800字100日チャレンジ!?

はぁ、はぁと赤くなった指先を溶かすように近藤が息を吐く。一瞬しか暖まらずとも、やめてしまえば凍ってしまうほどに、ここは寒かった。
「近藤さん、中に入ろう」
「うーん、もう少しでいいから、ここでいようよ、トシ」
土方は寒さに震える近藤を見てられなくて、提案したが本人に却下された。
「風邪ひいても知らねェぞ」
「そしたら、優しく看病してよ、ダーリン」
近藤の隣に座り直して、タバコに火をつけようとする土方に、ニヤッと笑って軽口を返す。
土方はそれに肩をすくめて、咥えてたタバコを口から外した。
「優しくは保証しかねるな、ハニー」
そして、ゆっくり彼にキスをする。
しんとした雪の中に溶け込まれるように、リップ音は小さくふたりの間だけで響く。
「ハハッ、トシがハニーって言うの似合わねェ!」
「あんたが言い出したんだろ」
顔を抑えて笑う近藤とタバコに火をつける土方。
震えるほど寒かったはずなのに、今は少し熱いと感じる。
さすが、ダーリンと言うべきか。近藤は指の隙間から彼を見た。
土方はこちらを見ずに、タバコをくゆらせている。少し顔が赤いのは、寒さのせい?それとも、性に合わないことをしたせい?
どちらだとしても、近藤はニヤけることを抑えれないため、まだ顔から手を退かすことができない。
もう少し。もう少しだけ。ここで一緒にいて。
中に入ったら、戻ったら、真選組の局長に戻るから。
もう少し。もう少しだけでいい。
今だけは、トシの恋人でいさせてよ。

まだ俺たちは中には入れない。
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