800字100日チャレンジ!?
「万事屋ー!勝負しようぜ!」
とかなんとか言って、近藤が万事屋に来た。恵方巻きを2本携えて。
こちとら二日酔いでグロッキー状態だというのに、近藤はそんなことお構いなしにべらべらとなにか喋っている。半分聞いてないというか、聞こえてない。うっぷ、米なんて一番みたくないものを。
「ということで、恵方巻き早食い競争な!」
返事をしなかったら、いつの間にか競技は決まって、参加させられていた。まあ、こいつと俺しか参加者はいないが。
俺が椅子にふんぞり返っていると、近藤が一本丸々の恵方巻きを渡してくる。近藤と恵方巻きを交互に見ていたが、一歩も引かなさそうだったので、俺はため息を吐きつつそれを受け取った。
受け取った俺にニカっと笑って、近藤はソファの方へ向かい、座る。「南南東微南、ってこの辺?」と言いつつ、俺からは横顔が見える位置の向きに調整していた。
「よし、いただきます」
近藤は両手で恵方巻きを持ち、大きく口を開けてそれを頬張る。
それを咥えたまま、黙々と食べていく近藤。
頬を膨らませながらも、一生懸命に食べていく近藤。
なかなかに咀嚼が辛いのか、苦しい表情で食べていく近藤。
俺は、恵方巻きを持ったまま、あいつをガン見していた。
いや、これはするだろ!!
しない方がおかしいよな?!
そう思うだろ!!お前らも!!
二日酔いの酔いなんてどこかにいった。
そしてときたま、こちらを窺うように近藤が横目で見てくる。それが苦しいからなのか、涙目なのだ。そう涙目。
これは、そういうことなんじゃないか?
そういうことだよな?
誘われてるってことでいいんだよな!
しかし、俺はそんな考えを振り払うように、一旦深呼吸をした。
邪な気持ちを持つな俺。
散々今まで痛めに遭ってきただろ俺!
冷静になった頭は、目を瞑ることを提案した。だからそうしようと思ったんだ。そう、思ったんだが、すぐさま一点集中することになった。
それは近藤の口元だ。
俺は目が血走りそうなほど、限界まで瞼を開いた。
恵方巻きの1/3まで進んだところで、近藤は休憩するかのように食べるのを止めていた。膨らんだ頬を紅潮させて、ふぅーふぅーと息を整えている。
その間につぅーっと涎が垂れ、それがなんともいやらしく見えるのは俺だけか?
そして、俺は確信した。
これは、あの口で俺の恵方巻きを咥えてくれる……ってことでいいんだよな!!
自然とごくりと唾を飲んだ。
そこから、近藤はラストスパートを決めるつもりでか、ぐっと眉を寄せて一気に恵方巻きを口の中に入れた。口を両手で抑えて、頬を膨らませて、涙を目尻にためて、顔を薄ら赤くして、上を向く。
ごくり。
そう俺にも聞こえた。
「はぁーー!ご馳走様でした!美味しかった」
うっとりとつきそうなほどに、近藤は満足気な顔で食事を終えていた。ラストスパートについてこれなかった口端についた米粒を舌で舐めとる姿で、俺はプツンときた。
もうこれは決定的だ。
いいんだよな。そういうことで。
俺は椅子からガタンと立ち上がった。
しかしその時、近藤がこちらを向いたのだ。それがどこかニヤニヤしたと顔で、俺は頭の中にはてなが散らばった。
「勝負は俺の勝ちだな!約束は守ってもらうからな!」
「へ?やくそく?」
「言っただろ?勝った方がバレンタインのときにチョコ渡すって!楽しみにしてるからな!」
はて、そんな約束してたようなしてなかったような。何か言ってたような気もするが、今はいろいろそれどころではないのだ。それなのに、はぁー食った食ったと言わんばかりに、満足そうにお腹をさする近藤。
そして、立ち上がり伸びをして、「じゃ、俺仕事戻るな!バレンタイン忘れんなよ!」と言って颯爽と近藤は万事屋を去っていった。
俺は近藤に触れもできずに、ただ恵方巻きを待って立ったまま、あいつを見送っただけ。
え、そうじゃなかったってこと??
いやいや、そうじゃないわけなくない??
意味わかんなくない??
流れ的に、俺の恵方巻きを頬張ってのごっくん展開じゃねェのか?
