頭がボーッとしてくるのを感じた
それはミクも同じなのか先程からオレの服をギュッと握り、身体を震わせている

「ふあっ…」

口を離せばお互いの舌から銀色の糸が伸び、プツンと切れた

「ミク…」

オレは再びミクに覆い被さると耳元で名前を呼んだ
そしてそのまま耳朶を甘噛みする
するとそれだけでピクリと肩を揺らす姿が可愛らしいと思った

「あ…」

首筋に舌を這わせれば、甘い声が漏れた
そのまま首筋から鎖骨までキスを落としていく

「んっ」

ミクはギュッとオレの服を掴むと、小さく声を漏らした
そんな仕草にドキッとしている自分がいて思わず苦笑するしかなかった
そりゃ普段のミクはかっこいいっていう言葉が似合うぐらいにクールで大人びているけど、こういう時のミクはオレにだけ見せてくれる可愛い女の子になるんだから堪らない
それにいつもとは違う声や表情を見せられると自然と胸が高鳴るのを感じた

「彰人…もっと…」

ミクがオレの首の後ろに腕を回し、引き寄せると耳元で囁いた
その行動に思わず理性が飛びそうになったのを必死に抑え込む

「あんまり煽るなよ」

そんな余裕のないところを見せたくないから、オレは平静を装ってそう言ったけどきっとバレているんだろうと思う

「ふふ…彰人可愛い」

そう言いながらオレの頭を撫でてきたミクにムッと来たので、仕返しと言わんばかりにミクの首筋に噛み付いた

「ひゃあっ!?」

突然の行動に驚いたのか、甲高い声を上げると慌てて口を手で押さえたのが見えた
そんな様子に思わず笑みが浮かぶが、すぐに表情を引き締める

「…ん、ふ…ぅ」

そのまま下に降りていき、鎖骨辺りまで行くと強く吸い上げた
それを繰り返していく内に白い肌に赤い花が散っていくのを見て、なんとも言えない征服感のようなものを感じたのは秘密である

「ふぁ…っ」

胸の先端に軽く歯を立てると、ミクの体がビクッと跳ねた

「ここも感じるようになったな」

そう言ってもう片方の胸に手を這わせれば、恥ずかしそうに身を捩らせる

「だって…彰人がいっぱい触るから…」

ミクは顔を真っ赤にしてそう言った
そんな姿が可愛くてつい意地悪をしたくなるのはいつものことだけど、今日はいつも以上にいじめてやりたい気分だった

「そうだな…ミクがオレのせいでこんなにえっちな体になったって思うと興奮するな」

そう言って今度は口に含み舌先で転がしたり強く吸ったりする度に、ミクの口から甘い吐息が漏れる

「あ…ん、んんっ」

胸の先端を指で摘まんだり引っ掻いたりしながらもう片方の胸にしゃぶりついた

「や…あっ、あ」

舌先で先端を押し潰したり、歯を立てたりする度にミクはビクビクと身体を震わせる

「彰人…」

そんなオレの様子に焦れたのか、切なげな声で名前を呼ばれた
その目はすっかり蕩けていて物欲しそうにしているのが分かる

「そんなに欲しいならちゃんとおねだりしろよ」

意地悪く言えば、ミクは顔をさらに真っ赤に染めた
それでもまだ理性が残っているらしく小さく首を横に振るう

「言わないならずっとこのままだぞ」

そう言って、また胸にしゃぶりついた

「あ…っ!やあっ…!」
「ほら、早く言わないとずっとこのままだぞ」

そう言って軽く歯を立てると、ミクはビクッと大きく身体を跳ねさせた

「やだぁ…っ!あ…っ!」

それでもなかなか口を開こうとしないミクにオレはさらに強く吸い上げた

「あんんっ!言うからぁ…っ!」

そんなオレの様子に、ミクは観念したのかようやく口を開いた

「お願い彰人…彰人が欲しいよ…」

涙を浮かべながら懇願する姿に、オレの理性は完全に崩れ去った

「よくできました」

オレはミクの脚を大きく開かせると一気に貫いた

「〜〜〜っ!!♡」

突然の刺激に声にならない悲鳴を上げ、
オレの服をギュッと掴んで必死に快楽に耐えているようだった

「は…っ、相変わらずキツイな……」

締め付けてくる感覚に思わず眉を顰めるが、すぐに動き始める

「あ…彰人っ!ん、あぁっ」

腰を打ち付ける度にミクの口から甘い喘ぎ声が漏れ出す

「すげぇぐちゃぐちゃだな…オレの出したのが溢れてるぞ」
「やだぁ…言わ、ないで…」

恥ずかしげに顔を背ける姿はとても可愛らしいものだったが、同時に嗜虐心を煽られるものでもあった

「ミク、こっち向け」

そう言って顎を掴むと強引に自分の方を向かせる

「あ…っ」

涙に濡れた瞳と目が合った瞬間、オレは噛み付くような勢いで口付けた
舌を入れればそれに応えるように絡ませてくるから堪らない

「ん…ふっ…」

しばらく堪能してから口を離せば、銀色の糸を引いた

「は…あ…」

酸欠気味になったのか肩で大きく息をするミクの額に軽くキスを落とし、今度は耳元に顔を寄せた
そしてそのまま囁くように言葉を紡ぎ出す
「愛してる」その瞬間、ミクのナカがキュッと締まったのが分かった

