800字100日チャレンジ!?
出会ってから10年。付き合ってもう5年経つ。
そろそろいいよな?
プロポーズしても。
逆に長すぎた気もする。
同棲なんて、ルームシェアしたときも入れると、7年になるんじゃないか?
別に籍を入れれるわけじゃないんだから、そろそろいいよな。
なのに、近藤さんは俺がそういうムードを作ると、逃げる。
そりゃあ、スルッと。
最初は俺のムード作りが悪いのかと思ったが、そうじゃない。
近藤さんが確実に逃げている。
もしかして、俺のこと嫌になったのか?
いや、そんなことはない……はずだ。
俺のことを拒絶する態度は特にないし、記念日は必ず祝ってるし、セックスだって、お互い休みの前日に必ずするし、それを不満に思ったこともない。
いや、少し増やしたいとは思っているが。それはそれとして。
とにかく順調……なはずだ。……多分。
近藤さんは、俺とずっといる未来を見ていないのだろうか。
俺は左手を天井に掲げる。
なんの装飾もない手。
俺は拳を握る。
不安じゃないのだろうか、近藤さんは。
俺は机の引き出しを開けて、"それ"があることを確認した。
「トシ〜、ご飯できたよ〜」
キッチンにいるだろう近藤さんから声がかかる。今日の夕ご飯はロールキャベツらしい。デミグラスソースの良い匂いがここまで漂う。
ちょうど良い。今日こそは。
俺はポケットに"それ"を忍ばせて、リビングに向かった。
「今日は宣言通りのロールキャベツだぞ!トシ好きだもんなーデミグラスのやつ」
「ああ、好きだな」
「だよな〜」
「近藤さん、俺たちそろそろ」
「あ!トシ、ご飯用意するの忘れてた。ちょっと待って」
「近藤さん!!」
俺は、キッチンへ逃げるように向かう近藤さんの腕を掴む。近藤さんはハッとして俺を見て、眉を八の字にして顔をそらした。なんで。
「近藤さんは俺のことが嫌いなのか?」
「違うっ!そんなことない!」
「なら、どうして逃げるんだよ」
「そ、それは……その……」
視線を彷徨わせた後、覚悟を決めたかのように深呼吸する近藤さんに、俺は死刑宣告を聞くような心持ちでいた。嫌いじゃなかったら、なんだ。
分からないからこそ……言いたくはないが、怖くて仕方なかった。
「だって、トシさ、俺にプロポーズしようとしてるだろ」
「分かってるんだったら」
「トシは分かってない!プロポーズしちゃったら、俺もうトシを離せないよ。今なら寄り道していいけど、プロポーズしたら寄り道とか浮気とか許せねぇもん」
は?と声が出なかった俺を俺は自分で褒める。近藤さんは何を言ってるんだ。俺がいつ、他の奴を好きとか手を出したいとか言ったんだ?
近藤さんは時々、思考回路がぶっ飛ぶ時がある。
きっとどこか何かで不安になったんだろう。
この人は分かってない。
俺がどれだけ近藤さんを思っていることを。
近藤さんしか見ていないことを。
不安になることなんて何ひとつないことを。
俺もひとつ深呼吸をして、近藤さんの掴んでた腕を手の方へ移動して、その手を自身の手の上に乗せる。
「近藤さん、聞いてくれ」
「……」
「そろそろ俺は近藤さんとゴールインしたいんだ 。きっと大丈夫だ。大切にする」
ポケットに忍ばせた"それ"を近藤さんの薬指に嵌める。
近藤さんはくしゃっと顔を歪ませて、「きっとじゃ嫌」っと小声で言う。
愛おしさが胸を渦巻く。俺はそっと"それ"に口付けた。
「ごめん、絶対に大丈夫だ。指輪に誓う。てか、俺が近藤さん以外を見たことあるかよ」
近藤さんはそれに笑って、左手で口元を隠す。きらりと光る薬指を見て、俺は頬が緩んだ。
出会って10年。付き合って5年。
俺たちの付き合いはようやくゴールインした。
おわり
そろそろいいよな?
