1〜25日目!
祝福を受けるのは、神様に認められる者達だけ。
俺たちは、祝福を受けられない。
だって、俺たちは神様に嫌われてるから。
ねえ、神様。
なら、罰を受ければ俺たちを祝福してくれますか?
丘の上にある教会。
元来は、たくさんの人が集まり、祝福してされて、喜びに満ち溢れた場所だっただろう。
それが今や、雑草や蔦に取り巻かれて、誰も寄り付かない薄暗い寂れた場所になってしまった。
長年使われていないことが見て取れるほど、ところどころ朽ちている礼拝堂で、男がふたり、長い椅子に並んで座っていた。
「座れるもんだなァ」
「ああ、もっと使われる予定だったんだろう」
礼拝堂の左側に並ぶ椅子に座っていた高杉が、煙管を吹かしながら、答えた。右側に座っていた近藤は、彼を見ながら素材を確かめるように、少し湿った椅子を撫でていた。
独特な匂いや陰惨な雰囲気がそこに漂いながらも、ステンドグラスから降り注ぐ光にふたりは何も言わずに包まれていた。
「あったけェな」
「……」
「こんなにもあったけェのに、なんでこんなに冷たいんだろう」
近藤はステンドグラスに描かれた神様を見ていた。何も変わらずに神様はこちらへ微笑んでいる。
あったかい。何もかも包んで許してくれそうな暖かさを感じる微笑み。それでも。
それでも、貴方は俺たちを認めてはくれないんだろう。
大きく息を吸う。頭がクラっとなるのが分かった。近藤が神様から目を逸らし、天井へと視線を移す。そんな彼を横目で見つつ、煙管の火を絶やさないように、高杉は吹かす。吸わずにただただ吹かしていた。
「なんで罰が必要かわかるか?」
「え?わかんねェ」
「悪いことをした奴には報いを受けて欲しい。そして、それでもがき苦しむ姿が見たいんだよ。どいつもこいつも」
近藤が勢いよく彼の方を向く。高杉は視線を受けながらも、そちらには向かず、神様を見ていた。いや、睨んだと言っても過言ではない。
「悪いことなの、かな」
「そりゃそうだろ」
男同士で、敵同士。
裏切り。と、仲間から言われてもおかしくない。
そんな関係なのだから。俺たちは。
近藤は下唇を噛みながら、今度は下を向いた。湿って薄汚くなったバージンロードが、今の自分たちを現しているように、近藤は思えた。
目を瞑る。見たくなかった。
出会う前に戻れたらどんなに良いだろう。
考えられないけど。
考えたくないから、もう見たくない。
「救いようがねェな、俺たち」
「そうだな……なあ、今なら引き返せると言ったら?」
「高杉は引き返せるの?」
彼は何も答えなかった。それに、ふっと近藤は笑って、顔を上げて彼を見る。
「沈黙は肯定だよな」
「てめーも答えてないだろ」
「答えないこともまた肯定だろ?」
「言いようだな」
煙管から天に向かう煙がだんだんと小さく細くなっていくのを、高杉は目を細めて見ていた。
「苦しんでやったら、認められると思うか?」
「どいうこと?」
「罰を受けたら、俺たちは認められるかもしれないな」
こちらを向き笑う高杉。
その言葉に目を輝かせた近藤。
別に神様に
認めてほしいわけじゃなかった。
でも、誰かに認めてほしいと
思わないわけでもなかった。
「夢物語じゃん」
「いいじゃねーか、それでも」
高杉が椅子から立ち上がり、階段を上る。祭壇の前に着くと、近藤の方へ振り返り、手を伸ばした。
「かっこつけ」
「てめェがそういうの好きだろ」
「うん、好き。でもしたい側だったな」
近藤もゆっくりと椅子から立ち上がり、階段を上る。そして、高杉の手を取って、祭壇の前に立つ。
「病めるときも健やかなときもだっけ」
「いらねェだろ、そんなの」
「えー、どうせならしたい」
「誓約しても今は誰も聞いちゃいねーよ」
「だからなのに……じゃあさ、死がふたりを分かっても、愛してくれる?」
「ハッ、愛してるやるよ」
高杉は火種を床に落とした。
俺たちを包むのは、罪の炎でいい。
罰として受けてやるよ。
でも、苦しんでなんかやらねェ。
それでも、認めてくれるよな?