「あ…っ」
「…今ので感じたのか?」

意地悪く問えば、ミクは

「感じたって言ったら…彰人はどうするの?」

そんな凛々しい顔で挑発的なことを言ってくるから負けじと自分も少し乱暴にしてやろうと

「はっ…上等だ」

と言えばオレはミクの両脚を掴む
そのまま肩に乗せ、上からのしかかるように奥を突く

「ああぁっ!や、ふかっ…いぃっ!」

奥深くまで突かれる感覚にミクは背中をしならせながら喘いだ

「は…っ、ミクのここもオレのこと離したくないって言ってるみたいだぞ」

そう言いながら子宮口をグリッと刺激すれば、またナカが締まった

「やぁ…っ!そこ、ぐりぐりしちゃ、だめぇっ!♡」

あまりの快感に呂律も回らないのか、言葉も途切れ途切れになっている
そんな様子にますます興奮してしまうのだからどうしようもないなと、自嘲気味に笑うしかなかった

「…はあっ」

一旦動きを止めると大きく息を吐き出した
ミクは既に限界が近いらしく、さっきからずっと痙攣を繰り返している

「ミク、イキたいならおねだりしろよ」

そう耳元で囁けば、それだけで感じるのか小さく身体を震わせた

「っ!」

羞恥心からかなかなか言おうとしないミクにオレは追い討ちをかけるように腰を動かした

「ひぁっ!?ああぁっ!」

突然の激しい抽送に驚いたのか、ミクは悲鳴のような嬌声を上げた

「ほら、早く言わないとずっとこのままだぞ」
「やぁ…っ!いじわるしないでぇ…」
「じゃあ言えるよな?ミクはオレの何が欲しいんだ?」

そう言ってまた奥を突き上げる

「あぁっ!ん、ふ…っ」

ミクは必死に快楽に耐えているようだったが、やがて観念したのか口を開いた

「…あ、きとの…いっぱい欲しい…」
「オレの何をどこに欲しいんだ?」

恥ずかしさのあまり消え入りそうな声で言うミクに追い打ちをかけるように問えば、ついに我慢できなくなったのか消え入るような声で呟いた

「…っ…あきとの精液…私のナカにいっぱい出して欲しい…っ」
「よく言えたな。ご褒美にたっぷり注いでやる」

そう言って激しく腰を動かした

「ああぁっ!や、はげし…っ!だめぇっ!」

あまりの激しさに逃げようとするミクの腰を強く掴み引き寄せた

「逃げんなよ」

そう言ってさらに強く打ち付ければ、ミクは悲鳴のような声を上げながら背中をしならせた

「やぁっ!イクッ、イッちゃう…!♡」
「ああ、イケよ」

そう言って最奥を突き上げた瞬間、ミクは背中を大きくしならせながら限界を迎えた

「〜〜〜っ!!♡」


同時にオレも欲望を解き放つと熱いものが注がれる感覚にミクは小さく身体を震わせていた

「あ…あついのいっぱい出てりゅ…♡」


ゆるゆる腰を動かせば、結合部から白濁液が溢れ出た

「はぁ…っ」

ゆっくりと引き抜けばそれすらも感じてしまうのか小さく喘ぐ声が聞こえた
ミクの秘所から溢れ出るオレの欲望が妙にいやらしく見えて思わず目を逸らしてミクの隣に寝転がった

「彰人…気持ちよかった?」

息を整えながら、ミクがオレの顔を覗き込んできた
その表情はまだ蕩けていてかなり色っぽいものだったのは言わないでおくことにする

「あぁ、すげぇ良かった」

そう言って頭を撫でてやれば嬉しそうな顔で擦り寄ってきたので思わずドキッとしてしまう
行為の後はまだ余韻が抜け切れないのか、いつもと比べて素直だ
そんな姿を見せてくれることが嬉しくて堪らない