おいおいおいおい……
「期待させんじゃねェよォォォォォォ!!」
少し生暖かい恵方巻きを、俺は思う存分噛みちぎった。
おわり
とかなんとか言って、近藤が万事屋に来た。恵方巻きを2本携えて。
こちとら二日酔いでグロッキー状態だというのに、近藤はそんなことお構いなしにべらべらとなにか喋っている。半分聞いてないというか、聞こえてない。うっぷ、米なんて一番みたくないものを。
「ということで、恵方巻き早食い競争な!」
返事をしなかったら、いつの間にか競技は決まって、参加させられていた。まあ、こいつと俺しか参加者はいないが。
俺が椅子にふんぞり返っていると、近藤が一本丸々の恵方巻きを渡してくる。近藤と恵方巻きを交互に見ていたが、一歩も引かなさそうだったので、俺はため息を吐きつつそれを受け取った。
受け取った俺にニカっと笑って、近藤はソファの方へ向かい、座る。「南南東微南、ってこの辺?」と言いつつ、俺からは横顔が見える位置の向きに調整していた。
「よし、いただきます」
近藤は両手で恵方巻きを持ち、大きく口を開けてそれを頬張る。
それを咥えたまま、黙々と食べていく近藤。
頬を膨らませながらも、一生懸命に食べていく近藤。
なかなかに咀嚼が辛いのか、苦しい表情で食べていく近藤。
俺は、恵方巻きを持ったまま、あいつをガン見していた。
いや、これはするだろ!!
しない方がおかしいよな?!
そう思うだろ!!お前らも!!
二日酔いの酔いなんてどこかにいった。
そしてときたま、こちらを窺うように近藤が横目で見てくる。それが苦しいからなのか、涙目なのだ。そう涙目。
これは、そういうことなんじゃないか?
そういうことだよな?
誘われてるってことでいいんだよな!
しかし、俺はそんな考えを振り払うように、一旦深呼吸をした。
邪な気持ちを持つな俺。
散々今まで痛めに遭ってきただろ俺!
冷静になった頭は、目を瞑ることを提案した。だからそうしようと思ったんだ。そう、思ったんだが、すぐさま一点集中することになった。
それは近藤の口元だ。
俺は目が血走りそうなほど、限界まで瞼を開いた。
恵方巻きの1/3まで進んだところで、近藤は休憩するかのように食べるのを止めていた。膨らんだ頬を紅潮させて、ふぅーふぅーと息を整えている。
その間につぅーっと涎が垂れ、それがなんともいやらしく見えるのは俺だけか?
そして、俺は確信した。
これは、あの口で俺の恵方巻きを咥えてくれる……ってことでいいんだよな!!
自然とごくりと唾を飲んだ。
そこから、近藤はラストスパートを決めるつもりでか、ぐっと眉を寄せて一気に恵方巻きを口の中に入れた。口を両手で抑えて、頬を膨らませて、涙を目尻にためて、顔を薄ら赤くして、上を向く。
ごくり。
そう俺にも聞こえた。
「はぁーー!ご馳走様でした!美味しかった」
うっとりとつきそうなほどに、近藤は満足気な顔で食事を終えていた。ラストスパートについてこれなかった口端についた米粒を舌で舐めとる姿で、俺はプツンときた。
もうこれは決定的だ。
いいんだよな。そういうことで。
俺は椅子からガタンと立ち上がった。
しかしその時、近藤がこちらを向いたのだ。それがどこかニヤニヤしたと顔で、俺は頭の中にはてなが散らばった。
「勝負は俺の勝ちだな!約束は守ってもらうからな!」
「へ?やくそく?」
「言っただろ?勝った方がバレンタインのときにチョコ渡すって!楽しみにしてるからな!」
はて、そんな約束してたようなしてなかったような。何か言ってたような気もするが、今はいろいろそれどころではないのだ。それなのに、はぁー食った食ったと言わんばかりに、満足そうにお腹をさする近藤。
そして、立ち上がり伸びをして、「じゃ、俺仕事戻るな!バレンタイン忘れんなよ!」と言って颯爽と近藤は万事屋を去っていった。
俺は近藤に触れもできずに、ただ恵方巻きを待って立ったまま、あいつを見送っただけ。
え、そうじゃなかったってこと??
いやいや、そうじゃないわけなくない??
意味わかんなくない??
流れ的に、俺の恵方巻きを頬張ってのごっくん展開じゃねェのか?
おいおいおいおい……
「期待させんじゃねェよォォォォォォ!!」
少し生暖かい恵方巻きを、俺は思う存分噛みちぎった。
おわり