なあ、神様。
俺たちは、祝福を受けられない。
だって、俺たちは神様に嫌われてるから。
ねえ、神様。
なら、罰を受ければ俺たちを祝福してくれますか?
丘の上にある教会。
元来は、たくさんの人が集まり、祝福してされて、喜びに満ち溢れた場所だっただろう。
それが今や、雑草や蔦に取り巻かれて、誰も寄り付かない薄暗い寂れた場所になってしまった。
長年使われていないことが見て取れるほど、ところどころ朽ちている礼拝堂で、男がふたり、長い椅子に並んで座っていた。
「座れるもんだなァ」
「ああ、もっと使われる予定だったんだろう」
礼拝堂の左側に並ぶ椅子に座っていた高杉が、煙管を吹かしながら、答えた。右側に座っていた近藤は、彼を見ながら素材を確かめるように、少し湿った椅子を撫でていた。
独特な匂いや陰惨な雰囲気がそこに漂いながらも、ステンドグラスから降り注ぐ光にふたりは何も言わずに包まれていた。
「あったけェな」
「……」
「こんなにもあったけェのに、なんでこんなに冷たいんだろう」
近藤はステンドグラスに描かれた神様を見ていた。何も変わらずに神様はこちらへ微笑んでいる。
あったかい。何もかも包んで許してくれそうな暖かさを感じる微笑み。それでも。
それでも、貴方は俺たちを認めてはくれないんだろう。
大きく息を吸う。頭がクラっとなるのが分かった。近藤が神様から目を逸らし、天井へと視線を移す。そんな彼を横目で見つつ、煙管の火を絶やさないように、高杉は吹かす。吸わずにただただ吹かしていた。
「なんで罰が必要かわかるか?」
「え?わかんねェ」
「悪いことをした奴には報いを受けて欲しい。そして、それでもがき苦しむ姿が見たいんだよ。どいつもこいつも」
近藤が勢いよく彼の方を向く。高杉は視線を受けながらも、そちらには向かず、神様を見ていた。いや、睨んだと言っても過言ではない。
「悪いことなの、かな」
「そりゃそうだろ」
男同士で、敵同士。
裏切り。と、仲間から言われてもおかしくない。
そんな関係なのだから。俺たちは。
近藤は下唇を噛みながら、今度は下を向いた。湿って薄汚くなったバージンロードが、今の自分たちを現しているように、近藤は思えた。
目を瞑る。見たくなかった。
出会う前に戻れたらどんなに良いだろう。
考えられないけど。
考えたくないから、もう見たくない。
「救いようがねェな、俺たち」
「そうだな……なあ、今なら引き返せると言ったら?」
「高杉は引き返せるの?」
彼は何も答えなかった。それに、ふっと近藤は笑って、顔を上げて彼を見る。
「沈黙は肯定だよな」
「てめーも答えてないだろ」
「答えないこともまた肯定だろ?」
「言いようだな」
煙管から天に向かう煙がだんだんと小さく細くなっていくのを、高杉は目を細めて見ていた。
「苦しんでやったら、認められると思うか?」
「どいうこと?」
「罰を受けたら、俺たちは認められるかもしれないな」
こちらを向き笑う高杉。
その言葉に目を輝かせた近藤。
別に神様に
認めてほしいわけじゃなかった。
でも、誰かに認めてほしいと
思わないわけでもなかった。
「夢物語じゃん」
「いいじゃねーか、それでも」
高杉が椅子から立ち上がり、階段を上る。祭壇の前に着くと、近藤の方へ振り返り、手を伸ばした。
「かっこつけ」
「てめェがそういうの好きだろ」
「うん、好き。でもしたい側だったな」
近藤もゆっくりと椅子から立ち上がり、階段を上る。そして、高杉の手を取って、祭壇の前に立つ。
「病めるときも健やかなときもだっけ」
「いらねェだろ、そんなの」
「えー、どうせならしたい」
「誓約しても今は誰も聞いちゃいねーよ」
「だからなのに……じゃあさ、死がふたりを分かっても、愛してくれる?」
「ハッ、愛してるやるよ」
高杉は火種を床に落とした。
俺たちを包むのは、罪の炎でいい。
罰として受けてやるよ。
でも、苦しんでなんかやらねェ。
それでも、認めてくれるよな?
なあ、神様。