プロポーズしても。
逆に長すぎた気もする。
同棲なんて、ルームシェアしたときも入れると、7年になるんじゃないか?
別に籍を入れれるわけじゃないんだから、そろそろいいよな。
なのに、近藤さんは俺がそういうムードを作ると、逃げる。
そりゃあ、スルッと。
最初は俺のムード作りが悪いのかと思ったが、そうじゃない。
近藤さんが確実に逃げている。
もしかして、俺のこと嫌になったのか?
いや、そんなことはない……はずだ。
俺のことを拒絶する態度は特にないし、記念日は必ず祝ってるし、セックスだって、お互い休みの前日に必ずするし、それを不満に思ったこともない。
いや、少し増やしたいとは思っているが。それはそれとして。
とにかく順調……なはずだ。……多分。
近藤さんは、俺とずっといる未来を見ていないのだろうか。
俺は左手を天井に掲げる。
なんの装飾もない手。
俺は拳を握る。
不安じゃないのだろうか、近藤さんは。
俺は机の引き出しを開けて、"それ"があることを確認した。
「トシ〜、ご飯できたよ〜」
キッチンにいるだろう近藤さんから声がかかる。今日の夕ご飯はロールキャベツらしい。デミグラスソースの良い匂いがここまで漂う。
ちょうど良い。今日こそは。
俺はポケットに"それ"を忍ばせて、リビングに向かった。
「今日は宣言通りのロールキャベツだぞ!トシ好きだもんなーデミグラスのやつ」
「ああ、好きだな」
「だよな〜」
「近藤さん、俺たちそろそろ」
「あ!トシ、ご飯用意するの忘れてた。ちょっと待って」
「近藤さん!!」
俺は、キッチンへ逃げるように向かう近藤さんの腕を掴む。近藤さんはハッとして俺を見て、眉を八の字にして顔をそらした。なんで。
「近藤さんは俺のことが嫌いなのか?」
「違うっ!そんなことない!」
「なら、どうして逃げるんだよ」
「そ、それは……その……」
視線を彷徨わせた後、覚悟を決めたかのように深呼吸する近藤さんに、俺は死刑宣告を聞くような心持ちでいた。嫌いじゃなかったら、なんだ。
分からないからこそ……言いたくはないが、怖くて仕方なかった。
「だって、トシさ、俺にプロポーズしようとしてるだろ」
「分かってるんだったら」
「トシは分かってない!プロポーズしちゃったら、俺もうトシを離せないよ。今なら寄り道していいけど、プロポーズしたら寄り道とか浮気とか許せねぇもん」
は?と声が出なかった俺を俺は自分で褒める。近藤さんは何を言ってるんだ。俺がいつ、他の奴を好きとか手を出したいとか言ったんだ?
近藤さんは時々、思考回路がぶっ飛ぶ時がある。
きっとどこか何かで不安になったんだろう。
この人は分かってない。
俺がどれだけ近藤さんを思っていることを。
近藤さんしか見ていないことを。
不安になることなんて何ひとつないことを。
俺もひとつ深呼吸をして、近藤さんの掴んでた腕を手の方へ移動して、その手を自身の手の上に乗せる。
「近藤さん、聞いてくれ」
「……」
「そろそろ俺は近藤さんとゴールインしたいんだ 。きっと大丈夫だ。大切にする」
ポケットに忍ばせた"それ"を近藤さんの薬指に嵌める。
近藤さんはくしゃっと顔を歪ませて、「きっとじゃ嫌」っと小声で言う。
愛おしさが胸を渦巻く。俺はそっと"それ"に口付けた。
「ごめん、絶対に大丈夫だ。指輪に誓う。てか、俺が近藤さん以外を見たことあるかよ」
近藤さんはそれに笑って、左手で口元を隠す。きらりと光る薬指を見て、俺は頬が緩んだ。
出会って10年。付き合って5年。
俺たちの付き合いはようやくゴールインした。
おわり