800字100日チャレンジ!?
○11:00
過去の、前世の自分が知ったら、驚くだろうな。
来世で高杉に逢えたことを知ったら、驚くだろうな。
いや、泣いて喜ぶのかな。今の俺がそうだから。
人が多い横断歩道なのに一瞬であいつだと分かった。
変わらないな。
表情筋の固い美しい顔も。
「おい、大丈夫か?」
意外と優しいとこも。
○12:00
「出て行くの?」
「あぁ」
「別れるなんて聞いてない」
「そうは言ってないだろ」
「だって聞いてない」
「……」
「出張だなんて聞いてないよォ!」
「昨日決まったからな」
スーツケースを持ち、高杉は家を出る……前に泣きじゃくる彼へと距離を詰める。
「いってきます」
「……いってらっしゃい」
○13:00
「煙草ってさ、そんなに美味しいの?」
「は?」
「ずっと吸ってんじゃん」
「あぁ、考えたこともねェな」
「なんだそれ。なァ、少しだけ吸わせて? 気になる」
「やめとけ。似合わねェ……てめェにはこれで十分だろ」
「え、棒付き飴って、美味しいけどさ」
ガサッ
ある昼下りのベランダにて。
○14:00
もこもこ泡立つミルクに口をつける昼過ぎ。時間はゆっくり過ぎていき、暖かさが身を包む。
「ふわぁ〜」
隣にいた近藤が大きな欠伸をして、背伸びをする。
目を擦り、必死に起きようとしている姿に、思わず顔が緩む。そして、何故か脳裏に同じような情景が浮かんだ。
はて、これはいつの記憶だろうか?
○15:00
「期待するなって言っただろ」
「食べれるだろこれくらい。それに初めてなんだからご愛敬」
少し焦げたクッキーがオーブンから現れ、高杉は苦虫を潰したような顔をする。
近藤は笑って、冷蔵庫へと向かう。
「俺はお前と入れるだけで幸せだから」
近藤の言葉は蜂蜜と共に、ミルクの中に消えた。
○16:00
「うわ、これ懐かしい〜」
ピッと鳴り、ガコッと下の取り出し口に落ちる音が聞こえた。
「てめェ、勝手に押してんじゃねーよ」
「いいじゃん」
もう一度同じボタンを近藤が押す。
「高杉だってこれ飲みたかっただろ?」
初めて会った時に飲んだ物だから。
高杉は反論しない。
思うことお互い様だな。
○17:00
「あ、高杉」
「帰りか?」
「おう」
信号待ちでいつも帰り時間バラバラの俺と高杉が並んだ。偶然にも程があるようなタイミング。
それにここは俺たちが初めて出会った場所。
俺は笑ってしまった。俺に対して眉を寄せる高杉に「ここ俺たちの待ち合わせ場所みたいだな」とこっそりと話しした。
それに高杉は呆れたかのように笑ったけど、満更でもなさそうに見えるのは気のせいではない。それは前世も今世も一緒にいるから。
「早く帰るぞ」
「うん!」
そう、帰ろう。俺たちの帰る場所に。
おわり
過去の、前世の自分が知ったら、驚くだろうな。
来世で高杉に逢えたことを知ったら、驚くだろうな。
いや、泣いて喜ぶのかな。今の俺がそうだから。
人が多い横断歩道なのに一瞬であいつだと分かった。
変わらないな。
表情筋の固い美しい顔も。
「おい、大丈夫か?」
意外と優しいとこも。
○12:00
「出て行くの?」
「あぁ」
「別れるなんて聞いてない」
「そうは言ってないだろ」
「だって聞いてない」
「……」
「出張だなんて聞いてないよォ!」
「昨日決まったからな」
スーツケースを持ち、高杉は家を出る……前に泣きじゃくる彼へと距離を詰める。
「いってきます」
「……いってらっしゃい」
○13:00
「煙草ってさ、そんなに美味しいの?」
「は?」
「ずっと吸ってんじゃん」
「あぁ、考えたこともねェな」
「なんだそれ。なァ、少しだけ吸わせて? 気になる」
「やめとけ。似合わねェ……てめェにはこれで十分だろ」
「え、棒付き飴って、美味しいけどさ」
ガサッ
ある昼下りのベランダにて。
○14:00
もこもこ泡立つミルクに口をつける昼過ぎ。時間はゆっくり過ぎていき、暖かさが身を包む。
「ふわぁ〜」
隣にいた近藤が大きな欠伸をして、背伸びをする。
目を擦り、必死に起きようとしている姿に、思わず顔が緩む。そして、何故か脳裏に同じような情景が浮かんだ。
はて、これはいつの記憶だろうか?
○15:00
「期待するなって言っただろ」
「食べれるだろこれくらい。それに初めてなんだからご愛敬」
少し焦げたクッキーがオーブンから現れ、高杉は苦虫を潰したような顔をする。
近藤は笑って、冷蔵庫へと向かう。
「俺はお前と入れるだけで幸せだから」
近藤の言葉は蜂蜜と共に、ミルクの中に消えた。
○16:00
「うわ、これ懐かしい〜」
ピッと鳴り、ガコッと下の取り出し口に落ちる音が聞こえた。
「てめェ、勝手に押してんじゃねーよ」
「いいじゃん」
もう一度同じボタンを近藤が押す。
「高杉だってこれ飲みたかっただろ?」
初めて会った時に飲んだ物だから。
高杉は反論しない。
思うことお互い様だな。
○17:00
「あ、高杉」
「帰りか?」
「おう」
信号待ちでいつも帰り時間バラバラの俺と高杉が並んだ。偶然にも程があるようなタイミング。
それにここは俺たちが初めて出会った場所。
俺は笑ってしまった。俺に対して眉を寄せる高杉に「ここ俺たちの待ち合わせ場所みたいだな」とこっそりと話しした。
それに高杉は呆れたかのように笑ったけど、満更でもなさそうに見えるのは気のせいではない。それは前世も今世も一緒にいるから。
「早く帰るぞ」
「うん!」
そう、帰ろう。俺たちの帰る場所に。
おわり