800字100日チャレンジ!?
「好きって言われたいんだけど、どうしたらいいと思う?」
「あの天パ……近藤さん、今すぐ締めに行こうか?」
「待ってくだせェ。土方さんだけじゃ無理でさァ、俺も行きやすぜ」
「ちょっと待って?」
どうしよう。俺の一言で、2人の、トシと総悟の目が完全に据わっちゃった……。
俺は慌てて弁明すべく、腰を上げようとする2人の腕を掴む。行動が早すぎる。
「どうした、近藤さん」
「こっちがどうした?なんだけど……いや、俺の言い方が悪かったかもだから、座ってもらっていい?」
「近藤さんは何も間違ってやせんぜ」
「そうかもしれないけど、勘違いさせてる可能性もあるから、座ってくれ」
2人は目を合わせてから、真剣を置いて渋々と座ってくれた。危なかった。銀時の命が。
「で、何が間違いなんだ?
あいつから好きって言ってもらえなくて、近藤さんが不安がっているっていうどこが間違いなんだ?」
「あー、うーーん、そこは間違ってないけど」
「総悟、ありったけの呪物もってこい」
「すいやせん、土方さん。そいつら、全部土方さんに使ってやす。今の土方さん見る限り、こうかはいまひとつのよう、でさァ」
「総悟ォォォォォォ!!」
トシは総悟の胸ぐらを掴んで、すごい勢いで揺さぶる。しかし、総悟はそれに眉一つ動かさず、飄々としていた。
「トシ、やめたげて……総悟もトシで試さない」
「試してやせん。俺はいつだって本気でさァ!」
「てめェも天パごと叩っ斬ってやろうか?」
「ハァ」
いつものやり取りが始まった。いつものことだから慣れたものだけど、これでさっきのことうやむやにならないかなァ。
なんて思ってたら、トシが「で、あのクソ天パ、いつ叩っ斬るんだ?近藤さん」と、総悟から手を離して、血走る目でこちらを見てきた。
うーん、総悟は逃して、俺を逃してくれないかァ。
「いや、トシ、落ち着いて。叩っ斬らなくていいから」
「でも、近藤さん、あいつに不満があるんだろ?」
「うーん、不満っていう不満はないっていうか、たださ、好きって言って欲しいなっていう」
「旦那、釣った魚に餌やらないタイプだとは思ってやしたが……。そんな奴は別れた方がいいですぜ」
「いやいや、銀時はちゃんと愛情表現をしてくれてるぞ!そこに不満はないっていうか」
「惚気か?」
「惚気ですかィ?」
「うーん、そうじゃないけど」
トシと総悟がさっきと別の意味で、目が据わってる……というか、目を細めて俺を見ている。居た堪れない。
「別に不満がねェなら、それでいいだろ。言葉で欲しいなんざ」
「あら、土方さん。近藤さんは不満がなくても不安なんですぜ。さっき言ってたのにもう忘れたんですかィ?」
「チッ、近藤さんはなんで言葉が欲しいんだ。あいつから嫌われてるとは思ってないんだろ?」
「うん、思ってない」
「即答ですかィ」
「なんでだろうな。一回も言われてなかったなーと思ったら、寂しいって感じちゃったからかな」
どうしてもってわけではない。ただ、銀時から好きだよって言ってもらいたいなァと思っただけ。それだけなんだけどなァ。わがままだろうか。
「言葉じゃなくても、好意が伝わってるなら、言わなくてもいいだろ」
「うわァ、出ましたよ。土方さんのそういうところ。だから、ヘタレなんですぜ」
「なんだとコラァァァ!!じゃあ、言えるのか?シラフですきすきとか言えるのか?あ?」
「言えるぞ」
「え?」
「俺は好きだぞ、トシも総悟も」
「俺も好きですぜ、近藤さんのこと」
「……」
俺たちの方を凝視したトシは歯を食いしばって、赤い顔で目を反らしていた。あー、銀時もこんな感じだったなァ。
「なんでィ、言えねェんですかィ。ダセェ」
「うるせェ!!よくそんな臆面もなく……!!」
トシは視線を泳がせていたけど、俺と総悟がじっと見つめていたら、決心着いたのか、ぐっと俯いて小さく呟いた。
「お、おれだ……こ、こん……さ……す……すき……す」
「えー?なんだってェ?聞こえやせんねーコンパスがどうしたんですかィ?刺されたいんですかィ?」
「総悟ォォォォォォ!!」
トシが真剣を手に、立ち上がる前に、総悟はもう部屋から逃げていた。それをすぐさまトシが追いかける。キャパオーバーだったのかなァ。
いつものことと言えばいつものこと。なんだか肩の力が抜けた気がして、ここ何回目かのため息を吐く。幸せ逃げちゃうなァ。
にしても、やっぱ好きって言うの、ハードル高ェのかな。トシでさえ、ああなるってことは。
でも、やっぱ言葉として、一回でいいから欲しいよな……。俺って欲張り?それでも諦めたくないなァと思っちまうんだよ。
冷めてしまったお茶を一口啜る。うん、渋い。
これってもしかして、前途多難ってやつなのかなァ。うーん。
あの時から増えた俺のため息は、遠くから聞こえる2人の喧騒の中に消えた。
おわり
「あの天パ……近藤さん、今すぐ締めに行こうか?」
「待ってくだせェ。土方さんだけじゃ無理でさァ、俺も行きやすぜ」
「ちょっと待って?」
どうしよう。俺の一言で、2人の、トシと総悟の目が完全に据わっちゃった……。
俺は慌てて弁明すべく、腰を上げようとする2人の腕を掴む。行動が早すぎる。
「どうした、近藤さん」
「こっちがどうした?なんだけど……いや、俺の言い方が悪かったかもだから、座ってもらっていい?」
「近藤さんは何も間違ってやせんぜ」
「そうかもしれないけど、勘違いさせてる可能性もあるから、座ってくれ」
2人は目を合わせてから、真剣を置いて渋々と座ってくれた。危なかった。銀時の命が。
「で、何が間違いなんだ?
