高近アドベントカレンダー2024(未遂)

さわさわと一面金色の世界が広がる。
どこまでもどこまでも、黄金色。
「そろそろ収穫時期だな」
隣にいた近藤が、腕組みしながら目の前の光景にほくそ笑んでいた。
「昨年はちょこっと失敗したけど、今年はいっぱい収穫するぞ!」
おー!と自身で、応答して拳を空に突き上げる。そして、目の前の黄金に、麦畑に飛び込んで行った。
せっかくの一面の輝きが、一瞬で崩れた。馬鹿が。
俺はため息を吐くが、口元は緩んでいた。
なんて、穏やかなんだろうか。
本当に、これでいいのだろうか。
俺達は、何もかも捨ててきたのに。

信念を、仕事を、仲間を、
結局は、俺達以外の全てを捨てて。
全てをなかったことにして。
ここに逃げてきたのに。

そんな俺達が、
こんな世界に居ても
許されてもいいのだろうか。

いや、答えはでなくてもいい。
この世界で、閉じこもる限りは。
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