このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

紅葉狩り

 *
 
 二人が出て行った襖からは反対側となる縁側に腰掛け、陸奥守と長谷部は騒ぎの一部始終を聞いていた。

「どこから種が明かされるろう」
「どうだろうな。乱や包丁が見つけた飴の方をどう説明するかだな」
「博多もおったんじゃろう」
「あいつも成り行きをおもしろがる方だからな。何もなしに鶴丸達に情報を与えたりはしないだろう」

 長谷部の言い方に笑いながら、陸奥守が湯呑みを傾ける。

「大したことはしちょらんが、仕掛ける側もえいもんじゃのお」
「手間はかかるがな」

 種を知る仕掛人達の元へ、鯰尾と骨喰がやってきた。鯰尾が赤と黄色の飴をひとつずつ、どうぞ、と差し出す。鯰尾は片腕にまだいくつもの菓子を抱えている。骨喰はもらったであろう黄色い飴をひとつ持ち、満足げについて回っているようだ。

「どうしたんだ、これは」

 長谷部がそう訊いてやる。

「鶴丸さんと太鼓鐘くんの宝探しで、戦利品としていただいたんです! 陸奥守さんが途中、お手伝いしてくれたやつですよ。これはお裾分けです」
「ほうか、ようやっと見つかったがか」
「長かったですよね。でも、探し甲斐がありました!」

 ではまだ渡す人がいますので、と二人は誰かを探して次へと駆けていった。
 陸奥守が赤、長谷部が黄色の飴を受け取っている。陸奥守がそれらを観察し、庭の木へと目をやった。

「鶴丸と太鼓鐘らぁは、しっかり、秋の色を選んじゅうがでね」

 紅葉の季節にふさわしい。飴の表面には白いザラメがまぶしてあり、ちらちらと光る。鶴丸と太鼓鐘の作品にチョコレートや焼き菓子を入れてしまって悪かったかもしれない、という陸奥守の心配を長谷部が一笑する。
 
「色鮮やかな菓子はその飴だけだ。意図は崩れていないだろう」

 長谷部の言葉に、陸奥守は感心して目を見張る。

「長谷部、気付いちょったがか」
「さあな」
「おんしゃあはなかなか、風情の分かる男じゃな」

 それには何とも答えずに、長谷部は一口、茶を飲んだ。

 宝探しの菓子に、舞い踊る紅葉に、本丸は内から外から暖色に包まれる。暖かな色が楽しまれ、次第に消費されていくと、季節は白い冬を迎える。

 


【終】
5/5ページ
スキ