「ミク…声出ないように我慢してるのも良いけど、オレは声が枯れるまで喘ぐミクの声を聞く方が好きだな」
「っ!彰人のばか…変態…」

そんな憎まれ口を叩きながらも耳まで真っ赤にして照れるミクが可愛くて仕方がない

「はいはい、オレは変態ですよっと」

そう言って軽くキスをしてやれば、「むぅ…」と頬を膨らませて不満そうにしながらも満更でもなさそうな表情をしている
それがまた可愛くて思わず頬が緩んでしまうのを何とか抑え込む

「…ミク。ちょっと話聞いてくれるか
?」
「うん…どうしたの?」

急に真面目なトーンで話し出したオレの様子に、ミクは不思議そうな顔をして見つめてきた
そんな表情ですら可愛く思えてしまうのだから重症かもしれないなと内心苦笑する

「…オレはさ、今こうしてミクとこんな事してるけど、最初出会ったときはバーチャルな存在なお前が目の前に居て、喋ってる事実にビビってたんだ。でも、一緒に歌ってるうちにミクのことが気になって…いつの間にか好きになってた」
「彰人…」
「憧れだったのかもしれない。少なからずミクみたいに強くありたいと思ってたし、実際オレよりメンタル強いしな。だから、オレがミクに惹かれたのは歌が上手いからだって勝手に思い込んでた。でも違ったんだよ」

オレはそこで一旦言葉を区切ると大きく深呼吸をしてから続きを口にした

「ミクは…歌が上手いだけじゃない。見た目も性格も全部ひっくるめて、オレはミクの全てに惹かれたんだ」
「彰人…」

ミクは驚いたような表情をしていたが、次第にその目には涙が溜まっていき、やがて一筋の雫となって流れ落ちた


「あっ、ごめんね…泣くつもりなんてなかったんだけど…」

ミクは慌てて涙を拭っていたが、なかなか止まらないようで困ったような顔をしていた
そんな様子を見て思わず笑みが浮かぶ

「別に謝る必要なんかねえよ。泣きたいときは泣けばいいし、嬉しいなら笑って欲しい」
「…うん…ありがとう彰人…」

ミクは泣きながらも精一杯の笑顔を作って見せた
その笑顔がとても綺麗で見惚れてしまうほどだ
オレはそっとミクを抱き寄せると優しく髪を撫でる
しばらくするとミクも落ち着いてきたのか、ゆっくりと顔を上げた
その顔はまだ涙で濡れていたが、どこか吹っ切れたような表情をしていた

「ねぇ彰人…お願いがあるんだけどいいかな?」

ミクはそう言うとオレの目を見て微笑んだ
その瞳には強い意志が宿っているように見えたのは気のせいだろうか?

「なんだ?」

オレが聞き返すと、ミクはゆっくりと口を開いた
「私はバーチャルな存在だから、彰人と同じ時間は生きられないけど…それでも一緒にいて欲しい。もし私が先に消えたとしても絶対に忘れないで」

そして真剣な眼差しでオレを見つめると言葉を続けた

「…だから、ずっと一緒にいて欲しい。お願い彰人…」

そんなミクの言葉にオレは胸が締め付けられると同時に涙が込み上げて来るのを感じた

「ミク…当たり前だろっ」

そう言って強く抱きしめると、ミクもそれに応えるように背中に手を回してくる

「彰人…ありがとう」

そう言って微笑むミクの目には、また涙が浮かんでいた

「泣くなよ…」

そう言いながら指で涙を拭ってやると「彰人だって泣いてるじゃん」とミクに笑われてしまった

「うるせえ…」

オレは照れ隠しのようにぶっきらぼうな態度で返すが、ミクにはお見通しのようでクスクスと笑っていた

「ねぇ彰人、キスして欲しいな」
「…分かったよ」

オレはミクの頬に手を添えるとゆっくりと唇を重ねた
触れるだけの軽い口づけだったが、それでもミクは満足してくれたようで幸せそうな表情を浮かべている

「愛してるよ…彰人…」

そう言って微笑むミクはとても綺麗で思わず見惚れてしまうほどだった

「オレもだ…ミク」

オレはもう一度唇を重ねるとそのままミクを抱きしめた

「ずっと側に居てくれ…」
「うん、もちろん」

そう言って微笑むと、今度はミクの方からキスをしてきた
それは触れるだけの軽いものだったが、それだけでも十分に満たされる感覚があった

「…話し込じまったな。そろそろ後始末しねぇと」
「そうだね…彰人、シャワー浴びてきていいよ」
「ミクはいいのか?」
「うん、私は後でも大丈夫だから」
「そうか…じゃあ行ってくるわ」

そう言ってオレは浴室へと向かった
鏡に映る自分の顔を見ると、涙の跡が残っていることに気付き苦笑する
まさかミクの前で泣く日が来るとは思わなかったなと思いながらも、不思議と嫌な気分ではなかった

