800字100日チャレンジ!?
「総ちゃんはもっと背が伸びると思うから、ちょっと大きめの方がいいと思うの」
姉上が買ってきたのは、一回り大きいカーディガン。腕の裾が余って、手の指先しか出ないほどの大きさだった。それが高校一年生の春の話。
あれからすっかり月日は流れて、今や俺は高校三年生……いや、来月からはピカピカの大学一年生ってやつでさァ。
それからというもの、あのカーディガンのサイズに合うサイズまでは、成長した。……までだが。今のサイズ以上には、成長しなかった。手首までにきちんと収まる裾を眺める。予想では、つんつるてんになるはずだったんだが。
「成長しやせんでしたねィ」
背も告白も。
ちらりと目の前を見る。そこには、机に突っ伏してすやすやと寝てるお人がいた。
幼馴染及び、俺のずっとずっと昔から好きな人。
報われようなんざ思ってねェ。
だからと言って、ずっと言わねェのも気色悪ィ。
いつか告白してやろうと思っていたのに、流れに流れてこの様さァ。
横に向いて寝ている近藤さんの耳の上辺りの髪の毛を整えると見せかけて、弄ぶ。暇ですもん。
高校三年生の三月なんて、もうみんな未来に向けて、準備し出す頃合いだ。
大学生になる準備をしだす奴。思い出を作るために準備する奴。来年の受験に向けて準備する奴。えとせとらえとせとら。
もう学校に来なくていい。というか、もう俺ら卒業してるから、学校に行く必要がねェ。
だけれど、近藤さんがもう一度行きたいと言いだしたのが一昨日。それに俺が了承したのは昨日。思い立ったが吉日と言って、やって来たのが今日。
そして、さっきまでは一通り校内を巡って、思い出話をしていた。最後に三年生の時の教室にたどり着き、元自分の窓際席に座って少しの談笑……するかと思えば、疲れたのとぽかぽか日和にあてられたのか、近藤さんは「少し休憩」と言って、机に突っ伏したと思ったら、まさかのそのまま寝ちまうという今の状況という訳でさァ。ね、暇でしょ?
誘って来た本人が寝てしまったもんなら仕方ねェ。手持ち無沙汰なんで、これくらいは許されるだろう。きちんとセットしたであろう髪を片側だけ、弄ってみる。近藤さんは怒るだろうか。
でも、それも今日で最後だ。
柔らかな風が、教室に吹き込む。
近藤さんがむず痒かったのか、顔を下にして先ほどまでアレンジしていた髪が、腕に隠れた。
あー、もう少しでいい感じに完成しそうでしたのに。
窓の方を見る。教室に着いてすぐに開け放した窓だ。まだ風は吹き込んでいた。
ゆっくりと窓を閉めると、はたまた自身のカーディガンの裾が目に映る。
最後の最後まで成長しなかった。
いや、最後の最後までしなかった。
告白。
来週辺りには、俺も近藤さんも地元を出る。俺は県外の大学に、近藤さんは警察学校に。
今までずっとずっと一緒にいたんです。
小さい頃は、このままずっとずっと居られるもんだと思ってやした。
ずっとずっと変わらずに。
んな訳ねェのに。
いつか岐路がくるのは分かってたはずだった。それでも、先延ばしにして、成長しなかった。いや、勇気がなかったんですねィ、俺に。らしくねェや。
「ねェ、近藤さん。俺ね、ずっとずっとずっとずーっと昔から好きだったんですぜ。知ってやした?」
ちょっとこれはズルだろうか。でも、言わないよりは、言った方が自分の中でケリがつくってもんでさァ。
報われるなんざ、思って……
「ちょっと知ってた」
声が聞こえた。どこからなんて、分かりきっているのに、キョロキョロしてしまった。
まさか、そんな。
くすくすと笑う声がして、そちらにゆっくり目線を向ける。そこには案の定、腕に顎をついてこちらを見ている近藤さんがいた。きっと今の俺の顔は苦虫を噛み潰した顔をしているだろう。
だって、だって、面白くない。
近藤さんは、そんな俺に構わずにっこりと、いや、これは悪戯に成功したかのような意地悪な笑顔で、提案してきた。
「なァ、今のって告白として受け取っていい?それとも成長見込んで、改めてを待った方がいい?」
舞い込んできた風が、俺の熱を上げる。
さて、どうしようか。
