800字100日チャレンジ!?

『来週は今年最強の寒気が流れてくる模様です。みなさん、備えあれば憂いなしですよー』
「ええ、死ぬ?」
「死なないだろ」
朝の天気予報を出勤前に見る高杉と近藤。
朝食の苺ジャムをたっぷりと塗った食パンを手に持った状態で、近藤はテレビを見つつ、顔が引きつる。高杉はコーヒーを飲みながら、眠気と戦っていた。
「これ以上、寒くなると起きるの辛いよなァ」
「寒くなくても一緒だ」
「高杉なんて、布団から出れなさそう、低血圧め」
「出なくてもいいなら出ない」
高杉は目を瞑って、天井を仰ぐ。まだ眠いんだろう。近藤はそんな彼を見つつ、食パンを齧る。
いつもはきっちりとする高杉だが、家だと時たまだらしない側面をみせる。多分、きっと、今のとこは、俺しか知らない。それが少し嬉しく感じる。
近藤はだんだんとニヤケが隠しきれず、落ち着くためにコーヒーに手を伸ばそうとした。
「おい」
「え!!なに?」
「ついてる」
高杉が自身の右口端を指差す。
ぐいっと口元を近藤が拭うと、赤色が指先に付いていた。きっと苺ジャムだろう。顔が先程同様に引きつってしまう。
「ハハハ」
「笑うな、バカ」
「てめェも抜けてる時あるんだなってな」
高杉は口元を手の甲で覆って、笑いを抑えていたが、抑えきれてない。近藤は全然面白くなかったが、高杉の言葉に頬の筋肉は少し緩んだ。
俺も高杉の前だとちょっと緩むんだなァって。
「いや、てめェはいつも呆けてるな。ならいつも通りじゃねェか」
「それは失礼じゃない?俺に!」
朝から軽口を叩きあうふたり。
だんだんと温度に慣れたのか、部屋が暖かくなったのか、心の余裕ができたのだろう。
近藤は少しぷくっと頬を膨らませて、ふと窓の方を見る。
窓には結露が浮かび、外の冷え込みが強いことが窺える。
今でもこの寒さなのに、来週はもっともっと冷え込みが強くなる。きっと笑えないほどに。
それでも、高杉と一緒なら乗り越えれそうだと。
暖かいコーヒーを手にして、近藤は思うのであった。

おわり
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