「ミク…」

オレは小さく呟くと、先程のミクの言葉を思い出す

『私はバーチャルな存在だから、彰人と同じ時間は生きられないけど…それでも一緒にいて欲しい。もし私が先に消えたとしても絶対に忘れないで』

その言葉を思い出しながら鏡に映る自分の顔を見ると自然と涙が溢れてきた

「…っ!」

オレはその場にしゃがみ込むと嗚咽を噛み殺すようにして泣いた
今まで溜め込んでいた感情が一気に溢れ出てきたような感覚に陥る

「くそっ…なんなんだよこれ…」

オレはしばらく泣き続けた後、シャワーで涙の跡を洗い流した

「ミク…お前は本当にそれでいいのか?」

オレは誰に言うでもなく一人呟いた
返事は返ってくるはずもなく、浴室内に反響するだけだったがそれでも構わなかった

「…そろそろ出るか」

頭を冷やす意味も兼ねて長めにシャワーを浴びていたせいか、少し頭がボーッとしている気がする

「ミク、シャワー空いたぞ」

部屋に戻ると既にベッドで寝息を立てているミクに声をかけるが反応はない
どうやら完全に寝入っているようだ

「ミク、風邪引くぞ」

オレはタオルケットをかけてやると、そのままベッドの端に腰掛けた

「ミク…愛してる」

起こさないように小さな声で呟いたつもりだったが、それでも聞こえていたのか一瞬ミクの表情が柔らかくなった気がした

「…ん…」

それから程なくして、ミクはゆっくりと目を開いた
どうやら起こしてしまったようだ

「悪い、起こしたか?」

オレが謝ると、ミクは首を横に振った
まだ寝ぼけているのかボーッとした表情をしていたが、次第に覚醒してきたのかハッとしたように起き上がると

「寝てた!?ごめん!」

と慌てて謝ってきた

「別に謝る必要なんてねぇよ」

オレは苦笑しながらそう言うと、ミクの髪を優しく撫でてやった

「彰人…今、出たの?」

ミクはオレの髪に触れながらそう聞いてきた

「あぁ、ちょっと長湯しすぎたかもな」

オレが答えると、ミクは少し心配そうな表情をした

「…大丈夫?なんか疲れてるように見えるけど…」

どうやら顔に出てしまっていたようだ

「ちょっと考え事しててな。でも平気だから気にすんな」

そう言って誤魔化すように笑ってみせると、ミクはまだ少し心配そうな表情をしていたがそれ以上は何も聞いてこなかった

「…そっか、それならいいんだけど…」

そう言って微笑むミクに胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚がした

「…なぁ、ミク」

オレはミクを引き寄せるとそのまま抱きしめた

「彰人?どうしたの?」

突然のことに驚いたのか、少し戸惑っている様子だったが、抵抗することなくオレに身を任せてくれたのが嬉しかった

「…オレの前から居なくなったりするなよ」

オレがそう言うと、ミクは驚いたように目を見開いた後、静かに微笑んでくれた

「大丈夫だよ。ずっと側にいるから」

そう言ってミクはオレの背中に手を回してきた

「…ありがとうな」

オレはそう返すと、もう一度強く抱きしめた

「彰人、今日は泊まって行くんでしょ?」
「あぁ、そのつもりだ」

ミクの問いかけにそう答えると、彼女は嬉しそうに微笑んだ

「じゃあ一緒に寝ようね」
「…そうだな」

オレはそう返すと、ミクを抱きかかえるようにしてベッドに入った

「ふふ…あったかいね」

そう言って微笑むミクを見ていると愛おしさが込み上げてくるのを感じた

「ミク…」

オレはミクを抱き寄せると、その唇に自分のそれを重ねた
触れるだけの軽いものだったがそれでも十分すぎるくらい幸せだった

「…彰人?」

突然のことに驚いたのか、ミクは目を丸くしていた

「悪い…嫌だったか?」

心配になって尋ねると、ミクは小さく首を横に振った後恥ずかしそうに俯いたまま呟いた

「…嬉しかった…」

その仕草があまりにも可愛くて思わず抱きしめそうになるのをぐっと堪える

「…そうか」

オレはそれだけ言うと、ミクの頭を撫でた

「彰人の手…気持ちいい…」

そう言って目を細める姿が猫みたいで可愛らしいと思ったのは言わないでおくことにした

「ほらそろそろ寝るぞ」
「うん…おやすみ彰人」
「あぁ、おやすみ」

そう言って額に軽くキスをするとミクはくすぐったそうに身を捩った
それがまた可愛くて思わず笑みが溢れる
それからしばらくしてミクは寝息を立て始めた
その寝顔を見つめながらオレは決心したことがあった

「絶対に離さねえからな…」

そう呟いてミクの手を握ると、オレも眠りについたのだった
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