高近アドベントカレンダー2024(未遂)
求婚
「結婚するぞ」
何を言われているのか瞬時には分からなくて、けつ?と聞き返したら、殴られたのを昨日のことのように覚えている。
「にしても、あの時急だったよな。結婚するって言ったの」
高杉は眉をしかめて、こちらを見た。何の話をしてんだ?って顔だ。唐突だったのは認めるけど、思い出したものは仕方ない。
一ヶ月前だっただろうか。高杉が何の前振りもなしに、言ってきたのだった。そりゃあ、付き合っているし、同棲してはいるけど。男同士だぞと、思った。
今は、多様性とかなんとかで、同性婚は認められてはいる。しかし、世間の目はまだ温かいものではない。
だから、いつか来る別れを常に頭に入れていた。いつか訪れる終わりをできるだけ先延ばしにしようとしていた。
それなのに、高杉の一言で吹っ飛んだ。都合の良い聞き間違いかと思ったんだ。嬉しかった。ずっと一緒にいたいと高杉も思ってくれていたなんて!
でも、唐突すぎた。そのことがちょっと心の片隅にひっかかっていた。何かあったっけと。
少し問い詰める形になるが、高杉をまっすぐに見つめていると、こちらから少し視線を外して、考える素振りをした後ニヤリと笑った。
「誰にも、取られたくなかったからな」
……は?
「なんだよ、誰にもって」
てか、誰にだよ。
心の声は漏れなかったけど、不服は出た。もしかして俺、男でも女でも誰でもいいから付き合いそうって思われている?そうだとしたら、心外すぎる。
「俺、そんな浮気性に見える?」
「見えねェからだろうが」
全然分からん。
こいつが何を考えてるのか分からない時は、昔から多々ある。もう慣れてしまったけれど。そして、いつもどことなく、楽しそうなのだ。機嫌が良いと言うやつだろうか。
「高杉のこと、やっぱよくわかんねーわ」
「これから知ってくんだろ」
テーブルに置かれた左の薬指を触られて、頬が赤くなる。
そう。別れなんて考えなくていい。気にしなくていい。紙一枚と光る指輪が、高杉とずっと一緒にいていいと肯定してくれるのだ。
それだけで幸せだけれど。もし欲張っていいのなら、"あいつら"に認めてほしい。まだ会えていない"前世の仲間"に。早く会って、話がしたいな。
「早くあいつらに会いたいな」
「明日な」
高杉は自身の左の薬指を見て、笑っていた。
「結婚するぞ」
何を言われているのか瞬時には分からなくて、けつ?と聞き返したら、殴られたのを昨日のことのように覚えている。
「にしても、あの時急だったよな。結婚するって言ったの」
高杉は眉をしかめて、こちらを見た。何の話をしてんだ?って顔だ。唐突だったのは認めるけど、思い出したものは仕方ない。
一ヶ月前だっただろうか。高杉が何の前振りもなしに、言ってきたのだった。そりゃあ、付き合っているし、同棲してはいるけど。男同士だぞと、思った。
今は、多様性とかなんとかで、同性婚は認められてはいる。しかし、世間の目はまだ温かいものではない。
だから、いつか来る別れを常に頭に入れていた。いつか訪れる終わりをできるだけ先延ばしにしようとしていた。
それなのに、高杉の一言で吹っ飛んだ。都合の良い聞き間違いかと思ったんだ。嬉しかった。ずっと一緒にいたいと高杉も思ってくれていたなんて!
でも、唐突すぎた。そのことがちょっと心の片隅にひっかかっていた。何かあったっけと。
少し問い詰める形になるが、高杉をまっすぐに見つめていると、こちらから少し視線を外して、考える素振りをした後ニヤリと笑った。
「誰にも、取られたくなかったからな」
……は?
「なんだよ、誰にもって」
てか、誰にだよ。
心の声は漏れなかったけど、不服は出た。もしかして俺、男でも女でも誰でもいいから付き合いそうって思われている?そうだとしたら、心外すぎる。
「俺、そんな浮気性に見える?」
「見えねェからだろうが」
全然分からん。
こいつが何を考えてるのか分からない時は、昔から多々ある。もう慣れてしまったけれど。そして、いつもどことなく、楽しそうなのだ。機嫌が良いと言うやつだろうか。
「高杉のこと、やっぱよくわかんねーわ」
「これから知ってくんだろ」
テーブルに置かれた左の薬指を触られて、頬が赤くなる。
そう。別れなんて考えなくていい。気にしなくていい。紙一枚と光る指輪が、高杉とずっと一緒にいていいと肯定してくれるのだ。
それだけで幸せだけれど。もし欲張っていいのなら、"あいつら"に認めてほしい。まだ会えていない"前世の仲間"に。早く会って、話がしたいな。
「早くあいつらに会いたいな」
「明日な」
高杉は自身の左の薬指を見て、笑っていた。
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