姉上が買ってきたのは、一回り大きいカーディガン。腕の裾が余って、手の指先しか出ないほどの大きさだった。それが高校一年生の春の話。
あれからすっかり月日は流れて、今や俺は高校三年生……いや、来月からはピカピカの大学一年生ってやつでさァ。
それからというもの、あのカーディガンのサイズに合うサイズまでは、成長した。……までだが。今のサイズ以上には、成長しなかった。手首までにきちんと収まる裾を眺める。予想では、つんつるてんになるはずだったんだが。
「成長しやせんでしたねィ」
背も告白も。
ちらりと目の前を見る。そこには、机に突っ伏してすやすやと寝てるお人がいた。
幼馴染及び、俺のずっとずっと昔から好きな人。
報われようなんざ思ってねェ。
だからと言って、ずっと言わねェのも気色悪ィ。
いつか告白してやろうと思っていたのに、流れに流れてこの様さァ。
横に向いて寝ている近藤さんの耳の上辺りの髪の毛を整えると見せかけて、弄ぶ。暇ですもん。
高校三年生の三月なんて、もうみんな未来に向けて、準備し出す頃合いだ。
大学生になる準備をしだす奴。思い出を作るために準備する奴。来年の受験に向けて準備する奴。えとせとらえとせとら。
もう学校に来なくていい。というか、もう俺ら卒業してるから、学校に行く必要がねェ。
だけれど、近藤さんがもう一度行きたいと言いだしたのが一昨日。それに俺が了承したのは昨日。思い立ったが吉日と言って、やって来たのが今日。
そして、さっきまでは一通り校内を巡って、思い出話をしていた。最後に三年生の時の教室にたどり着き、元自分の窓際席に座って少しの談笑……するかと思えば、疲れたのとぽかぽか日和にあてられたのか、近藤さんは「少し休憩」と言って、机に突っ伏したと思ったら、まさかのそのまま寝ちまうという今の状況という訳でさァ。ね、暇でしょ?
誘って来た本人が寝てしまったもんなら仕方ねェ。手持ち無沙汰なんで、これくらいは許されるだろう。きちんとセットしたであろう髪を片側だけ、弄ってみる。近藤さんは怒るだろうか。
でも、それも今日で最後だ。
柔らかな風が、教室に吹き込む。
近藤さんがむず痒かったのか、顔を下にして先ほどまでアレンジしていた髪が、腕に隠れた。
あー、もう少しでいい感じに完成しそうでしたのに。
窓の方を見る。教室に着いてすぐに開け放した窓だ。まだ風は吹き込んでいた。
ゆっくりと窓を閉めると、はたまた自身のカーディガンの裾が目に映る。
最後の最後まで成長しなかった。
いや、最後の最後までしなかった。
告白。
来週辺りには、俺も近藤さんも地元を出る。俺は県外の大学に、近藤さんは警察学校に。
今までずっとずっと一緒にいたんです。
小さい頃は、このままずっとずっと居られるもんだと思ってやした。
ずっとずっと変わらずに。
んな訳ねェのに。
いつか岐路がくるのは分かってたはずだった。それでも、先延ばしにして、成長しなかった。いや、勇気がなかったんですねィ、俺に。らしくねェや。
「ねェ、近藤さん。俺ね、ずっとずっとずっとずーっと昔から好きだったんですぜ。知ってやした?」
ちょっとこれはズルだろうか。でも、言わないよりは、言った方が自分の中でケリがつくってもんでさァ。
報われるなんざ、思って……
「ちょっと知ってた」
声が聞こえた。どこからなんて、分かりきっているのに、キョロキョロしてしまった。
まさか、そんな。
くすくすと笑う声がして、そちらにゆっくり目線を向ける。そこには案の定、腕に顎をついてこちらを見ている近藤さんがいた。きっと今の俺の顔は苦虫を噛み潰した顔をしているだろう。
だって、だって、面白くない。
近藤さんは、そんな俺に構わずにっこりと、いや、これは悪戯に成功したかのような意地悪な笑顔で、提案してきた。
「なァ、今のって告白として受け取っていい?それとも成長見込んで、改めてを待った方がいい?」
舞い込んできた風が、俺の熱を上げる。
さて、どうしようか。
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