あいつから好きって言ってもらえなくて、近藤さんが不安がっているっていうどこが間違いなんだ?」
「あー、うーーん、そこは間違ってないけど」
「総悟、ありったけの呪物もってこい」
「すいやせん、土方さん。そいつら、全部土方さんに使ってやす。今の土方さん見る限り、こうかはいまひとつのよう、でさァ」
「総悟ォォォォォォ!!」
トシは総悟の胸ぐらを掴んで、すごい勢いで揺さぶる。しかし、総悟はそれに眉一つ動かさず、飄々としていた。
「トシ、やめたげて……総悟もトシで試さない」
「試してやせん。俺はいつだって本気でさァ!」
「てめェも天パごと叩っ斬ってやろうか?」
「ハァ」
いつものやり取りが始まった。いつものことだから慣れたものだけど、これでさっきのことうやむやにならないかなァ。
なんて思ってたら、トシが「で、あのクソ天パ、いつ叩っ斬るんだ?近藤さん」と、総悟から手を離して、血走る目でこちらを見てきた。
うーん、総悟は逃して、俺を逃してくれないかァ。
「いや、トシ、落ち着いて。叩っ斬らなくていいから」
「でも、近藤さん、あいつに不満があるんだろ?」
「うーん、不満っていう不満はないっていうか、たださ、好きって言って欲しいなっていう」
「旦那、釣った魚に餌やらないタイプだとは思ってやしたが……。そんな奴は別れた方がいいですぜ」
「いやいや、銀時はちゃんと愛情表現をしてくれてるぞ!そこに不満はないっていうか」
「惚気か?」
「惚気ですかィ?」
「うーん、そうじゃないけど」
トシと総悟がさっきと別の意味で、目が据わってる……というか、目を細めて俺を見ている。居た堪れない。
「別に不満がねェなら、それでいいだろ。言葉で欲しいなんざ」
「あら、土方さん。近藤さんは不満がなくても不安なんですぜ。さっき言ってたのにもう忘れたんですかィ?」
「チッ、近藤さんはなんで言葉が欲しいんだ。あいつから嫌われてるとは思ってないんだろ?」
「うん、思ってない」
「即答ですかィ」
「なんでだろうな。一回も言われてなかったなーと思ったら、寂しいって感じちゃったからかな」
どうしてもってわけではない。ただ、銀時から好きだよって言ってもらいたいなァと思っただけ。それだけなんだけどなァ。わがままだろうか。
「言葉じゃなくても、好意が伝わってるなら、言わなくてもいいだろ」
「うわァ、出ましたよ。土方さんのそういうところ。だから、ヘタレなんですぜ」
「なんだとコラァァァ!!じゃあ、言えるのか?シラフですきすきとか言えるのか?あ?」
「言えるぞ」
「え?」
「俺は好きだぞ、トシも総悟も」
「俺も好きですぜ、近藤さんのこと」
「……」
俺たちの方を凝視したトシは歯を食いしばって、赤い顔で目を反らしていた。あー、銀時もこんな感じだったなァ。
「なんでィ、言えねェんですかィ。ダセェ」
「うるせェ!!よくそんな臆面もなく……!!」
トシは視線を泳がせていたけど、俺と総悟がじっと見つめていたら、決心着いたのか、ぐっと俯いて小さく呟いた。
「お、おれだ……こ、こん……さ……す……すき……す」
「えー?なんだってェ?聞こえやせんねーコンパスがどうしたんですかィ?刺されたいんですかィ?」
「総悟ォォォォォォ!!」
トシが真剣を手に、立ち上がる前に、総悟はもう部屋から逃げていた。それをすぐさまトシが追いかける。キャパオーバーだったのかなァ。
いつものことと言えばいつものこと。なんだか肩の力が抜けた気がして、ここ何回目かのため息を吐く。幸せ逃げちゃうなァ。
にしても、やっぱ好きって言うの、ハードル高ェのかな。トシでさえ、ああなるってことは。
でも、やっぱ言葉として、一回でいいから欲しいよな……。俺って欲張り?それでも諦めたくないなァと思っちまうんだよ。
冷めてしまったお茶を一口啜る。うん、渋い。
これってもしかして、前途多難ってやつなのかなァ。うーん。
あの時から増えた俺のため息は、遠くから聞こえる2人の喧騒の中に消えた。
おわり